大柄・全介助の男性の老人ホーム生活 前半
介護・福祉
記事公開日:2018/07/23、 最終更新日:2018/12/28
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今回はとっても大柄の男性・Sさんのお話をさせて頂きます。
スタッフ一同の心に不安がよぎる
Sさんは70歳の時にご自宅で脳梗塞のために倒れ、救急搬送されたそうです。後遺症で片麻痺となってしまわれました。
1年ほど病院で治療していましたが、これ以上できることはないということで病院側から退院を促されての老人ホーム入居でした。
今はもっと入院期間を短くして患者さんを在宅に戻そうという動きが加速されていますが、当時はまだ「大きな病気になったら療養型の病院で暮らす」のが主流だった頃でした。
そんな中、まだ71歳のSさんの入居の順番がまもなく回ってくる…ということで、私達介護チームは身構えずにいられませんでした。
なにしろSさん、170cm越えの大柄体型でいらっしゃったのです。
介護度5、片麻痺のため日常動作ほぼ全介助。70kg前後の体重。
この事前情報が届いた時点で、全員が溜息をつきました。
老人ホームで働いているのはほとんど女性です。二人介助、三人介助でなんとか持ち上げてストレッチャーに移せるだろうか…?
普段の食事の時はどうしよう?三人介助を一日三食毎日続けるのか…?夜勤者が三人しかいないのに?
今現在でも勿論そうでしょうが、当時も勿論深刻な人で不足でした。
移乗の度に三人介助をしている余裕が、どこにも見当たらなかったのです。その時既に、二人介助で移乗する入居者を多く抱えていたので、事態は本当に深刻でした。
事前ミーティングの空気の重さを、今でも覚えています。重度の入居者の多い時期で、誰もが疲れ切っていました。
「二人介助での離床介助だけで、今でも30分近くかかっています」
「早出の職員が来てから離床しても間に合いません」
「だからといって、居室に食事介助に行く時間もないと思います。フロアの入居者の安全が優先では?」
「これでもし、拒否や暴力があったら…暴力行為のある人の受け入れは今の数で限界だと思います」
どうしてもマイナス思考の発言が多くなるミーティングでした。
常に前向きに多くの入居者を受け入れようと努めていた介護主任も、さすがに慎重な対応をせざるを得ないという結論でミーティングは終わりました。
「現状では厳しいので、主任がご本人に面会に行った後でお断りすることも視野に入れて欲しい」と介護チームは相談員に伝えたのです。
なんとか力になりたいと思ったスタッフたち
入居の順番が回ってきそうだから…ということで、初めてキーパーソンである奥様が娘さんと共に見学にやってきました。
入居の申込み自体は、病院でSさんについたケアマネージャーが行ったものだったため、こういうことは当時はよくありました。複数の施設に入居申し込みするため、家族が全ての施設を見て申し込み先を決めるわけではなかったんですね。
「Sの妻です。本当なら自宅に連れて帰ってやりたかったんですが、私一人では主人の世話はとてもできなくて…。見学させて頂いて、病院よりはこちらの方が人間らしい暮らしができるのではないかと感じました。どうかよろしくお願いします」
そう言って頭を下げられた奥様に、その場にいた職員は「なんとか受け入れてあげたい」という気持ちになってしまったと思います。
だってそう言って頭を下げた奥様は……150cmあるかないかの、とても小柄な女性だったのですから。
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