福岡で、アルコール依存症でも入居できる介護施設
お住まい相談員
日々地域を飛び回るお住まい相談員のお仕事内容やトピックを取り上げていきます。
※紹介している相談実例の内容は、実際にウチシルベに寄せられた相談をもとに構成しています。しかし、ご本人やご家族のプライバシーに配慮し、一部の設定・描写を変更した上で編集しています。
記事公開日:2015/06/30、 最終更新日:2018/12/20
ずっとやさしいお父さんだったけど
2月のとても寒い時期のこと。これまで何度もお付き合いをしてきた福岡市内の総合病院に勤めるソーシャルワーカーから、私の電話に着信がありました。内容は、アルコール依存症が原因で5年近くにわたって入退院を繰り返している患者さんのこと。それまでは、なんとかご家族でご本人を支えようと頑張ってきたらしいのですが、長年にわたってアルコール依存が続きました。このたび、ようやく治療を終えて症状が落ちついてきたのですが、自宅に帰ってしまうとまた再発するかもしれません……。そこでご家族が、アルコールから本人を遠ざけるために介護施設への入居を望まれているとのことでした。
その週の後半には奥さまとの面談の機会を設定しました。聞けば、ご本人は40年近く世界的知名度を持つ大手メーカーに勤めてこられ、部長職までお勤めになったバリバリのビジネスマンだったそうです。
変化が訪れたのは、ご本人が退職して数年経ってからでした。もともと友人が多いこともあって、「今日も1杯行こうよ」と誘われる機会が増えてきたとのこと。最初は楽しいお酒だったらしいのですが、ご本人は人生に張り合いをなくしていた面もあったのか、酒量が徐々に増えてきたそうです。そして70歳を迎えたころにはすっかりアルコール依存症と診断されるまでになっていたのです。
初対面の私に向かって、ずっと奥さんが涙ぐみながら話し続けています。そのあとも入院して治療に励み、民間NPOが主催する断酒会に参加するなどさまざまな手段を採ってきたものの、いつも効果は短期間で終わっていたそうです。奥さまもおっしゃっていたのですが、アルコール依存症の方を前にすると、つい「ちょっとくらいなら許してあげても」と周囲が考えるのもムリはありません。でも、その“ちょっと”で症状が悪化してしまうのです。「今回こそどうにかしたい」というご家族の想いがひしひしと伝わってきました。
奥さまが一緒にいるだけで、不機嫌に
ちなみに、ご本人がアルコール依存と戦っている間、奥さま自身も頑張って勉強し、自宅での飲酒を徹底的に止めていたのですが、その結果として旦那さんから暴言や暴力を受けるようになりました。結婚以来、ずっと仲睦まじく暮らし、ともに幸せな家庭を築いてきたからこそ、そのショックは想像以上だったろうと思います。
見かねた長女夫妻が宗像市内から転居し、昨年からは3世帯での新生活をスタートしたといいます。
「私も子どもたちもどこか我が家での暮らしを諦めきれなかったのです」
「できれば、一緒にいたいお気持ちはよくわかりますよ」
「でも、家族の目もいつも行き届くわけではないですし、このままでは本人のためにも良くないと思って」
お酒さえなければ、願いはそれだけ
「入居先に求める条件はどのようなものになりますか?」
「お酒を手軽に買える環境でさえなければ本当になんでもいいのです。他に持病があるわけではありませんので」
「自動販売機やコンビニが近すぎるとまずいですよね……。少しこちらでも探してみます」
高齢になってからも暮らしに利便性を求める方はおられますが、今回はある意味で逆の依頼です。とはいえ、市内にあって自動販売機もコンビニも全く近くにない介護施設は難しいですし、さまざまな介護施設にヒアリングをかけて「数年にわたってアルコール依存症に苦しんできたこと」「いまはようやく症状に落ち着きが出てきたこと」などご本人の現状をご説明し、「ここなら」と思えた住宅型有料老人ホーム「すばる内野」をご紹介しました。ただ、条件が特殊なだけに、市内でほかにたくさんの候補があるわけではありません。2番手以下の候補は距離的にもご自宅から遠く離れてしまいそうでしたし、ここでご本人に納得していただけるように奥さまだけでなくご長男・長女夫婦にも協力していただくことになったのです。
久々の家族団らんのひとときを過ごして
見学の日、ご本人には「みんなでランチがてら介護施設見学に行きませんか?」とお誘いして、「すばる内野」での昼食会を開催しました。東京に住まう次女夫婦は残念ながら参加できなかったものの、久々に家族がたくさんそろってのひとときです。ご本人もとても喜んでいらして、お互いの近況、お孫さんの学校のことなど2時間があっという間に過ぎていきました。私も同席し、会を終えてからご本人ともお話をさせていただきました。
「今日はとても楽しそうでいらっしゃいましたね」
「ありがとう、本当は次女たちも来たらよかったのだけどね」
聞いていた印象とは全く異なり、物静かにご本人はお話を続けます。
「僕もね、こうやってみんなで食事をするのは何年ぶりかな。夫婦と子供たちがそろって食事をするのは、子供が小さいうちだけなのかな。今日はうれしいね。」と、笑顔がこぼれていました。
一般的に高齢者のアルコール依存は、認知症がかかわっており、なぜ飲んではいけないのかがわからなくなり、家族に怒られてばかりの不満がたまる生活を送っておられる傾向が強く、認知がさらに進むことでお酒を飲むことも忘れることが多くなっています。
施設に入所されてからだいたい1年半から2年で、お酒自体のことを思い出すことがほとんどなくなるようです。ですから、ご入所の決断をご本人ができれば、みんなで励まして応援することが必要です。
「ご家族もこれからもお父さんをサポートしていく気持ちを持っておられますし、せっかくお身体がまだ元気なのですから、これからも健康第一で、頑張ってゆきましょう!」
と、声をおかけしました。
なによりも、ご本人が住まいを変えることに前向きになっていただいたことに私は安心しました。また、ご長男とは親子とはいえ男同士の言葉にできない絆があるようで、ご長男の言葉にはとりわけ熱心に耳を傾けるご本人の姿が印象的でした。
後日、契約の際に奥さまに伝えたことがひとつあります。それは、もしこれから先も困ったことがあったら、ご長男にも遠慮せずに相談してほしいということ――。私たちお住まい相談員も精一杯サポートはしますが、心の細かな機微はやはり肉親同士でしか共有できないもの。決してひとりで抱え込んでしまわず、家族みんなで介護に立ち向かうチームを作ることが、本当に大切です。
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