介護施設におけるチームアプローチ。-カイゴのガイド10
介護・福祉
記事公開日:2016/12/14、 最終更新日:2018/12/28
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どんな職種がどんな仕事をしているの?
今回は施設における多職種連携について説明します。
介護は要介護者を中心に様々な職種が協力をして実施するものです。介護職だけではできることも限られていますし、医療的な部分が不足してしまいます。また、看護職だけでは生活面が不足してしまう可能性がありますので、介護職の知識が必要になることがあります。
私の勤めているところは特別養護老人ホームという施設です。介護保険サービスの中の施設サービスと言えば、特養、老健、療養型医療施設の3つですが、若干の違い(人数の配置や求められる業務等)はあれど、中に配属されている職種は大体同じです。
特養でいうと施設ケアマネ(介護支援専門員)、生活相談員(社会福祉士か社会福祉主事)、医師(嘱託医の場合が多いが施設内に診療所があったり、常勤医師がいる場合もあります)介護職員、看護職員、機能訓練指導員(看護職員が担当している場合もあります)、事務員、歯科衛生士(提携の歯科医院からの派遣が多い)、管理栄養士、調理師(給食会社が委託の場合は委託先の職員)などです。
チームアプローチの実施方法
チームアプローチを実施するために重要なこととしては、誰が中心となって行うのかということです。病院などでは医師を中心に行うことが一般的であるといえますが、介護ではケアマネージャーが中心となって進めていくことが多いです。
ケアマネージャーが高齢者の問題点を把握していき、それに合った専門職を集めてそれぞれの意見をもらいケアプランを作っていきます。
ケアプランの見直しの時にも各専門職が協力をして、それぞれ意見を出していきます。
こういったようにケアマネージャーを中心として様々な専門職が協力をしあって高齢者の生活を支えていきます。
チームアプローチを行う上での注意点
チームアプローチはうまくいくと高齢者を支える非常に有効なものとして考えられていますが、うまくいきませんと高齢者に対して適切な支援を実施することができません。
そのため、高齢者に良い生活を行ってもらうためにも注意する点があります。
その一つとしては、まず各専門職が他の専門職の専門性を理解するということです。例えば医療的なことであれば、医師や看護師、リハビリであれば作業療法士や理学療法士、薬のことは薬剤師など、その専門性を理解することによって、何か問題が起きたときにスムーズに対処をすることができます。
チームアプローチは必ず行う
チームアプローチは非常に重要ですので、必ずチームで行うようにしましょう。一人で介護は行えるものではありませんので、一人で行うのではなく、複数で意見や情報を共有しながら行うことが大切になります。
生活相談員
入所されるにあたり、窓口となってケアマネやご家族から相談を受けるのが、生活相談員です。
今ご本人がどのような状態で、なぜ入所の希望があるのか。待機の間どのように過ごしていただくのがいいのか。入所の優先順位は?など、入所調整とご家族からのご相談を受ける窓口の役割を果たします。
一言で言うならご本人の生活に対してどのようにすればよりよく生活を送っていただけるか、ということを総合的に考えるのが仕事です。
施設ケアマネという職種ができてから、生活相談員と業務が被っているところが多くあります。
相談員とケアマネはいずれも常勤専従でおかなければならない職種ですが、線引きがなかなか難しく、同じような役割で動いているところも多々あるように思います。
私のところの施設では、生活相談員が入所の際の相談を受付しながらショートステイの調整もしていますし、もちろん現場での入所者やご家族、職員のいろんな問題の解決に奔走したりしています。
施設ケアマネ
施設ケアマネは、入所されている方の状態を把握してその方に応じたケアプランを立てて、施設でどのように過ごしていただくか、どの職種の人にどう動いてもらうかということを多職種交えて調整していく役割です。
入所されたらすぐ始まる生活のケアプランですから、入所前の生活の状態や心身の状態を知っておかなければなりません。
ご家族からの情報収集も必要になりますので、入所の際から顔見知りになっておくこともあり、施設ケアマネが入所相談を受けるのも不自然ではありません。
施設入所に当たっては、施設の入所検討委員会によって入所の順番が決まります。どなたが入られるかが決まったら、その方の状態の確認と入所の詳細の説明をするためにご本人とご家族に会いに伺います。
その時には介護職員、看護職員等その方の状態に応じて同席していた方がよいと思われる職種が一緒に面接に行きます。
各立場からご本人を観察し、情報収集をします。そして最終受け入れが可能かどうかの判断と、入所後どんなところに気を付けてどんな生活を送っていただくかを各自持ち帰って、施設にてカンファレンスを開催して確認します。
入所後の生活の中で、中心になりサービスの調整をするのが施設ケアマネです。在宅のケアマネが、その方の状態やニーズ、生活の現状、介護者の状態などからケアプランを作成し、サービスを繋いでモニタリングや評価を繰り返して調整するのと同じく、施設ケアマネは、その方の状態、ニーズ、今までの生活、受けている医療、ご本人の希望や意向(確認できる場合)ご家族の希望や意向など情報収集・整理をして、施設の生活をどのようにして過ごしていただくか、ケアプランを立てます。
そのケアプランをもとに、介護職員は食事や排泄、入浴、日中の過ごし方や日課、様々なリスクに対する対応など、どんな介護で支援するのかを考えます。
看護職員
お薬の内容や服薬の方法、受けておられる医療に関すること、既往や現病にまつわることに対応するのが看護職員の役目です。入所後の健康管理や、診察を受けたほうが良いか、様子を見られる範囲か、治療が必要な状態か、などその方の状態に応じて判断して医師への連絡調整をします。
診察が必要な場合は、担当の医師が施設への往診や病院受診で対応します。医師の診断で入院が必要と判断された場合は、あらかじめ提携を結んでいる病院(ベッドの調整ができないときはそれに限らない)に入院して治療を受けることになります。
管理栄養士
管理栄養士は、ご本人の栄養状態や食事摂取量、摂取状況、食事制限の有無や嚥下の状況などの情報を得て、食事形態や療養食の要否など決定し、栄養ケアプランを作成し、経過を見て対応します。
機能訓練指導員
機能訓練指導員は、ご本人の心身の状態と希望等確認して、個別機能訓練計画を立てます。集団リハ・個別リハに分けて、身体を動かしたり頭を使ったり、単純な運動だけではなく、リハビリの要素が含まれるゲームや体操など考えて行っていきます。
歯科衛生士
訪問歯科で利用している歯科医院の歯科衛生士が週1回施設に来て口腔ケアを実施しています。
また、介護職員に対して口腔ケアの指導を行なったり、個別に対応した方がよいと思われる入所者については口腔ケアマネジメント計画を作成するなどのお仕事もあります。
利用者の中で治療を必要とする方については歯科医師につないでもらう役割もあります。
チームアプローチの具体例
このように各職種で役割は分かれていますが、1人の方に対してみんながかかわることになるので、みんなが連携しなければケアはうまくいきません。
要介護4のHさんという方を例に出して多職種連携についてご説明します。
Hさんは脳梗塞で左半身麻痺があり、入院された際にお食事が食べられなくなって胃ろうを造設しました。肺気腫があり動くと息切れが少ししますが、日常生活には影響がない程度です。
その後、胃ろうは使用せず、ご本人とご家族のたっての希望で、経口摂取されることになりました。
しかし時々微熱が見られ、その都度、抗生物質の内服治療をされています。多分、誤嚥性肺炎を繰り返しているのであろうと言われています。
また、皮膚が弱く乾燥性の湿疹ができやすいので、胃ろう周囲もかゆみが出てただれを起こしやすいため、ご本人からはできれば胃ろうは外してほしいと希望があります。
脳梗塞で入院していた病院に、今も定期的に通っておられます。目立って認知症はないが、言語障害があり、意思の疎通がうまくできないときにイライラして暴言や暴力が出ることがあります。
趣味は賭け事。競馬、競艇をテレビでご覧になって楽しまれています。ご自宅では声掛けをしないと一日中ベッドで寝ていることもあったようです。
施設に入所するにあたってご家族は、メリハリのある生活を送ってほしい、他のご利用者とも楽しく過ごしてほしい、苦痛のない生活をしてほしい、という意向を持たれていました。
そんなHさんをサポートするための多職種連携はどうなっているかといいますと…。
まず、肺気腫の経過は嘱託医に診ていただき、薬の処方を受けています。普段の健康管理は看護師が行い、誤嚥性肺炎の兆候を見逃さず、早めの対応に心掛けています。そのため、朝、介護職員が行ったバイタルサインの測定値を確認し、発熱や呼吸器症状が見られた場合は、経過観察し、医師に報告、指示を仰ぎます。
Hさんの誤嚥性肺炎を起こす一番の原因が食事の際の誤嚥ですから、食形態や口腔ケアが重要になります。食事の食べ具合や、むせの状態など介護職員と看護職員・管理栄養士が観察します。ご本人の食べる意欲や摂取量も見ながら、食事形態をどうするかを確認します。一般的に、むせがある場合はムースやゼリーの形態にしてある食事を選択します。最初は、病院からの指示でゼリー状の食事を召し上がっていただきました。ただ、ご本人があまり美味しくなく、食べたくないと意思表示をされました。
ご本人の希望は、「普通の食事が食べたい。」です。ただでさえ、ゼリー食はカロリーが低めになるので、食べられなかったら一日の摂取量が確保できなくなります。
ご本人の希望を叶えるため、まずは管理栄養士が常食の一口大、荒刻み、刻み食を準備して摂取が可能か試してみます。食事の様子を介護・看護職員と管理栄養士が観察し、ご本人の意見を聞いてみました。その結果食べる時に、口に残っているのに次を入れてしまうので、むせが起きてしまうということに気が付きました。
むせないためには介護職員が横について慌てないようにと声掛けをしながらゆっくり咀嚼して召し上がっていただくようにしましょうと看護職員が指示をし、食事介助の方法を変更することになりました。
その結果むせが激減し、一口大とはいえ普通の食事が食べられるようになりました。ご本人のニーズも満たされ、安全に食事量がアップしました。
それだけではなく、嚥下機能が落ちないように週に一回訪れる歯科衛生士にはピカピカに口腔ケアをしてもらい、介護職員も口腔ケアの指導を受けました。Hさんには歯科衛生士の指導により介護職員が行う食事前の口腔体操にも参加していただき、食事前に口腔周囲の筋肉をほぐし、唾液が出るように促しています。
スキンケアも看護師と介護職員が連携しています。胃ろう周囲はただれがないように、看護師がガーゼ保護をして清潔に保ちます。ただれてきたら、医師の指示による軟膏を塗布してひどくならないように気を付けています。
もともとの乾燥肌は、お風呂あがりなどに介護職員がボディークリームを全身に塗っています。脳梗塞に対する外部の病院の定期受診についてはご家族に協力を得て、日常の様子や体調の変化など関係する情報については看護師が書面を作ってご家族にお渡しします。
言語障害に対しては、介護職員がご本人の口元をしっかり見て、大きな口を開けてゆっくり話すように促して、時間がたつごとに理解できるようになってきています。他の職種が話をする際は、慣れている介護職員に付き添ってもらったり、文字盤を使って話をしたりと工夫をしています。それによってだんだんと言葉が通じないことでのイライラがなくなってきたようです。
それ以外のHさんご自身の過ごし方ですが、日中はできるだけお部屋にこもってしまわないように、競馬や競艇の中継をテレビを見るのもリビングに出てきてもらうように気をつけています。
時には運転手さんにお願いして馬券を買いにお出かけすることもありますし、時間のある時は看護職員にも散歩に付き合ってもらっています。
機能訓練指導員が体操にお誘いしたり、他部署でも行事があるときは積極的に参加してもらうなど、他のユニットの職員も協力してHさんの生活にメリハリをつける工夫をしています。
上記に記載したことはすべて施設ケアマネの作成したHさんのケアプランに基づいて行っていきます。他の入居者の方々もHさんと同じようにケアプランがあって、それぞれ細かいところまでいろんな職員が連携してケアを行います。
各職種の役割は色々と決まっていますが、行っていることは利用者お一人お一人の生活のためのことですから、すべてのことが線でつながっています。各職種がよくコミュニケーションを図り情報共有をしっかりすること、各職種が専門性を発揮し、お互いにもてる知識や経験値などを生かして、入居者にとってどうすることが一番いいのか、ということを判断基準にして追求することが、良いケアにつながっていくと思います。
…と言うのは簡単ですが実際は毎日毎日悩ましいことばっかりです。より良い現場のためにみんなで少しづつ頑張っています。
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