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老人ホームでの夫婦間トラブル 前編

老人ホームでの夫婦間トラブル 前半

介護・福祉


記事公開日:2017/12/04、 最終更新日:2018/12/28

パーキンソン病の幻覚症状と楽しく付き合う

夫婦での老人ホーム入居

 

長く介護業界で働く私も、あまり出会ったことがないのがご夫婦同時入居です。

 

数組しか記憶にないのですが、中でも思い出の多いGさん夫婦のお話を、今回はさせて頂きます。

 

Gさん夫婦は二人部屋にご夫婦で入居されていました。

 

ご主人は脳梗塞が元で片麻痺、奥様が認知症で、お二人ともが要介護1での入居でした。

 

「ご夫婦で二人部屋に入居って素敵な老後ですね」

 

そう言った私に

 

「案外そうでもないのよ、ご夫婦の同時入居は難しいの」

 

と言って、主任さんが難しい顔をしていたのを覚えています。

 

夫婦で助け合って生活

 

入居したての頃は奥様が少し落ち着きがなくて夜が不眠気味なこと以外は、ご夫婦で助け合って過ごしておられ、とても素敵な関係でした。

 

ご主人が片麻痺で不自由な部分を、身体的な障害のない奥様がサポートしておられました。そして認知症の進んでいる奥様の認知面を、クリアなご主人がいろいろ口添えすることでサポートしておられました。

 

お互いに補い合って生活する、理想的な夫婦だなと思って見ていました。

 

些細なことですが、歯磨きは印象的でした。

 

「洗面所に行く」ことも「歯を磨く」こともできるご主人ですが、片麻痺で杖を使っているので「歯磨きセットを持って洗面所に行く」ことは少し難しいのです。

 

一方の奥様は「歯磨きセットを持って洗面所に行く」ことも「歯を磨く」こともできるのですが、「食後に歯を磨く」こと自体を忘れてしまいます。

 

食後はご主人が奥様に声を掛け、二人分の歯磨きセットを洗面所に持って来てもらい、ご夫婦で順番に歯を磨くのです。

 

同じような要領で「お風呂の着替えの準備」や「食事の準備」などもお二人でやっておられました。

 

老人ホームでの夫婦間トラブル 前半01

 

ひとつひとつはささやかなこと。

 

でもそのささやかな補い合いを積み重ねることで、日常生活がうまくいく。

お二人は長年連れ添ったご夫婦だからこそ、といった感じの息のあった暮らしをされていました。

 

それは、綺麗に積み木を積むような暮らし方でした。

 

ですから、そうです。

片方が積み上げることができなくなってしまうと、崩れてしまうのです。

 

認知症の進行により崩れるバランス

 

奥様の認知症の進行が、きっかけだったように思います。

もともと時折見られた被害妄想が、顕著になってきました。

 

「財布がない」「誰かに盗まれた」と言って騒ぐ奥様を、ご主人はいつものように宥めておられました。それでも収まらない奥様の為に、若い女性職員が一緒になって探しましたが、見つかりません。

 

ご主人は気をつかって、女性職員に「もういいですよ」と声を掛けました。

 

その瞬間でした。奥様が火がついたように怒りだしたのです。

「アンタ、この女が相手か?!」と。

 

いきなり怒りだした奥様が女性職員に掴みかかろうとされ、驚いたご主人が止めに入り、大騒ぎになりました。

 

女性職員は動揺していましたし、奥様は興奮状態、ご主人も「訳が分からない」と言うばかり……。

 

同じようなことが、数回続きました。

 

被害妄想の対象が「浮気疑惑」に切り替わったのだと、理解するまでけっこうな時間がかかりました。

 

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