ようやく見つけた居場所。-在宅介護実録 沈んだ太陽 第十二回
介護・福祉
記事公開日:2016/07/13、 最終更新日:2019/01/04
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ミミズがのたくる。
こんにちは、ミチルです。
今回は前回から引き続き、なぜポキさんは字が書けなくても生きてこれたかをお話します。
私は子どものころから、ポキさんがたどたどしくしか文章を読めなかったり、字を書く時もミミズがのたくったようなひらがなしか書けないことを疑問に感じていました。
漢字で書けるのは自分の住所と氏名だけなのです。
ポキさんは昭和ヒトケタ生まれですが、彼女と同世代の人たちは普通に漢字も書けますし、文章だってスラスラ読めます。ですが、ポキさんにはそれができません。
また、暗算もできないので、いつも買い物のときはお札を出していました。
今となっては永遠の謎ですが、失読症とか学習障害だったのかもしれません。
とにかく、親としては機能しなかったため、同居する子どもの私も中学からは通信簿の保護者欄には、字体をかえ親御さんのようなコメントを創作するしかありませんでした。
おかげで文章を書くのだけは、うまくなったようです。
ミステリー小説にも登場。
この「在宅介護実録 沈んだ太陽」を読まれていらっしゃる方の中には、「そんなレベルでよく会社勤めができたなぁ」と不思議がられるかもしれません。
実は彼女の勤務していた会社の敷地は、元は我が家の先祖代々の所有地でした。私が生まれる前に亡くなった祖父が、土地売買の条件として当時の社長に「うちの一人娘を最後まで雇うこと」を確約させたため、クビにもならず定年まで勤めあげられたというわけです。
第一、ポキさんは肉体労働だったので字を書くような業務は全くなかったそうですが。
「文盲」とまではいいませんが、それに近い状態で82年間過ごしてきたポキさん。文盲なんていうと、古今東西のミステリー小説などにも登場する設定です。
一見パーフェクトに見える主人公が実は文盲で、でもそれを周りに悟られないように上手に生きてきたのに、あることから「ほころび」が生じ、秘密を暴かれまいとして悲劇が引き起こされるといった筋書き–。
幸い、ポキさんの人生にはそういったドラマティックな展開はまったくなかったわけですが、それでもやはり人並みに読み書きができずに一般企業に勤めるというのは随分とご苦労、ストレスがあったのではと察します。
愛されている証拠。
彼女が50歳を過ぎても「今日、会社でイジメられた」と、帰宅後に母親である祖母に泣き言を繰り返しいう姿が目に焼きついています。
あるときは「(同僚の)Tさんにキ○○イって言われた」と金切り声で祖母に言い募ったこともありました。そのときは祖母も激怒し「おばあさんが押してってやる(意見をしに行ってくる)」と、猛然と椅子から立ち上がったのでした。
ですが、自分の母親のただならぬ臨戦態勢に怖気づいたのか、間髪入れずに「そこまでは言わない」と、それまでとは打って変わった妙に冷静な声で言ったのでした。
私はそのいびつな母娘の光景を眺めながら、恐らくこの人は自分の母親にちゃんと愛してほしかったんだろうなぁ、その証拠がほしかったんだろうなぁと感じたのでした。
そういうわけで、子どものころから人間関係でつまづきの多かったポキさんが、人生の最晩年でようやく見つけた安住の場所がデイサービスだったのです。
字が書けないことで居場所を追われるのは忍びない話です。ですので、私たちも無理強いをせず、曜日だけかえてもらい、現在に至っています。
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