出る、出る、作話。-在宅介護実録 沈んだ太陽 第十一回
介護・福祉
記事公開日:2016/07/06、 最終更新日:2019/01/04
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“みんな”に笑われちまう。
こんにちは、ミチルです。
今回は苦手だったデイサービスで居場所を見つけたポキさんに、新たに持ちあがった問題についてお話します。
ポキさんがお世話になっているデイサービス(以下、デイ)は比較的小規模で、その分アットホームなところです。ここにかれこれ5年近く通っていることになります。
今でこそ週2回のデイを楽しみにしている彼女ですが、最初は新しい環境になかなか馴染めず、私たち家族もケアマネさんも結構てこずりました。
あるとき、ケアマネさんがデイへ行きしぶるポキさんに理由を尋ねたら「あんなとこ行ったら、“みんな”に笑われちまう」と言うのでした。
この“みんな”というのは、ご近所の人たちのことらしいのですが、母には友達がいませんから作話です。
唯一の訪問者。
生まれてからずっと同じ場所に住み、近所には幼なじみが住んでいるにもかかわらず、誰かが遊びに来るということがないのです。
唯一、幼なじみではありませんが、ポキさんのかつての同僚が一方的に近所の噂話をしに来ることがあったくらいです。
その女性はシャッターを開けるが早いか他人の悪口をしゃべり倒し、最後は「ポキさんに話してもつまんねぇ」が捨て台詞で、またシャッターを閉めてはトコトコ帰るのでした。その彼女も一昨年の暮れに自宅で倒れて亡くなり、今ではポキさんを訪ねてくる者は皆無ですが、そんなこと意に介さないマイペースなのがポキさんです。
作話がエスカレート。
さて、ポキさんは昔から自分を守るために作話の多い人でしたが、認知症になってからは特にひどくなった気がします。
『近所のみんながデイサービスへ出かけていくポキさんを見て笑っている』について、ケアマネさんが「それは焼きもちよ。ポキさんが羨ましいのよ」とおだてても「みんなが笑っている」の一点張りでした。
もちろん誰もポキさんのことなど頓着していませんから、新しい環境に溶けこむことのできないポキさんが、誰かのせいにしてデイを辞めようと口実にしているのは明白でした。
それでも、半年もするとようやく顔見知りができるようになり、ポキさんにも笑顔が増えるようになってきたのです。デイのスタッフさんで、以前は大人数のデイに勤務していた方も「ポキさんだったら、大きなところはダメだったと思う。うちくらいのこじんまりしたところだからやっていけるのかも」と、しみじみ話していました。
習字への“怖れ”。
そんな中、昨年の秋ごろ、ちょっとしたトラブルが持ちあがりました。「お習字」です。
それまでコーラス、料理、お買い物と、さまざまなアクティビティを楽しんでいたポキさんでしたが、その中に書道が入ってきたころから雲行きが怪しくなってきました。また、行きしぶるようになったのです。
最初は、達筆な利用者さんが家でしたためてきた書を自慢げに見せるから嫌だとか、自分もちゃんとした書道道具がほしいとか、いろんなことをゴネるのですが、しまいには「習字の日は行きたくない」となったのでした。
彼女の口ぶりからは単なる子どもっぽいジェラシーといったもの以上の、なにか“怖れ”のようなものを感じました。ですが、その理由はまもなくわかりました。
彼女は、字が書けないのです。
次回は、ポキさんの謎の半生に迫ります。
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ようやく見つけた居場所。-在宅介護実録 沈んだ太陽 第十二回
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