自ら老人ホーム入居を決意した理由 前編
介護・福祉
記事公開日:2017/09/12、 最終更新日:2018/12/28
みなさんこんにちは。しいなみのりと申します。わたしは介護士として10年以上介護施設でお仕事させて頂き、最近はケアマネージャーの資格も取得しました。現在は結婚し、子育てをしながら現役で介護施設に勤務しています。
今や新人介護士ちゃん達を指導する立場となっている私も、介護業界に入った最初は右も左も分からない新人介護士でした。
介護士としての私を成長させてくださった高齢者の皆様との、懐かしく愛おしいお話をさせて頂きたいと思います。
先見の明を持っていた?! しっかり者のAさん
私が初めて勤めたのは、特別養護老人ホーム(特養)でした。
今は使わない「痴呆棟」と「一般棟」なんて言葉もあった頃のことです。今なら認知症対応フロアと呼ばれていることが多いでしょうか。
介助量が多くて大変だったけれど、ニコニコ笑顔の認知症の方が多かった「痴呆棟」でのお仕事の方が、私は好きでした。介助が必要なのに思考が比較的クリアで神経質な方の多い「一般棟」の入居者さんたちが少し苦手だったのです。
中でも新設当初から入居されていたAさんに、私は苦手意識を持っていました。
Aさんは脳梗塞の後遺症で下肢に麻痺が残った、車いす生活の方でした。黒々とした短髪できりりと黒い瞳をした眼光の鋭い強面のおばあ様で、10人が見たら8人の第一印象が「怖そう……」だと思います。
全く認知症はなく、初対面で自己紹介した時に
「しいなさん、私はなあ、して欲しいことははっきり言うからな。それさえしてくれはったらええから」
と、それはもうはっきりと仰られたのです。
食事も自立、平面での移動も車いすを自分で操作され自立。
介助といえば、トイレの時に下服の上げ下ろしのお手伝いと、ベッドに横になる時に車いすの角度を調節するのを少しお手伝いすること、そして夜間のオムツ対応だけでした。
「夜もほんまはトイレに行きたいんや。でも主任さんが夜はそんなに手がかけられへんって言わはるから、割り切ってオムツにしてるねん。その代わり決まった時間にきちっと来てもらうことになってるから、ちゃんとしてな」
キッパリとそう言われて、唖然としながら「なんでこの人はこんなにしっかりしてるのに特養に入居してはるんや…」と思ったものでした。
はじめて認められた日
働き始めで覚えることが多く、私は何度かAさんのオムツの時間を間違えたり、段取りが悪くトイレの時間に遅れたりしてしまいました。
「まあアンタは後から入った子やからな」と、新設当初からの職員と比べられて意地悪を言われることもしばしばあり、Aさんへの苦手意識は強くなっていました。なにしろしっかりされているので、失敗したことをいつまでも覚えておられる方です。指摘されたくなくて、意地でも彼女との決まり事は果たそうとしていたのを強く覚えています。
食堂で目くばせされたらトイレの合図、左手が少し動きにくいので配膳するときはお皿を左側に寄せる、好きなお茶の温度、吸い飲みを床頭台の上に置く位置。
数え上げたらキリがないほどのこまごまとした決まり事を、Aさんが自分の口で説明し始めるより先にすることで「私なりにあなたのことを分かっています」と伝えようと努力しました。
働き始めて三ヶ月ほど経った頃でしょうか、夜勤に出勤して挨拶をした時です。
「今夜はしいなさんか。ほんなら今日のオムツは安心やな。よろしく頼むで」
そう言って、Aさんはにこりと笑ってくれました。
ああ……私、ここの職員として認めてもらったんや。
そう、思えました。
たった一言。だけど本当に嬉しかったんです。
その日から少しずつ、介助の時にAさんと会話することも増えて行きました。
……次回に続きます。……
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