高齢者の権利擁護とは
記事公開日:2016/05/13、 最終更新日:2019/11/08
目次
高齢者の権利擁護
日本国憲法において「国民はすべての基本的人権の享有を妨げられない」と規定されており、基本的人権は生まれながらに持っているものとして高齢になっても当然保証されなければならないものです。
また、幸福追求権に関する文言では「すべての国民は個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とも規定されています。
しかし、高齢となり身体機能や認知機能が低下し自分1人での生活が難しくなると、人権や幸福追求権といった権利は侵害されやすい状況になります。実際に1人暮らしの高齢者をターゲットとした悪質商法やオレオレ詐欺、虐待など事件は枚挙にいとまがなく、高齢者の権利が侵害されています。
このような高齢者への権利侵害から命をはじめとして自由や社会参加、財産、幸福追求権などの権利を守るため取り組みを「高齢者の権利擁護」といいます。
高齢者の権利擁護の必要性
高齢になり日常生活を家族や周囲の人々に依存するようになると自身の権利が侵害されたり、ケアに不満がある場合でもなかなか「助けて欲しい、止めて欲しい」とは言えません。このような状況を解消し、高齢者が助けを求められるようにするためにも権利擁護は必要です。
権利擁護が侵害される代表的な事例に高齢者への虐待があります。虐待というと暴力的な行為を思い浮かべる人が多いかも知れませんが、虐待は暴力だけではありません。
虐待には以下の5種類があります。
- 身体的虐待 なぐる、ける、たたく、動けないように拘束するなど
- 心理的虐待 どなる、けなす、悪口を言う、無視をする、排泄の失敗を強く責めるなど
- 性的虐待 本人が嫌がる性的な接触や嫌がらせ、下半身を裸にして放置するなど
- 介護・世話の放棄・放任 食事や排泄、入浴など必要な介護を提供しない
- 経済的虐待 高齢者の年金や貯金を勝手に使う、お金を渡さない、不動産を勝手に処分するなど
虐待の難しい点はすべての虐待が悪意を持っておこなわれているものではないと言うことです。介護疲れや過度な介護ストレスから精神的に追い込まれ介護者が虐待してしまっているケースもあります。このような虐待がおこなわれないようにするためにも社会での高齢者への権利擁護は必要です。
高齢者の権利を守る制度
高齢者の権利を守る制度には成年後見制度や地域福祉権利擁護事業があります。
Ⅰ 成年後見制度
認知症などにより判断能力を欠く高齢者は自身で金銭管理や買い物、その他の日常生活を維持することが出来ません。高齢者が安心して生活するためには金銭管理や契約手続きを代わりにおこなってくれる人が必要です。このような観点から創設されたのが「成年後見制度」です。
成年後見制度の目的は高齢者の財産を守ることとと生活の質を保つことです。成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があります。
任意後見制度は高齢者に判断能力がある段階で判断能力が低下した場合に備えて、誰に何を決めてもらうのかをあらかじめ決めておく方法です。
法定後見制度は高齢者の判断能力が低下した際に申し立てに応じて家庭裁判所が後見人を選びます。本人の判断能力に応じて補助・保佐・後見の3つの類型があります。
選ばれた後見人は主に以下の業務をおこないます。
- 財産管理 本人の年金や資産を管理し、本人に必要な支出を管理します。通帳や不動産の権利証などの管理もおこないます。
- 身上監護 介護サービスの利用や施設利用の手続きや、費用の支払いなどをおこないます。
Ⅱ 地域福祉権利擁護事業
地域福祉権利擁護事業は市町村の社会福祉協議会がおこなっているサービスです。判断能力が不十分な方が住みなれた地域で生活を継続できるようサポートする制度で、判断能力に低下がありながらもこの制度の趣旨がある程度理解できる方が利用対象になります。
利用できるサービスには以下の3つがあります。
- 福祉サービスの利用援助 福祉サービスに関する情報提供や手続き方法、利用方法についての助言をおこないます。
- 日常的金銭管理サービス 公共料金や家賃など生活に必要な支払いや生活費を預貯金から本人に代わって出し入れします。
- 書類等の預かりサービス 預貯金通帳や不動産の権利証、実印など大切な書類を預かります。
高齢者の権利侵害を予防するためには
高齢者の権利侵害を予防するためには紹介した成年後見制度などの事業を利用する以外にも以下のような取り組みが求められます。
①介護保険サービスなどの利用
親や配偶者など家族の介護の問題を自分1人で抱え込まないようにすることです。デイサービスやショートステイ、訪問介護といったサービスを上手に利用することで介護負担を軽減でき、介護者の身体的・精神的な負担がなくなることで虐待の予防につながります。
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②地域全体での見守り
虐待や悪質商法など高齢者への権利侵害がおこなわれていないか地域全体で見守ることは高齢者の権利擁護につながります。虐待はおこなっている本人では止められない状況もありますし、受けている高齢者も自分で声をあげることは難しい状況です。地域の人が早く気づき報告することで問題の深刻化を防ぐことが出来ます。
③介護者の孤立を防ぐ
虐待は介護者が孤立している場合に多く起こります。地域包括支援センターなどが介入しケアマネージャーや社会福祉士といった専門家が介護者の相談にのってあげることや、介護のストレスや悩みを話し合えるコミュニティに参加することで精神面のゆとりが生まれ、虐待などの権利侵害を予防することが出来ます。
権利擁護で欠かせない認知症への正しい理解
高齢者の権利擁護に欠かせないものとして社会の認知症への正しい理解があります。認知症の方は自分で意思表示をすることが難しいため権利侵害にあいやすく、高齢者虐待や詐欺など多くの被害が発生しています。
認知症の方の中には徘徊や暴言、昼夜逆転などの症状が出る方がいます。このような症状は介護者の負担を増やすこととなるため介護者の負担は非常に大きいです。しかし、認知症を理解し正しい対応や接し方をすることで症状は緩和され介護負担が軽減できることは少なくありません。また、地域住民など周囲が認知症を理解し、認知症高齢者を見守ったりサポートすることで介護者の精神的な負担は大きく軽減されます。
認知症の普及活動は地道な取り組みで、全ての人に理解してもらうことは簡単ではありません。しかし、成果が出ればすべての人にとって住みやすい社会につながります。
アドボカシー
最近よく聞く言葉に「アドボカシー」があります。アドボカシーは本来「擁護」や「支持」「唱道」などの意味がある言葉で、日本では近年「権利擁護」の意味で用いられます。
アドボカシーは権利の代弁や擁護のことを指すとされており、自分で権利を主張することが出来ない寝たきりの高齢者や認知症高齢者、終末期の患者などの権利を代弁することとして使われます。アドボカシーという言葉が多く用いられるようになった背景には超高齢者社会により成年後見制度などの権利擁護が身近な問題となったこと、NGOやNPOといった組織が積極的に普及活動をしていることなどがあげられます。
介護や福祉サービスを利用する際やメディアでアドボカシーという言葉が出てきた際には内容に注目し、権利擁護について考えてみてください。
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