お盆の恐怖体験-在宅介護実録 沈んだ太陽 第二十九回
介護・福祉
記事公開日:2017/08/30、 最終更新日:2018/12/28
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真夏の介護は、一触即発!-在宅介護実録 沈んだ太陽 第二十八回
こんにちは、ミチルです。今回のテーマは「お盆」です。
我が家には一年で最も恐れる時期があります。それはお盆です。いえ、けして怪奇現象を体験したとかではありません。ポキさんの「お盆スイッチ」が入るため、私たち姉妹は振り回され、神経をズタズタにされてしまうのです。
お盆スイッチ、オン!
盆の入前日、我が家では仏壇の飾り付けをしますが、ポキさんはこれを自分1人ですべてやろうとします。親から子へ伝えていくという発想も、コミュニケーション能力もないからでしょう。
発達障がいのポキさんは変化を厭います。仏壇を飾るには家伝の木枠を、昔からのやり方で、寸分の違いなく組み立てなければ気がすまないのです。とはいえ、認知症ですから、すでに組み立て方がわからなくなっており、早朝から荒縄や木枠と格闘したところで一向に完成しません。
「おかしいで、おかしいで、弱ったでぇ」
人に助けを求めることができない彼女は、最初ブツブツと独り言を言っているのですが、だんだんヒステリックになり、しまいには埼玉弁でいうところの大声で怒鳴るだけの『百鳴り婆あ』へと変身します。そうかと思えば、ダイニングからエッチラオッチラ、イスを持ってきて、足腰をブルブル震わせながら座面に立ち上がり、高いところの飾り付けに挑むわけです。
制止しようとして、私たちもつい大声に。毎年のこととはいえ、おそらく隣近所は警察に通報したほうがいいと思っているかもしれません。
墓参りで、ヒヤリ。
しかし、真の恐怖は迎え火にあります。我が家の墓所には11、2体の仏様が眠っていますが、火葬は祖父母だけです。
ポキさんの旦那、つまり私とルミコさんの父親の墓は「他人だから」と土葬されたまま墓石も何もありません。つまり、空き地、土まんじゅうです。
どう見ても異様な光景ですが、ポキさんにしてみれば子孫を絶やさんがために無理やり押しつけられた相手だったせいか、墓参りに行ってもいつも素通りです。
「どれほど憎いか知らないけど、縁あってメオトになった相手じゃない。チギリを結んだ人でしょう。線香の一本くらいあげてもいいんじゃない?」
今年、私は以前から思っていたことをハッキリ言いました。ところが、ポキさんは聞こえないのか聞こえないふりなのか、水を掛ける手を止めません。それどころか、震える手で新聞紙に火をつけようとしているではありませんか。
「危ない!」
マッチを奪い取った拍子に、ポキさんはよろけ、悲鳴を上げながら尻もちをついてしまいました。この一部始終を目撃していた老人は、まるで汚らわしいものでも見たかのように私たちから顔を背けました。
昔からポキさんのせいで近所中から白い目で見られてきたというのに、本人は全く意に介しません。振り向くと、ルミコさんが必死に怒りをこらえながら、線香を手向けていました。
それこそ盆のピックアップ作業を、心を鬼にして遂行しているといった殺気にあふれていました。
提灯を振り回しながら、命からがら家にたどり着き、仏壇にロウソクを灯せば、どうにかこうにかお盆の峠を越えたことになります。普通の家庭なら、ここからがお盆本番となるのでしょうが、我が家のお盆は、毎年恒例の場外乱闘であり、真夏の夜の悪夢でしかないようです。
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ポキさんのアルバイト。-在宅介護実録 沈んだ太陽 第三十回
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