福岡で、医療環境が整った介護施設

老後を楽しんできたけれど

老人ホーム選びのときに、最初の条件として費用面を挙げられる方はかなりの数でいらっしゃいます。今回のケースは「費用にはこだわらないから、とにかく安心して過ごせる環境を探してほしい」というご依頼でした。

ウチシルベに連絡をくださったのは、ご長男のKさんにあたります。ご本人であるお母様は福岡市内のマンションに8年ほど前からひとり暮らし。先立たれたご主人が内科のクリニックを開業しておられたのをはじめ、同じく内科で開業しているKさん、長女、そして大学病院で歯科医として勤務する次男と3人の子どもたちも全員が医療に携わっているそうです。

ご本人はこれまで年齢以上にずっと若々しく元気に過ごしてこられ、まさに悠々自適に楽しまれてきました。訪問ヘルパーさんに加えて、30年以上にわたってそばでつとめてきた信頼できる家政婦さんの存在もあり、要介護度が高くなってからも在宅で問題なく過ごせていたそうです。

しかし、4カ月前のこと。

リビングで立ち上がろうとした際にバランスを崩してしまい、右足の大腿骨にひびが入ってしまいました。命に関わるケガでこそなかったものの、入院中のリハビリでは思うような回復に至りませんでした。サポートがあるといっても、我が家での暮らしに戻るのは危険が高いということで、子どもたち3人でこれからについて家族会議をしたそうです。

費用は心配していません！

初めての面談の日、Kさんは話します。

「私のところに来るように言いましたが、母はどうしても迷惑をかけたくないといって」

「ではご本人も施設への入居を考えておられるのでしょうか？」

「いや、自宅に戻りたい気持ちが強いようなのです。ヘルパーさんも家政婦さんも本当によく母のことを助けてくれていますし、また自宅で気兼ねなくマイペースに暮らしたいのだと思います」

「みなさんが施設を探していらっしゃることを、お母様はご存知なのですか？」

「自分の身体の状態は母自身もよくわかっているので。正直なところ、決して入居に積極的なわけではありませんが、納得はしているようです」

ご家族に条件をヒアリングすると、立地は福岡市内、予算は初期費用2000万円、月額35万円までであれば問題ないとおっしゃいます。また、お母様の身体の状況を考えて、看護や医療の体制が充実している施設を望まれていました。

「環境の整った老人ホームで暮らしてもらう方が、私たちにとっても心配が少ないと思うのです」

「お気持ちはすごくわかります」

確かに、ご提示いただいた予算は潤沢といって差し支えありません。ただ、費用をかけたからといって、そのまま満足度の高い施設選びにつながるわけではないのです。

ホテルみたいな毎日はイヤ！

「こちらの予算ですと、かなり選択肢も多くなります。ご提案は高級感のある物件を中心にした方がよろしいですか？」

「ほかにはどういった老人ホームがありますか？」

「例えば、月額費用がそこまで高くなくてもサービスが充実していたり、設備面が整っている施設は市内にもたくさんあります」

「じゃあいくつかピックアップしてもらって、そのなかから検討させてもらえますか？」

費用にゆとりがある分、漠然とした提案ではご家族の頭を悩ませるだけになります。そこで、ご提案ではそれぞれに特徴が伝わりやすいものを中心に4施設を選び出しました。福岡市博多区内と中央区内にある高級老人ホームは、どちらも月額費用が約30万円に設定されている一方で、ソフト・ハード両面でかなり充実しています。お部屋も20畳以上あって広々としていますし、スタッフ教育も行き届いていて、ていねいな対応にも定評があります。中央区内の介護付き住宅型老人ホームは、初期費用がかからず、月額も20万円以内の設定です。設備面だけを見ると標準といったところですが、特に機能訓練に力を入れていて、お母様と同じように、ケガや病気の後に入居される方も多くなっています。

そして、最後の「ネオステージ博多」は、博多区内にある介護付き有料老人ホーム。初期費用は75万円で、月額も余裕をもって予算内に収まります。こちらは、介護士や看護師によるケアだけでなく、すぐ近くに救急病院があって、医療体制が整っている点が特色です。

パンフレットをお送りすると、「しばらく家族で検討してみたい」とのお返事で、1週間ほどしてから再びKさんからお電話がありました。

「高級物件は母がどうしてもイヤだと言っていて。もしよかったら、いま近くにいるので本人の話を聞いてもらえませんか？」

「かしこまりました」

ご本人とは、初めてのお話になります。

「はじめまして、私、ウチシルベの桑野と申します」

「こんにちは。せっかく送ってくれたパンフレットだけどね、あんまりホテルみたいなところはイヤなのよ。普通にのんびり暮らせたらそれでいいわ。お部屋だってひとりで暮らすのに広すぎたらさみしいじゃない」

「さようでございましたか。あとはお住まいに希望される条件はありますか？」

「子どもたちに迷惑はかけたくないからね。ちゃんと面倒を見てもらえるところなら、あとは息子とあなたに全部任せます」

ご本人は入居してからもマイペースで過ごすことをなにより大事にしているようでした。高級物件ならではの立派な設えも堅苦しいと感じているようです。

費用よりも本人の気持ち

再び、電話はKさんへ。

「私たちからすれば、費用が高い施設の方が、母に喜んでもらえると思ったのですけどね」

「でもご家族できちんと話し合っていただいたからこそ、お母様の本当のご希望も見えてきたわけですし」

「じゃあ高級な物件はとりあえず外して、3番目と4番目の施設の見学をお願いできますか？」

それから3日後に2つの介護施設を見学し、結果的には慣れ親しんだご自宅からも近い「ネオステージ博多」への入居が決まりました。見学に行った際にちょうど館内ではレクリエーションを開催していたのですが、そのにぎやかな様子を見てKさんはとても安心したご様子でした。介護施設に入居してから「友だちができるのだろうか」「さびしくないだろうか」と心配するご本人やご家族はやはり多いです。最近では個室タイプの居室が多くなってきてはいるものの、いつも人の気配を感じられる多床室を希望されたり、「個室のドアを開けたままにしておいてほしい」とスタッフにリクエストされる方も意外に多くおられます。

「母もあなたとの電話では『ひとりで暮らす』なんて言っていたけど、本当は人と話したり、お茶を飲んだりが大好きな人だから。ここならさびしくありませんよね」

「こちらでしたらお母さまの性格にもぴったりかもしれませんね」

また、隣接する千鳥橋病院をはじめ、近くに病院がたくさんある環境面も、決断のポイントになったようでした。費用はあくまで、施設のスペックやサービス内容の充実度をはかる指標のひとつ。ご本人の考え方やライフスタイルに合った住まいを探すことの大事さを、私自身もあらためて感じました。