目から血を流す老婆。-在宅介護実録 沈んだ太陽 第四回
介護・福祉
記事公開日:2016/05/16、 最終更新日:2019/01/04
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車が買えない。
こんにちは、ミチルです。
今回は埼玉の実家に戻り、ポキさんの世話を本格的にスタートさせたところからです。
病院嫌いで、それまで医療機関を受診したことがほとんどなかった78歳の彼女を、あの手この手で言いくるめては車に乗せ、病院周りをする格闘の日々が始まりました。
2010年の秋、実家に戻った私が最初にしたことは、車を買うことでした。ですが、僻地で車を買うことは思った以上にタイヘンでした。
バスが廃線してしまったためチャリンコで自動車屋を見て回るのですが、幹線道路沿いに数キロ間隔で点在してたり、車でなければ到底辿りつけないような場所で営業してたり。
電話やメールで問い合わせをしても、希望の車種を告げると儲けにならないのか相手にしてくれなかったり……。
1週間駆けずり回って収穫なし。疲れきっていた私の目に、ふと新聞の広告が留まりました。
「そうだ、ネットで買おう!」
“足”の調達は度胸。
というわけで、オンライン自動車販売のZさんに連絡したところ、すぐに自宅まで来てくれて、予算を言ったら、運良く出物を紹介してくれました。
ただし、現物は取り寄せのため試乗ができません。タブレットの画面だけで即決するのは無謀とも言えましたが、背に腹はかえられず。
営業の方も「ウチは乗り換えのお客様がメインなんですよ。初めての車をネットで買われるなんていい度胸ですね」と笑っていました。
おかげで“足”は調達できました。
子どもの頃のスイカ。
そこからはノンストップ。
いろいろな部品が壊れつつあるポキさんを騙し騙し、内科、眼科、歯科、泌尿器科、接骨院と、ほぼ毎日のように連れていくのが日常となったのです。ポキさんは医者に行ったことがほとんどありません。
私が子どもの頃、夏になると祖母がスイカをよく買ってきたのですが、スイカを切りながら「オマエは腎臓が悪いから、これ食うといいだ」とポキさんに勧めていたのを思い出します。
会社の検診で腎臓が悪いと言われたのでしょうが、(それならどうして医者に行かないのだろう?)と、傍らにいる我が子など意に介さずムシャムチャとスイカをほおばる彼女を眺めながら、子ども心に不穏に思ったものでした。
唯一、ポキさんが病院にお世話になったのは、がんになったときくらいです。69歳で子宮体がんになったときだけは入院を余儀なくされたのですが、麻酔を打たれて手術室へと待つ間ですら「飽きちゃった」と、手術台の上でモゾモゾじれてしまっていたくらいです。
おそらく、自分の置かれている状況があまり理解できていなかったのかもしれません。
60年ぶりの眼科受診。
ポキさんを内科に連れて行くきっかけになったのは、地域の健康教室に参加した際、血圧が高いとわかり「せめて内科だけでも」受診してほしいと指導されたからですが、驚いたのは眼科です。
ポキさんは義務教育を終えてから一度も眼科へ行ったことがなかったのです。
60年ぶりに眼科を受診したのも、庭木の手入れをしている時に枝が目に刺さり出血してしまったからです。眼科へ急行したのですが、この時ほど「車があってよかった」と思ったことはありません。
眼科に着くと片目から血を流してる老婆を見た看護師が診察を優先してくれ、事なきを得ました。ですが、医者が意外なことを言うのです。
「目の傷よりもそうだけど、なんでここまで白内障を放置していたの? それに酷いガチャ目だけど、今まで大変だったでしょう?」
どうやらポキさんは生まれつき、ものすごく左右で視力差があり、普通の生活は難しいはずだというのです。
初耳でしたが、ポキさんのことはあまり知らないので、「そうだったんですね」というしかありませんでした。結局、その年の12月に白内障の手術を敢行、80歳を目前にして本当にチャレンジャーなポキさんでした。
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