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老人ホームで迎える最後の誕生日

老人ホームでの最後の誕生日

介護・福祉


記事公開日:2018/02/19、 最終更新日:2019/01/04

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「自由気ままに暮らしたっていいじゃない?」

 

今回は頑固おじいさんだったTさんのお話をさせて頂きます。

カミソリひとつにもこだわるおじいさん

戦争で片足の膝から下を失くしたというTさんは、昭和のドラマに出てきそうな偏屈で頑固なおじいさん……といえば、分かりやすいでしょうか、少し気難しい方でした。

 

軍役での怪我ではなかった為に充分な補償も受けられず、足が不自由なことでお嫁さんを取ることもできず、嫌な思いをすることが多かったのだそうです。身体障害者の施設では高齢者に対応していなかったため、ご本人は不承不承このホームへ入居されたということでした。
車いすをご自分で操作され、バリアフリーなホームの中ですから自由自在に動き回っておられました。

 

対男性の介助の一つに髭剃りがあるのですが、Tさんは安全なT字カミソリも便利な電気カミソリも完全拒否で、昔ながらのカミソリじゃなければ駄目だと言って譲って下さいませんでした。

昔ながらのカミソリは錆びやすくてすぐに切れ味が悪くなってしまいます。金銭的な問題もあり、そうそうご用意できないことをお伝えしても「それなら一食でも二食でも抜くから、食費から買ってくれ」ときっぱり。

残念ながら当時私が務めていたホームは、入居費に食費が込みでしたので、そういうことはできませんでした(今もそういうことができる可能性は少ないと思います)。

 

何度も説明して、どうにか理解して頂き、T字カミソリを使わせて貰うようになったのですが、髭剃りの度に「これじゃスッキリしない」とずっと不満そうにしておられました。

朝食でパンを食べる女性ご利用者を見ては「あんな様子だから戦争に負けたんだ」と憤り、横文字のおかずはなかなか手をつけて下さらない。

歌のレクレーションで歌われるのは軍歌のみ。

いやはや、今思い出しても、なかなかに頑固で難しいお方でした。

 

最後のお誕生日

 

そんなTさんも年月と共に少しずつ元気がなくなっていきました。

食事量が目に見えて減っていき、体重グラフも右肩下がり。日本茶を好まれたので、どうにか水分は摂って頂いていましたが、一日のうちベッドで横になっている時間がどんどん長くなっていきます。

本人の強い希望で医療的な治療は受けないことになっていました。

 

 

そんな折に、Tさんのお誕生日が巡ってきました。

「最後の誕生日になるかもしれない」という思いが、私達スタッフの間に広がっていったのは、自然な流れだったように思います。

「年に一度の誕生日です。何か、食べたいものはないですか?」とお伺いしたところ、最初は首を左右に振るばかりだったTさんが最後にぽつりと「お好み焼き」と仰いました。

今の老人ホームなら、個別支援を重視するところも多く、そう難しくないことのように思います。
ですが当時のホームは、いろいろと規制がありました。スタッフ皆で順番にえらい人に掛け合い、どうにかこうにかホットプレートの使用許可を得ることができました。
固いものが食べにくくなっていたTさんのために、キャベツはとても細かいみじん切りにしました。Tさんご希望のイカ玉は、消化の関係で難しく、豚ミンチを使用することになりました。

 

 

そうしてTさんのお誕生日当日。

特別に個室を使って、Tさんの為にお好み焼きを焼かせて頂きました。
ホットプレートのものではありましたが、鉄板を見たTさんは目を細めて「懐かしいな」と呟きました。震える手を介助して、一緒にタネを鉄板の上に流し、一緒にひっくり返しました。

「イカはないんか」と残念そうに言われたものの、Tさんはいつものようにあれこれ難癖をつけることなく時には笑顔を見せてくれながらお好み焼きを作られました。

 

老人ホームでの最後の誕生日01

きっとTさんの思うお好み焼きからは、ほど遠いお好み焼きだったと思うのです。山芋もいれてあげられなかったし、青のりや鰹節も看護師から許可が下りなかったのでありませんでした。

それでも「おいしいな」と言って、Tさんは1枚のお好み焼きを完食されました。
「ありがとうな、ごちそうさん」

Tさんにしては素直な一言でした。

「来年のお誕生日は、イカ玉を焼きましょうね」と声を掛けた私に、Tさんはにこっと笑って頷いて下さいました。

次の誕生日どころか、次の季節すら待たずに逝ってしまったTさんとの、それが最後の明るい思い出となりました。

 

今の自分だったら……

たくさん経験をした今の自分なら、「そのイカ玉で喉を詰まらせて死んだってTさんは本望ですし、詰まらせないよう万全の対応をします」と、どんな専門職の人にだって言い切ってイカ玉を用意できたでしょう。あれが最後の誕生日だと、誰もが分かっていたのですから。

……今でも、Tさんのことを振り返ると、いろんなことを思います。

それでも、あの時の私達スタッフの精一杯に、Tさんは「ありがとう」と言って下さったんじゃないかなって、思っているのです。

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