遠方からの介護施設入居。-カイゴのガイド11
介護・福祉
記事公開日:2017/01/25、 最終更新日:2018/12/28
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老人ホーム入居による生活の変化
離れてくらしている両親の施設を選ぶときに、自分たち家族の生活を変えるわけにはいかず、できれば自宅の近くの老人ホームに入居してもらいたい、とおっしゃる方は少なくありません。私の勤める神戸の特養でもこれまでに岐阜から、岡山から、島根から、大阪から、などいろんなところからご入所いただいたケースがあります。
ご家族にとっては家の近くの施設に親が入居することで、何かあったときにすぐに駆け付けることができたり、普段から頻回に面会に行けたりするところが安心につながるようです。しかし、良い点だけではなく悪い点も考えられます。
例えば、環境の変化により認知症が進行してしまう恐れがあります。
慣れ親しんだ地域から全然知らないところに来て、意欲がなくなってしまい、うつや廃用症候群など生活不活発病を引き起こしてしまうリスクはとても高いので、きちんと事前に説明しておく必要があります。
低空飛行ながら、ご自分で身の回りのことを出来ないなりにやることで、毎日のリズムが生まれます。また、見慣れた風景や使い慣れたものに囲まれて生活することで、気持ちの落ち着きを得ることは高齢者や認知症の方にとっては非常に大切です。
周囲から見たら十分にできていないと思うことでも、高齢者の方は自分なりにやらなければならないと思って継続しながら生活を維持しているのです。
それが介護施設に入ることでご飯は待っていれば出てきますし、掃除も職員が行うという生活に変わります。安心の反面、これまで自分でしていたことも出来なくなっていくことがあります。しかも施設に入ると、いくら個室とはいえ集団生活ですから、周りから聞こえてくる方言も違えば、何となく感じる空気感も違いますので馴染めないこともあります。
全員がそうなるというわけではありませんが、そういうリスクがあるということはご理解いただいておかなければなりません。
自宅での生活か、老人ホーム入居か
できなくなったことを嘆かずに、出来ることを数えて、周囲が少しでも手助けをしながらギリギリまで独居生活・老々生活を続けていくことは、介護予防とも言えるでしょう。ただ、老化による機能低下は必ずあるので、動けなくなってしまう前に、ご自分でもうダメだ、という気持ちになったら、施設入所のタイミングかと思います。
以前の記事で紹介した、赤ちゃんができたという妄想をされたKさんは、ご主人もご本人も要介護でした。家の中も物があふれて、かろうじてヘルパーさんがお掃除に入っている居間だけが動ける状態で、食事はヘルパーさんに作ってはもらっていたものの、Kさんは糖尿、ご主人は慢性腎不全、コントロールもなかなかうまくいかず、週1回の訪問看護では薬の管理も十分できない、といった状態でした。
担当した当初、私は娘さんに「これは施設に入らないと何が起きるかわかりませんよ」とケアカンファレンスのたびに話していましたし、専門職は皆同意見でした。でも、ご主人はKさんとこのまま自宅で一緒に暮らしたいと望まれていました。
娘さんもご主人やKさんの思うように生活させてあげたいと、施設入所には同意されませんでした。関わりを持っている専門職は皆、口をそろえて「なんで??」と言いました。私も最初は同意見でした。
しかし、Kさんご夫妻を見ていくうちに、「私たち専門職が大変だからKさんたちに施設に入ってもらいたかったんだ。支えなければならない私たちが施設入所を押し付けてしまっている…」ということに気づきました。
その経験があってから、「何かあったら」を考えすぎないで、今のその方の生活と、ご本人がどうしたいか、ということを一番に考えるように意識するようになりました。起こり得るリスクについては、今の生活で何ができて何ができないか、ということを整理して、ご家族にしっかり説明して同意を得ておく、ということを心がけるようになりました。
このKさんの場合は、まずご家族には何かあったときに、駆け付けることが遅くなって最悪のことが起きるかもしれないことを説明して、それでもと在宅生活に承諾をいただきました。
その上でご主人が無理だ、と思うところまで在宅生活を送っていただくことになりました。結局その後、ご主人は透析を受けることになり、そのタイミングでKさんが特養に入所されました。
お元気だったご主人でしたが、最期は病院で亡くなられました。娘さんも「思うように生活できたので幸せだったと思います。」とおっしゃって、思い残すことのない最期だったと思います。
もちろん、これがすべての方にあてはまるわけではなく、あくまでもサービスは自己決定(ご本人やご家族)であるということを調整役である人、特にケアマネさんは忘れてはいけないということです。
例えば、認知症があって、近所の方とトラブルがある方は、地域の方々から責められたり、孤立してしまったりすることもあります。
このようなケースで地域にそのまま住み続けることはご本人にとっていい結果は生まれないので、ご本人が家にいる、とおっしゃっても適応する施設に入所して24時間誰かが見守りや介助をしてくれて、同じような状態の方と一緒に生活されるのがベターだと思います。
遠方からの老人ホーム入居に必要な手続き
遠く離れたところから近くに呼び寄せて入所を考えておられるご家族の場合、大体、ケアマネさんからではなく、お休みにご家族自身が直接施設に見学に来られて、「実は離れて暮らしている独居の親が心配で・・・」と相談があるケースが大多数です。特にお盆やゴールデンウィーク、お正月などまとまったお休みが取れて、親類が集まる時期に来られることが多いように思います。
しかし特養の入所の申し込みは、担当のケアマネージャーさんでないとできません。こうした入居希望者には担当のケアマさん経由で施設に連絡をとることをお願いし、電話やFAX、メールのやり取りで、申し込みを済ませていただきます。
大体は待機をしていただかないといけないので、そのあたりもご相談に来られたご家族とどのように待機をするかを相談し、必要があれば担当のケアマネさんに伝えて、ご家族と相談していただきます。
入所が近くなると、ご本人の面接に行かなければなりません。やはり、直接お会いして状態を確認するのが一番いいので、出来る限り行かせていただきますが、どうしても遠くて行けない場合はできるだけ、メールやFAX等書面で情報を送っていただき、状態を把握します。
最近では、施設でのご様子を画像で送ってくださった相談員さんもおられます。「文明の利器やなぁ」と感心しますね。
遠距離からの施設入居で一番大変なのは、『どうやって施設まで来ていただくか』について考えること。長時間の移動にお体の具合が耐えられるかどうかを考えた結果、施設への入所をお断りすることもありますのであらかじめご理解いただかないといけません。私の働く特養では、遠方の送迎に関しては、ご家族に介護タクシーや自家用車でお願いしています。
入居後のスタッフのサポートと家族の面会
入居された後は、ご家族は「近くなってすぐに会いに来れるので良かった」「これでもう安心だね」とおっしゃいます。一方で入居されたご本人は馴染めるまではしばらく家に帰りたい、とおっしゃったり、混乱されたり、お部屋にこもってしまわれたりすることがあります。しかしこうした方でもご家族の面会が多いと安心されてやがて施設に馴染まれます。やはり、方言の違いや地域性の違いで最初は何となく疎外感や違和感があるのかもしれません。
施設に馴染んで頂けるかどうかはどれだけ職員が上手に関われるかにかかっているところでもありますし、ご家族のご協力が欠かせないところでもあります。一昔前は「施設に入居した後はご家族がお越しになると里心がつくので、しばらく面会には来ないでください」と言われる施設もありました。
しかしそれは反対で、いつでもご家族に会える、と思って頂けることがご本人の安心につながりますので、ご遠慮なく、時間が許す限り面会にお越しいただきたいと思います。
私が老人ホームの入居相談を受けていた時も、施設に入れることについて罪悪感を持たれるご家族が少なからずおられました。その時に、「施設に入っても、精神面のサポートについてはご家族にお願いするのが一番です。ご家族が毎日行っておられたお食事や排泄、入浴など、日々の大変な介護は、施設の職員がすべて行います。それで、ご家族はご家族の生活を送っていただいて、いつも元気でいいお顔でできるだけたくさんご本人に会いにお越しください。それでご本人も精神的に落ち着かれると思います。施設の職員とご家族で役割分担をすると思ってください」と説明していました。介護が大変で疲れてしまって病気になったり虐待につながったりすることを防ぐために施設があると思いますので、施設に預けることは決して悪いことではありません。介護は育児のように終わりがいつなのか、見当がつかない分、しんどいものです。これだけサービスが多様化しているので、ご家族だけが介護の負担を負うことなく、介護サービスを上手に使ってご家族自身も心身ともにお元気で、介護を受けられるご本人のサポートをされることをお勧めします。
老人ホーム・高齢者向け住宅探しはおまかせください
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