大阪で、居室に家具の付いている介護施設

介護生活に家族が疲れて

現在同居するお母さまのことで、守口市に住まう34歳の女性からコンタクトがありました。唯一の子どもである娘さんは20代の早くに結婚し、3年前までは親子が離れて暮らしていたそうです。しかし、5年前にお父様が亡くなった時期以降、お母さまは体調を崩すことが多くなり、認知症の症状も出てきてしまったそうです。

これまで、親子仲が決してよくなかったこともあって、お互いに同居を決断するまでには時間が必要でした。結局、2年ほど前から守口市内で同居がスタートしたのですが、その間にもお母さまは入退院を繰り返し、認知症の症状も進行していきました。

「母のことで家族もちょっとぎくしゃくしてしまって」

「そうだったんですね。これまでは探されたりはしたんですか？」

「いえ、費用が本当に厳しくって。少し探しては挫折を繰り返しています」

ご本人であるお母様のご希望は、守口市周辺もしくはもともとお母さまが住んでおられた大阪市東淀川区での入居でした。娘さんは自分で車を運転して移動もできるとのことで、どちらのエリアであっても条件がいい方を選びたいというご希望でした。

ご本人と娘さんの意見を総合すると、「月額費用が安い」、「初期費用がかからずに入居できる」、「できるだけ家具などの準備をする必要が少ない」老人ホームです。

「簡単なベッドや収納などが付いている施設は選択肢も多いですが……。こんな設備があればうれしい、といった要望はございますか？」

「母は昔からドラマが大好きなんです。最近もテレビの前にいることが多いですし、テレビが備え付けであればきっと喜ぶと思います」

私たちお住まい相談員は、このように具体的な条件の方が探しやすい面もあります。もちろん私たちの方からもさまざまなヒアリングを通じて、ご本人やご家族の意向をくみ取る最大限の努力をしますが、ご家族の側から遠慮せずにご要望を聞かせていただくのもありがたいのです。

生活保護も視野に入れながら

ご要望をすべて満たす介護施設は、守口市内で2つ、東淀川区内で2つ、そしてサブ候補としてお隣の淀川区で1つをピックアップしました。

「どういたしましょうか、すべての老人ホームを回ってみますか？」

「いえ、あれから母に確認したらずっと住んでいた東淀川がやっぱりいいらしいんです」

「そうだったのですね。では東淀川区内の2つを最初に見学しましょう！」

同じ日に見学を設定し、娘さんとふたりで介護施設を見学しました。現場で私もご説明を差し上げましたが、設備や人員体制、あるいは居室の広さなどの面で決して大きな違いがあるわけではありません。そのなかでスタッフの対応がテキパキとして気持ちよかったこと、お母さまの以前の住まいに近いことから、最初に行った「アプリシェイト東淀川」をお気に召されたようでした。

「アプリシェイト東淀川」は備え付けではないものの、無料レンタルという形式でテレビやタンス、簡単な寝具などが利用できます。それに、娘さんの話から、お母さまが将来的には生活保護認定を受ける可能性があると感じたので、「こちらなら生活保護を受けている方でも入居できますよ」と一言を添えました。

「うちも子どもが3人いるし、やっぱり家計も苦しくて」

「これからお金がかかる時期ですし、大変ですよね」

「本当は生活保護も考えたのですが、やっぱり世間体ってあるじゃないですか？ 親を施設に入れて自分たちだけ暮らすなんてやっぱりダメですよね」

「いえ、決してそんなことはないと思いますよ。ご家族もあるわけですから、旦那さんやお子様も大事にしてあげないと」

みんなにとっていい選択とは

「私たちが頑張ればいい、ガマンすればいい」

見学に向かう車内でおっしゃっていたそんな言葉が、私はとても印象に残りました。きっと同じように考えているご家族は世の中にたくさんおられるはず。相談員の業務をしていても、よく似た言葉を何度も耳にしてきました。ただ、実際に娘さんにもお話したように、介護を担う家族の側が疲れてしまったり、家族そのものの関係性が壊れてしまっては、関わるすべての人が悲しい想いをすることになります。介護施設に入居することは決して見捨てることではなくて、みんなのための前向きな選択肢でもあるのです。

娘さんは、見学に行くまでは「もしいいところがなかったら、じっくり時間をかけても」というスタンスでしたが、実際に館内を見ると期待した以上の雰囲気だったようで、すぐに手続きを進めることになりました。入居の前にお母さまもあらためて見学に行かれたのですが、テレビがついていることを本当に喜んでおられたのが印象的でした。