特養の入居待ちについて。-カイゴのガイド07
介護・福祉
記事公開日:2016/10/06、 最終更新日:2018/12/28
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特養の待機者が急減?
2014年、特養の待機者は52万人、4年後には10万人増える、と言われていました。今年の7月初旬に入居の待機者が急激に減っているというニュースを目にしたことがあります。
多様なサービスが整備されて、在宅での対応がある程度幅を持ったのも確かにあります。一方で、要介護1・2が基本入居の対象から外れたことで、軽度者が待機を取り下げたという実態もあります。
そのために重度の入居者が増え、入院するケースも増えたために、空床を維持する必要がある……と軽度者が外れたことによる側面があるのも事実です。
要介護1・2の方は絶対入れないわけではなく、介護者が全くおられないとか認知症のBPSD(認知症の行動・心理症状)がひどく在宅での介護が困難、と行政が認めて、介護支援専門員の意見書があれば入所の対象になります。
しかし、ハードルは高く、今まで近隣施設でも当施設でも、要介護1・2の方が入られたケースは見たことがありません。
でも、現実、要介護1・2の方でもどこかの介護施設に入居しなければいけないケースはたくさんあると思います。その方々は、必然的に他のサービスを利用して生活を継続していくことになります。
特養の費用負担も変化
特養は、終身入居していられる施設であることと、車いすやおむつなど介護に必要な物品は基本施設側が用意するため、そこにかかる費用が発生しないこと、介護保険での減免制度があることなど、比較的費用負担が軽いため大勢の方が希望されています。
特養も従来型とユニット型があり、従来型とは以前からある4人部屋や二人部屋がある施設で、ユニット型は全室個室になっています。従来型とユニット型では、介護報酬がユニット型の方が高く、お部屋代や食費の減額認定が3段階以上になると、特養入居に必要な金額だけで、1ヶ月8万円~10万円以上のご負担になります。
昔、自営業だった方や奥様が専業主婦だった方など、ご夫妻でも年金額が少ない方にとっては、なかなか大変なことで、特養なのに金銭的な問題で辞退されるケースも出てきています。
特にこの8月から、今まで収入に含まれなかった遺族年金や障害年金など非課税年金収入も含まれるようになったので、今まで2段階だった方が3段階になって、1ヶ月に2万円程度の負担増になり、ご家族の持ち出しが出てきた方もおられます。
特養への入所基準
入所判定の基準は、若干自治体によって違いはあるものの、ほぼ全国共通です。
・介護度
・認知症の度合い
・在宅サービスをお使いかどうか
・入院や入所中であればその期間
・在宅でお困りの理由(介護者がいない、介護者が長期入院、介護者が高齢、複数の要介護者がいる、介護者が育児や就業等)
の項目で100点満点で点数をつけます。
それを点数の高い順に並べて、基本点数の高い順からの入所になります。独居で身寄りがないとか、動ける認知症で現在周辺症状が出ているとか、点数に現れきれないところは、施設の裁量で決定します。
施設には、入所検討委員会といって、施設長、生活相談員、ケアマネージャー、看護師、介護職員、栄養士等各職種が集まって、入所申込書から皆さんの状態を把握し、どなたにお入りいただくのがいいのかを決める会議があります。
当苑は月に1回定期的におこなうことになっていて、そこで待機者の最終的な入所の順位が決まります。
特養への入所を待つ間は?
当苑は今年の4月に開設されたばかりですので、待機者はまだ10人余りですが、古い施設になれば、100名を超える待機者がおられるところもあります。もちろん、複数の施設を申し込んでおられる方もいらっしゃるので、必ず100名待たなければならないわけでありません。
そもそも特養の空きが出るというのは、どなたかが亡くなられるか、状態が悪くなって施設での生活が不可能になるか、何かご事情があって退所されるかということですから、いつ空くということが読めないところがあります。
落ち着いている時期だと、数か月空きが出ないこともありますし、不思議なことに亡くなられるときは「お連れ」を連れていかれるように数人一度に亡くなられて、続けて空きが出ることもあります。待機をされている方は、そのいつ出るかわからない空きを待っていなければならないわけで、入所の申し込みをしても安心ではありません。特養に入りたいと思っておられる方は、待機場所と待機の方法を考えないといけないことになります。
少し前までは、どうしても急がれるケースは、ショートステイで長期滞在することがよくありました。しかし27年度の改正で、ショートステイでの長期滞在ができなくなり、少なくとも2泊3日は自宅に戻らなければいけなくなったので(これは保険者によってローカルルールがあるようですが…)急を要する、在宅に戻れない方については長期で居れるところに入所もしくは転居する必要があります。
特養に入居されている方々の入所前の居場所としては、純粋たる在宅、小規模多機能・サービス付き高齢者住宅などを利用している在宅、病院(リハビリ病棟、急性期病棟、地域包括ケア病棟など)老健、ケアハウス、有料老人ホームがあり、まれに養護老人ホームから入られる方もおられます。
病院に関しては、体調が悪くて入院して、その後MSWが調整に入って急性期病棟から他の病棟に転棟されるというような流れになります。
その時に退院後に行き先がない方については、特養ホームの申し込みをされるケースがよくあります。MSWは、多くの患者さんを担当していることもあって、特養に繋ぐまではお手伝いしてくれますがそのホームに出向いて書類をもらったり直接話を聴いたりするのはご家族が動くことが多いです。
また、入院が長くなっておられる方は、在宅のケアマネと縁が切れてしまっていて、情報共有ができておらず、入院される前に特養入所の申し込みをしているのに、ご家族がそれを認識しておらず、知らずにまた申し込みをしてしまったということも今までに1回ではありませんでした。
MSWと退院後の話をするときは、MSWとだけではなく、以前に担当してもらっていた在宅のケアマネに連絡をし、相談にのってもらうか、管轄の地域包括支援センターで相談されてもいいのではないかと思います。
特養に入所するために
在宅におられる場合は、介護保険サービスを使っていると、担当のケアマネージャーがいますので、その担当の方に対応していただくのですが、最近、入所申し込みを見ていると、サービス付き高齢者住宅や有料老人ホームのケアマネさんで、これまで在宅の介護支援の経験のない方がおられたりして、入所申し込みをしたことがないとおっしゃることがあります。
これまで経験がなくてもきちんと施設に問い合わせをして書いて下さるケアマネさんは良いのですが、ケアマネさんの意見を書く欄(なぜ入所が必要かをケアマネの立場で記入していただきます)に記載がなかったり、内容が薄かったりすることがあります。
ここは、入所の判定をするときに、特養側が申込者の状況を把握したり、内容によっては施設の裁量として優先にしなければならない情報である可能性がありますので、必ず詳しく書いていただくようにお願いしたいところです。
入所待機をされるにあたって、私がよくご家族やケアマネさんに「生活相談員や施設ケアマネも人間ですから、たくさんある待機の方の一人一人を把握することは難しいと思います。
待機している途中で病院に入院されたり、他施設に移られたりして、状態や居場所が変わっておられたり連絡がうまくいかなかったりしますと、ご家族が今か今かと待たれていても、施設側はお急ぎであると認識しないことがありますので、もしお急ぎでしたら、申し込みのまま放置せず、半年空けずに施設に連絡をして状況を確認してみてください。」とお伝えしています。
何度もご家族やケアマネさんから連絡をいただいていると、施設の方でも「きっとお困りなんだな」と感じるので、少しでも早めに入所していただけるようにしようという心情がはたらきます。
それで必ず早くなるとは言い切れませんが、少なくとも同じような状態の方がおられたとき、優先的になったりすることがあるので、直接ご家族でもケアマネさんや相談員さんを通してでもいいので、定期的に経過と確認の連絡を入れられることをお勧めします。
特養待機中の費用
もう一つ問題になるのは費用面です。
27年4月から、介護保険の利用者負担が2割になった方がおられます。それにより、負担が大きくなってしまい、ご家族の持ち出しをしないと払えなかったり、貯金を取り崩しての支払いができなくなって特養の入所を急がれる方が有料老人ホームやサ高住にお住まいの方の中から出てきています。
また、28年8月から介護保険施設の補足給付もご本人の収入に、非課税年金(障害年金や遺族年金)が含まれるようになり、段階が上がることがあります。
費用が安いと言われる特養の場合でもユニット型個室にご夫妻でどちらかのご入居になるとお家に残られる方の生活が立ち行かなくなることがあります。
特養は、要介護の方ならお金の有るなしにかかわらず、どなたでも入れて終身で居ていただける施設であったのに、段々と使いにくくなってきている現状は私からしても何とも言えない気持ちになります。
特養入所の待機を考えられる際は、収入がどの程度あって、それぞれの施設でどのくらいかかって、待機するのに何年くらいが目途なのか、いつごろまでに特養に入所しなければならないのか考える必要があります。
特養もユニット型特養(全室個室)と従来型特養(大部屋あり)と単位数が違いますので、どちらがいいのか、大体の費用の計算はしておいていただいた方がいいと思います。無理をしているとどこかでひずみが出てきます。
お金が無くなれば生保に、と安易に考えるかもしれませんが、生活保護も厳しくなってきていますし、特養は生活保護の方を受け入れると、持ち出しが出るようになっている(室料が出ないため)ので、あまり積極的に受けたくないのが本音だと思います。
結果、貧困と介護難民を生んでしまうことにもなりかねませんので、年金と蓄えで最期まで生活できるようにご家族、ケアマネや相談員、出来ればご本人も交えてしっかり相談をしていただきたいと思います。
特養以外の選択肢も検討して
介護度が軽く、身の回りのことは見守りか一部介助でできる方で、お金がなかったりご家族がおられなかったりするケースは、数はあまり多くありませんが、養護老人ホームの入所も選択肢のひとつです。
養護老人ホームは行政の措置で入所が決まるホームで、色々と提出書類があり、審査がありますが、入所の費用は応能負担なので、無理な費用負担はありません。ただ、介護の度合いが上がってくると、退所しなければなりません。
担当の行政や相談員がいますので、それなりの施設を繋いで下さることは期待できると思います。
養護老人ホームは住民票のある住所地の役所の福祉課が担当になります。市役所や区役所に行って窓口で聞くと教えてもらえるかと思います。
(参考コラム:養護老人ホームを利用できる方)
色々と新しいタイプの施設が立ち上がっていますが、質はピンからキリまで様々です。出来れば見学に行かれて、普段の利用者の方々のご様子や、介護職員の関わりの状況など、確認されてから施設を選ぶことをお勧めします。
介護保険は、段々使いにくくなっているな…と感じるのは私だけでしょうか……
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