自宅で問題行動が出るのはナゼ? 後半
介護・福祉
記事公開日:2018/10/29、 最終更新日:2018/12/28
在宅介護は家族の前で老いを受け入れること
「私だって将来息子の嫁に世話になったり、この施設であんた達に世話されるのは嫌よ。全く今の私を知らない人に世話されたいわ」
定年を控えていた大ベテランの介護主任は、明るく、けれどもきっぱりそう言いました。
その言葉を聞いて、私たちは「なるほど~」と唸ったのです。
Aさんはいわゆる大企業にお勤めし、立派な一家の大黒柱として、長く暮らして来られた方でした。趣味の欄には「接待の為に始めたゴルフ」と書かれていました。他にはこれといった趣味もなく、お話させて頂くと仕事に邁進してこられたのだとよく分かる話しぶりでした。
そんな仕事人間だったAさんにとって、家族の前で老いを受け入れるのは難しいことだったのではないかと、想像するのは難しいことではありません。なんとか世話を受けないでおこうと考えて、お風呂やトイレの回数を減らそうと介助を拒否したAさんの気持ちが少しわかるような気がしました。
認知症のAさんに、その感情を説明することが難しかっただろうということも、想像できます。
私達職員は彼にとって他人なので、割り切って世話を任せられる。そう考えれば、入居してからの介護に拒否がないのもうなずける話だと思いました。
「それにね、この世代の人は『男女七歳にして席を同じくせず』だから、長男さんがいない家にお嫁さんと二人きりっていうのは、実はかなりのストレスだったんじゃないかな」
そう言われれば、女性の職員が着替えをお部屋に持って行ったら、Aさんは立ち上がってトイレに行こうとされたり、部屋を出て行こうとされる傾向がありました。あれは、女性と狭いところで一緒になっていることに落ち着かなかったのかもしれないと、みんなであれこれ話しました。
入居してホッとしているのは、もしかしたらお嫁さんではなくてAさんご本人だったのかもしれません。
家族と同居することが必ずしも幸せなことではない
それからも多少の介護拒否を見せられることはあっても、Aさんは暴力を振るわれれることはほとんどなく穏やかに暮らしていかれました。
回数は多くなかったですが、時折会いに来る長男夫婦や孫との関係も悪くなかったように思います。
「家族と同居することが全ての高齢者の望みではない」という、良い例なのではないでしょうか。
また、今このケースを思い返して、思うことがありました。
その頃はこういうケースが多かったためにあまり考えが及ばなかったのですが、この長男さんは仮にも自分の嫁が暴力に遭っているのに、何故お嫁さんが限界を訴えるまで耐えさせたのでしょう。
「認知症だから仕方がない」という考えは、違うと思います。
いかなる理由であっても、やはり暴力はいけませんし、早期解決を考えるべきだと私は考えます。
家で生活することが全てではないし、病院暮らしが全てでもないと思います。その方その方に合った暮らし方があるはずです。介護とは、何がなんでも同居すべきということでもなければ、とりあえず病院に入院させることでもありません。その方の望む暮らしを、丁寧に模索してゆく心こそが大事なのではないでしょうか。
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