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アウトカム評価とは?令和3年度の介護報酬改定に向けた介護を考えたいあなたへ

記事公開日:2020/10/22、 最終更新日:2020/10/14


ADL維持等加算

令和3年度の介護報酬改定が目前となり、介護に不安を抱いていませんか?平成30年度の介護報酬改定で新設された「ADL維持等加算」に着目し、厚生労働省の方針と合わせて算定要件、ADL評価のBarthel Indexなどからのアウトカム評価の視点を解説しました。高齢者の状態改善における方向性に悩まれている方は是非ご覧ください。

 

介護報酬が平成30年度に改定され、介護報酬率が0.54%の増加であったことが近年の騒動によってまだ新しく感じられます。

次回の介護報酬改定の予定は、平成30年度から3年後である令和3年度。

 

介護報酬の改定が目前となり、

「どんな介護をしていくことが望ましいのだろう。」

と、一抹の不安を抱えてはいませんか?

 

そこで本記事では、利用者の家族の方や介護サービス事業所(以下、事業所と記載します)の運営に関わる方が、介護報酬についての理解を深め、厚生労働省の方針を見定められ、今後の介護を改めて考えられるために平成30年度の介護報酬改定での焦点の一つであったアウトカム評価を中心に解説していきます。

介護報酬におけるアウトカム評価とは?

アウトカム評価

介護報酬は、利用者の能力に応じて自立した日常生活を営めるように、介護サービスを事業者が利用者へ行うことで、事業者へ支払われるサービス費用のことです。

介護報酬の評価視点を考える際に、アメリカのアベティス・ドナベディアンが医療の質における三つの評価視点として上げている「ストラクチャー」「プロセス」「アウトカム」が導入されています。

介護サービスの質における三つの評価視点は、以下のように分類されていました。
(参考元:第185回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料の【資料】自立支援・重度化防止の推進)

それぞれの特性に応じて介護報酬が位置づけられています。
「ストラクチャー」は構造を意味し、サービスを提供するために必要な人員配置などの体制への評価視点。
「プロセス」は過程を意味し、サービス内容(要介護度別の基本報酬、訓練などの実施、計画書の作成)などの現場への評価視点。
「アウトカム」は結果を意味し、サービスによりもたらされた利用者の状態変化(在宅復帰)といった対象者への評価視点。

三つの評価視点に基づき、介護報酬の「基本報酬」と「加算(減算)」との二つは位置づけられています。
「加算(減算)」において、平成30年度の介護報酬改定ではアウトカム評価を重視した算定と言えます。

具体的には厚生労働省が公表する介護報酬での、平成30年度の介護報酬改定の主な事項において、アウトカム評価に関する三つの記載です。
1) リハビリテーションによるアウトカム評価の拡充(その1)
訪問リハビリテーション:事業所評価加算120単位/月

2) リハビリテーションによるアウトカム評価の拡充(その2)
通所リハビリテーション:生活行為向上リハビリテーション実施加算
 3月以内で900単位/月
 3月超、6月以内で450単位/月

3) 通所介護への心身機能の維持に係るアウトカム評価の導入
 ADL維持等加算(Ⅰ) 3単位/月
 ADL維持等加算(Ⅱ) 6単位/月

既存の加算であった「事業所評価加算」と「生活行為向上リハビリテーション実施加算」は枠組みを広げた形となっています。

「事業所評価加算」(介護度の維持・改善率の評価)は、介護予防通所リハビリテーションだけでなく、介護予防訪問リハビリテーションへも設けられています。
「生活行為向上リハビリテーション実施加算」(日常生活を営める支援への目標に対する達成状況の評価)は、通所型リハビリテーションだけでなく、介護予防通所型リハビリテーションへも設けられています。

そして「ADL維持等加算」は通所介護での新設です。

 

なぜ、アウトカム評価が重視されているのでしょう?

介護報酬においてアウトカム評価が重視されている理由とは?

「アウトカム評価」の加算例は、
 訪問リハビリテーション:社会復帰加算
 介護予防訪問リハビリテーション/通所リハビリテーション:事業所評価加算
 介護予防/通所リハビリテーション:生活行為向上リハビリテーション実施加算
 通所介護:ADL維持等加算
 介護老人保健施設:在宅復帰・在宅療養支援機能加算
などが挙げられますます。

介護報酬において「アウトカム評価」が重視される理由を探るために「ストラクチャー評価」「プロセス評価」「アウトカム評価」それぞれの特性を簡単にみていきます。

「ストラクチャー評価」「プロセス評価」は、介護保険制度ができたときからある評価視点です。結果にとらわれず労力や体制を客観的に評価できる一方、利用者の状態改善効果は上がりにくい特徴があります。

「アウトカム評価」は、平成18年度の「事業所評価加算」の加算から導入された評価視点です。利用者の状態改善から評価することで、効果的なサービスにしていくことができます。

介護報酬の社会的背景として、2025年に団塊の世代が75歳以上となることがよくあげられています。

平成30年度の介護報酬改定に伴い、厚生労働省は4本の柱で方針を公表しています。
1)地域包括ケアシステムの推進
2)自立支援・重症化防止に資する質の高い介護サービスの実現
3)多様な人材の確保と生産性の向上
4)介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保

超高齢社会(65歳以上の人口が21%より大きく高齢化した社会)の加速へ対応するために介護、医療の両面で対策しています。
生活の場まで切れ目のない安定したケアを利用者が受けられるように動いているのです。

 

介護報酬における「アウトカム評価」は、利用者の介護度や日常生活自立度に着目した介護サービス費への評価視点であると言えます。

つまり、超高齢社会が加速するなかでも『自立支援・重症化防止に資する質の高い介護サービスの実現』を目指し、利用者が効果的に状態改善できる介護サービスを事業所は追求されているのです。
そのため、事業所はアウトカム評価の視点を持つことが重視されています。

 

次は、通所介護に新設された「ADL維持等加算」に着目して解説していきます。
利用者の状態をどのような視点で追うことが望ましいのかを具体的にみていきましょう。

「ADL維持等加算」から見える実際のアウトカム評価とは?

ADL維持等加算

2018年12月15日から通所介護で開始している「ADL維持等加算」に着目して解説していきます。
 ADL維持等加算(Ⅰ) 3単位/月
 ADL維持等加算(Ⅱ) 6単位/月
評価期間は1~12月の1年間、6ヶ月以上利用した対象者のADL評価(Barthel Index)によって厚生労働省の定める要件を満たすと次年度からすべての利用者へ加算を算定することができます。

 

早速ですが、ADL評価の実際をみていきます。

「ADL維持等加算」のADL評価方法

図 1:Barthel Index(引用元:健康長寿ネット)

「ADL維持等加算」のアウトカム評価ではバーセルインデックス(Bartherl Index)というADL評価で利用者の状態を評価していました。
100点満点で、10項目の各項目を5点刻みで評価します。

評価項目は、
1) 食事
2) 車椅子からベッドへの移動
3) 整容
4) トイレ動作
5) 入浴
6) 歩行
7) 階段昇降
8) 着替え
9) 排便コントロール
10) 排尿コントロール
と、利用者の日常生活の動作の状態改善を客観的に評価できることが特徴です。

客観的な日常生活動作の評価指標としてバーセルインデックスは有用ですが、機能評価としての課題では、認知機能の評価がされない点が挙げられ議論が続いています。

 

事業所の機能訓練指導員が評価することとなっていますが、対象者の要件はあるのでしょうか?

「ADL維持等加算」の算定要件

「ADL維持等加算」の算定要件は、クリームスキミング(収益性の高い利用者のみを抽出すること)を防止できるように定められています。

 ADL維持等加算(Ⅰ) 3単位/月
算定要件は、以下のように定められていました。
 1月から12月の評価期間内で6ヶ月連続利用した利用者の集団であること
 総数が20名以上であること
 要介護3以上の方が15%以上であること
 評価時点より逆算し、初回介護認定日が12月以内の方が15%以下であること
 評価の最初の月と6月時点でバーセルインデックスを機能訓練指導員が測定し、どちらの月も報告されている物が90%以上であること
 ADL利得が上位85%の者について、0より大きければ1、0より小さければ-1、0ならば0として合計が0以上であること
(ADL利得とは、最初の月のバーセルインデックスを「事前BI」、6月目を「事後BI」、「事後BI」から「事前BI」を差し引いた数値のこと)

 ADL維持等加算(Ⅱ) 6単位/月
算定要件は、上記の要件を満たした後もバーセルインデックスを測定、報告した場合です。

実際のところ「ADL維持等加算」の事業所の算定率は、
 ADL維持等加算(Ⅰ)が0.2%
 ADL維持等加算(Ⅱ)が0.1%
(参考元:第180回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料の【資料1】通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護)

と、算定の難しさが表れていますが、要件に応じて「ADL維持等加算」を算定できるようになっています。

 

介護報酬におけるアウトカム評価を中心に解説してきました。

厚生労働省は2025年に団塊の世代が75歳以上となることを見越しています。
厚生労働省の方針の一つである『自立支援・重症化防止に資する質の高い介護サービスの実現』を達成するために、事業所はアウトカム評価の視点での運営が望まれています。

「ADL維持等加算」を例にとり、ADL評価と算定要件から課題をみてきました。
課題改善に向けて議論されているため今後は、算定要件は緩和され、認知機能評価も含めた加算が新設されていくことが予想されます。

利用者の状態改善を意識することは、利用者の心身に寄り添った介護サービスへと繋がっています。
新設されていくアウトカム評価の加算を取ることのできる事業所は、介護サービスの質が高いと言えそうです。

介護の方向性を考えるうえで、高齢者の求められる状態を考える機会として本記事を是非ご活用下さい。

参考URLリスト
1. 厚生労働省.第185回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料,
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13472.html(参照 2020-09-30)
2. 厚生労働省.「令和3年度介護報酬改定に向けて(自立支援・重症化防止の推進) 」.第185回社会保障審議会介護給付費分科会,2020年,
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13472.html,(参照 2020-09-30)
3. 厚生労働省.介護報酬,
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/housyu/index.html,(参照 2020-09-30)
4. 厚生労働省.「平成30年度介護報酬改定の主な事項」,2018年,
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000196991.pdf,(参照 2020-09-30)
5. 厚生労働省.第180回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料,
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12499.html ,(参照 2020-09-30)
6. 厚生労働省. 「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護」.第180回社会保障審議会介護給付費分科会,2020年,
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000650016.pdf,(参照 2020-09-30)

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