新しいオモチャ。-在宅介護実録 沈んだ太陽 第十五回
介護・福祉
記事公開日:2016/08/10、 最終更新日:2018/12/28
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30年ぶりの歯医者。
こんにちは、ミチルです。
今回のテーマは「入れ歯」です。
今から3年ほど前、ポキさんが長年使ってきた入れ歯が合わなくなってきました。急激に痩せ始めていたので、入れ歯がパカパカするようになり、しゃべっていて入れ歯が飛び出すほどです。
それでも使い続けるポキさんでしたが、前歯が抜けるという決定的な出来事に至り、観念したようです。
そういうわけで、30年ぶりくらいに歯医者へ行くことになったわけですが、これが一騒動でした。
予約なしで診てくれる「医者様」。
ポキさんの驚く点は、歯を磨く習慣がなかったため40代で総入れ歯になったことです。しかも、保険で安く作ったせいか入れ歯が合わず、一年中、口の中が口内炎だらけでした。
子ども心に「なぜ、歯医者に行って調整してもらわないのだろう?」と不思議に思ったのですが、祖母が言うには説明がヘタな母が、気の短い歯科医を怒らせてしまい、それでデタラメな入れ歯を作られたということらしいのです。
今では絶対にありえない話だと思いますが、40年くらい前の埼玉の片田舎には、そんな暴君のような「医者様」がいたのは事実です。
しかも、当時はすでに歯医者の受診は予約制が当たり前の時代でしたが、電話して予約をとるというシステムに追いつけない明治生まれの祖母は、40を過ぎた娘のために電話をかけることができませんでした。
結局、昔ながらに予約なしで診てくれる頑固じいさん歯科へ行くしかなかったのでした。
私も中学生でしたから電話予約くらいできたと思うのですが、一緒に住んでいてもほとんど話したことがなかったポキさんだったので、彼女の状況がよくわからなかったのです。
ただ、毎晩のように、自分で買ってきた紙やすりで入れ歯を削りながら、愚痴をこぼしている姿は非常に忌まわしく感じたのを憶えています。
暫定的処置。
とき現代に戻り、インターネットの口コミサイトで探した歯医者さんは優しく、的確な方でした。前歯とは別に、すでにポキさんの歯型に入れ歯が合わなくなっていて、ヘタをすれば入れ歯ごと飲み込んでしまいかねない状態だったのです。
それくらいポキさんはどんどん痩せてきているのでした。
結果として新しく入れ歯を作ることになり、お値段も良心的で一安心。古い入れ歯のほうは、欠けてしまった場所に仮歯を入れ、新しい入れ歯が来るまでの暫定的処置となりました。
「これでもいいだぁ」と、古い入れ歯に仮歯が入ってご満悦のポキさん。新しい入れ歯が来るまでの間だからねと、いくら私が念を押しても、すでに聞く耳を持たず。こういうときはあとで必ずトラブルが発生するのです。
耐久性のない仮歯。
嫌な予感は的中しました。
せっかく入れ歯を新調したのに、今までの古い入れ歯を使い続けることに固執するのです。ポキさんは身体に触れるものに対して普通の人よりずっと過敏で拒否反応を示すので、目が悪くてもメガネをかけず、片耳が聞こえなくても補聴器を使いません。入れ歯もしかり。
ですが、仮歯ですから耐久性など期待できません。
案の定、10日もしないうちにふとした拍子に仮歯が取れてしまい、そのまま飲み込んでしまったようなのです。
前歯が欠けた必死の形相で「歯が、ない、ない!」と大騒ぎ。仮歯は飲み込んでも、そのうち身体から出てくるから大丈夫といくら説明してもムダ。
「入れ歯は新しいの作ったでしょ。それを使えばいいじゃない」と、いくら諭しても
「あれがないとマンマが食べれない」と歯噛みするのです。
ですが、これこそ絶好のチャンスでした。
処分はバレないように。
ケアマネさんにお願いして歯科まで連れて行ってもらい、優しい歯医者さんに、少し厳しく説教してもらいました。
外面のいいポキさんもこれにはシュンとなったようです。
おかげで新しい入れ歯の調節も終え、それからはしぶしぶながらも新しい入れ歯を使うようになりました。
もちろん、古いほうはポキさんにバレないように処分しました。
現在のポキさんは、たまに入れ歯をカスタネットのように鳴らすことがあり、「よかったね、オモチャが手に入って」と、私や姉がからかうとフンと鼻を鳴らします。
相変わらず、歯医者にはその後一回も行っていませんが。
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