在宅介護とバリアフリー住宅
記事公開日:2015/05/19、 最終更新日:2019/02/07
目次
在宅介護とバリアフリー住宅
在宅介護をしていく上で住宅のバリアフリー化は必須条件です。
バリアフリーとは、もともとは建築用語で「バリア(障壁)」「フリー(除く)」を意味しています。道路や建物の入り口の段差など物理的な障壁を取り除くという意味合いから、高齢者や障害者だけでなく全ての人にとって日常生活の中で存在する社会的、制度的、心理的なバリアを除去する事まで広い意味で使われるようになっています。
バリアフリーとハートビル法
ハートビル法とは高齢者や身体障害者等の自立と積極的な社会参加を促すために不特定かつ多くの人が利用する建築物(特定建築物といいます)において、円滑に利用できるように制定された法律です。
劇場や銀行、ホテル、コンビニエンスストアなど誰もが日常的に利用する建築物、老人ホームや身体障害者福祉ホームなど、高齢者や身体の不自由な方が主に利用する建築物、事務所や学校、マンションなど多くの方々が利用する建築物もハートビル法の対象となっています。
交通バリアフリー法
高齢者や障害者が気軽に移動できるよう、階段や段差を解消することをめざした法律です。駅や空港、バスといった公共交通機関を対象にしており、駅の出入り口からホームまでの段差の解消や障害者対応トイレの設置、リフト付きバスやスロープ付きのバスの運行など様々なところで取り組みが行われています。
身近にあるバリアフリー
意識しなければ気付かないけれど、私たちの身の回りでは様々なところでバリアフリーを見つけることができます。
例えば盲導犬や介助犬を街中で見かけることもあると思います。盲導犬は目の不自由な人が安全に生活できるようにサポートしてくれます。目の不自由な人にとって盲導犬は「目が見えない」という障壁を取り除いてくれる大事なパートナーです。
また、建物の入り口や郵便ポストやエレベーターの点字ブロック、駅の改札や信号機でも音声案内をよく耳にすることと思います。
これらも目の不自由な方にとって大切なバリアフリーになっています。
理想とされるバリアフリーは、身体に様々な障害のある人や高齢者が一人で、自由に、安全に行きたい所へ行けるようになることでしょう。
わたしたちは必ず年をとります。
今は問題なく行える動作も、数年後、数十年後には大変になるかもしれません。
人によって障害は様々あり、その内容によって適切な対応方法は異なります。
目の前の困っている方に声をかける、手助けをするといった「心のバリアフリー」も全ての人が安全で快適に過ごしていくための大切な要因の一つです。
バリアフリー住宅に関する基準
高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律が2006年に制定されました。高齢者や障害者の住居だけでなく、駅や空港などの公共交通機関、役所や学校などの公共施設のバリアフリー化も規定するもので、それまでは個々にあった法律が統合され、通称バリアフリー新法として施行されました。なかでもバリアフリー住宅は、5段階の性能等級が定められています。
バリアフリー住宅とは
バリアフリー住宅とは、むやみに床をフラットにすればいいものではなく、日常生活空間において5段階ある性能等級のいずれかを満たしている住宅を指します。等級1が軽度の歩行障害に対応する住宅で、等級が上がるごとにバリアフリー対策が増加していきます。
日常生活空間とは
食事や睡眠や排せつなど、高齢者や障害者が日常生活のなかで必ず行う行為を基本生活行為といいます。住宅内において、この基本生活行為が行われる場所のことを日常生活空間と定めています。具体的には、寝室(居室)、食堂、トイレ、浴室、玄関などで、これらを結ぶ廊下がある場合は廊下も含まれます。
バリアフリー住宅の基準のポイント
・部屋の配置
基本的に、高齢者の居室があるフロアに、トイレや食堂、風呂場を配置します。どうしても別のフロアになる場合は、階段に手すりを付けるかエレベーターを配置することになります。この際、トイレだけは居室と同じフロアにする必要があります。
・床の段差
基本的に、床には段差を作らないようにします。厳密には、高さ5mm以内の段差に抑える必要があります。和室で畳敷きにするとどうしても高くなってしまうので、和室は畳の厚み分、床を下げて施工します。
・階段
階段は、勾配と一段の高さの上限が定められています。また、手すりなどの安全措置を講じる必要があります。
・その他の通路
等級に応じて基準が厳しくなります。手すりを付ける高さや位置も指定範囲があります。また車椅子を使用する場合は、廊下の広さも基準があります。部屋の出入り口や玄関も同様に、幅や広さの基準が定められています。
・居室、トイレ
一番長く、または多く利用する居室とトイレにも基準があります。居室は介護ベッドを入れることを考慮して、最低でも6帖以上と定められています。トイレは、便器から壁までのスペースが定められています。
賃貸のバリアフリー住宅
近年では、賃貸住宅でもバリアフリー性能の基準を満たしている住宅が建築されています。バリアフリーとは、高齢者や障害者が生活するうえでの障壁(バリア)が無いという意味です。
具体的には、部屋と廊下やトイレなどの段差をなくしたり、車椅子でも十分通れるように廊下を広くしたり、階段に手すりを設けたりしています。
介護が必要になったら賃貸住宅をバリアフリーに改修できる?
通常の生活から介護が必要になったとき、慌ててバリアフリーの住宅に引っ越しをするのは大変な作業です。そこで、賃貸住宅をバリアフリーに住宅改修することができます。ただし賃貸住宅は家主の物なので勝手に改修することはできません。
家主と交渉して了承が得られれば改修できます。しかし、賃貸住宅は退去するときに現状復帰が原則なので、取り付けた福祉用具類はすべて取り払う必要があります。
賃貸住宅の改修
賃貸住宅の場合、くぎやねじなどを使って福祉用具を設置することができません。しかし介護保険事業が広範囲に普及したことにより、賃貸住宅でも使用できる福祉用具がたくさん製品化されるようになりました。
くぎやねじを使わず、突っ張り棒やおもりを用いた構造になっており、取り付けや取り外しが簡単に行えるようになっています。
バリアフリーの賃貸住宅を契約する
現在居住している住宅が、どうしても改修に適さない物件の場合は、バリアフリー住宅に引っ越す必要が出てきます。賃貸住宅むけの福祉用具と同様に、バリアフリー住宅の供給も年々増加しています。バリアフリー住宅は、あらかじめ取り付けてある設備と、必要になったときに後から取り付けられる設備があります。
たとえばトイレや浴室の手すりは、入居者の必要性に応じて後付けできるようになっています。賃貸マンションであっても、車椅子でも乗降可能な広さのエレベーターがあったり、階段の幅を広く取ってあったりと、介護が必要な状態になっても楽に生活できるような工夫がなされています。
理想的なバリアフリーのある老人ホーム
高齢者は日常生活に支障をきたす機会が多くなってしまうものです。生活空間の中で障害物を極力減らしていくバリアフリー化を検討することもあります。明るい部屋で残り少ない生活を快適に送れるように、じっくりとバリアフリー化について検討しなければなりません。また老人ホームもバリアフリー化しているので、どうしてもリフォームの予算が厳しい時は引っ越しを検討することもあるでしょう。
①バリアフリー化している老人ホームを選ぶ
全国各地に色々な老人ホームがありますが、その形態は非常に様々です。高齢者向けの入居施設となっている老人ホームですが、バリアフリー化が進んでいるところもあれば、スタッフが丁寧に介護していながらバリアフリー化されていない場所もあります。
さらに認知症などを患っている場合、入居できる老人ホームも変わっていきますので注意しなければなりません。例えば特別養護老人ホームでは重度の介護認定を受けている状態の人が入居することができます。他にも介護老人保健施設やグループホームも同様に介護認定されている人が入居可能となっています。そしてサービス付きの高齢者向け住宅ではバリアフリーの設備だけでなく安否確認や生活に関する相談を受け付けるサービスを提供しています。バリアフリー化されているかは実際にチェックして、検討していくようにしましょう。
②バリアフリーから選ぶだけでは失敗する
バリアフリー化されている老人ホームは、生活を行う上では落ち着くこともあるでしょう。しかし選択する際には注意しなければならないポイントが色々とあります。まず入居費用や支払う方法ですが、年金などの収入と比較しながら決めていきましょう。月払いする形式にするなど、色々な支払い方式がありますので、どれが利用しやすいかも判断しておきましょう。
次に施設の個性や特徴です。バリアフリー化もこの中に入りますが、運営方針や経営状況そして介護サービスを受ける際の体制が整っているかも重要なポイントです。加えて入居タイミングが合っているかを確認しておきましょう。
浴室のバリアフリー
お風呂場は転んだり滑ったりと高齢者にとっては危険が多い場所です。バリアフリー化すれば高齢者だけではなく小さな子どもも安心してお風呂に入れるようになります。
動作を補助する手すりを設置したり、出入り口の段差を解消することで高齢者でもお風呂に入りやすくなります。
浴室の床を滑りにくいタイルにしたり、浴槽はまたぎやすい40センチ以下の高さにするのもおすすめです。手すりの設置といった手軽なリフォームであれば賃貸でも可能な場合があります。
トイレ
トイレにも体を支えるための手すりが必要です。
手すりがないとトイレットペーパーのホルダーを支えにして立ち上がろうとしてしまいます。トイレットペーパーに力を加えると外れてしまうこともあり、大変危険です。
また、トイレが和式であれば座ったり立ったりの動作が楽な洋式トイレに交換をおすすめします。
廊下
車いすで生活する人が家族にいるのであれば廊下の幅は78センチ以上とられる必要があります。また、車いすの重さを考え凹みや傷がつきにくい強度のある床材を使う必要があります。
自分で立って歩ける高齢者の場合には手すりを設置します。
居室
高齢者が寝起きする居室は敷居の段差をなくしましょう。寝室はトイレに近い場所にしておくといいでしょう。
扉・照明
ドアは開閉しやすい引き戸がおすすめです。つかみやすいレバーハンドルをつけておくとなおいいです。
照明は点灯や消灯しやすいワイドスイッチを設置しましょう。
エレベーター?平屋?
車いすで家の中を自由に動き回れるように、エレベーターを設置するご家庭も増えています。
しかし、エレベーターの設置はそれなりの費用や維持費がかかります。
バリアフリーを考えた新居を建てるのであれば平屋がおすすめです。エレベーターの予算を別の所に使うこともできます。
玄関をバリアフリー住宅にするためには
特に昔から立てられている自宅は玄関が道路よりも高く作られており、家によっては階段で5段、6段とあり、介護が必要になればその階段が原因で自宅での生活が継続できなくなるなども問題があります。
玄関をバリアフリー住宅のようにするためには、どのようにしていけばよいのでしょうか。
①玄関の階段を解消する方法
玄関の階段を解消する方法としては、スロープなどが考えられますがスロープは段差が少ない階段に対して有効であり、階段が多い場合はスロープを付けることができません。
また、階段を壊して改装を行う方法がありますが、こちらも限界がありますし、工事費も非常に高くなりますのであまりお勧めはできません。
最近では昇降機などが気軽につけれるようになりましたので、昇降機を利用する人も多いです。
②玄関ドアを開き戸から引き戸に変更する
玄関ドアは開き戸になっている場合、車いすを使用している方にとっては非常に使いにくい玄関になります。そのため、玄関ドアを車いすの方でも使用しやすいように引き戸に変更する工事が多いです。
しかし、場所の関係で引き戸にすることも難しい場合もありますので、玄関を別にする、出入りを別にするといったことも含めて考えていくことが大切です。
③玄関内での段差を解消
自宅から玄関に降りる際に段差がある場合がありますので、これも解消をしたほうが動作が簡単になります。
多くの場合は段差の高さを少なくする箱のようなものを置いて解消します。また、手すりなどを付けると安全に下りやすくなりますね。
最近では段差解消の箱と手すりがセットになっているものが、介護保険のレンタル商品でありますので、一度お試しで借りてみるのもよいかと思います。
また、玄関マットなどでも躓いたり、転倒の原因になる可能性がありますので玄関にはできるだけ物をおかないことをお勧めします。
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玄関は人によっては毎日出入りするところですので、できるだけ出入りのしやすいバリアフリーな玄関を目指すようにしましょう。
リフォームの費用
バリアフリー化のリフォーム費用は100~200万円ほどかけているご家庭が多いようです。
そのくらいかければ浴室はひと通りバリアフリー化できますし、廊下やトイレに手すりを設置したり、段差をなくすリフォームまで可能です。
バリアフリー住宅にリフォームする際の費用の支援について
高齢者になり、介護が必要であったり、現在の住宅では体に負担がかかるといった状況になるとリフォームを考える人も多いかと思います。
また、バリアフリーの住宅にリフォームするにはかなりの費用がかかることが予想されますが、これはある程度国や自治体からの支援を受けることができます。リフォームを行うには、どれぐらいの支援が受けるのでしょうか。
①介護保険による住宅改修費
介護保険では住宅改修というサービスがあり、住宅改修費用を一定額介護保険から出してくれます。条件としては、要支援1から要介護5を受けている方であり、きちんと改修するための理由がある方です。
使えるのは1回限りで20万円まで負担してくれますが、1割は自己負担があります。
また、2回受けれる場合もあります。それは介護度が3段階以上悪化した場合です。
介護保険による住宅改修は比較的使われているものであり、手すりの取り付けや、トイレの改装、浴槽の改装などを行っています。
②自治体により支援費
これは自治体によっても違いますが、ほとんどの自治体ではリフォーム箇所によって支援費の上限が設定されています。介護保険の住宅改修で20万円をオーバーする際によく使われるようです。
また、所得によっても支援費は変わるところがほとんどです、所得が低い場合は50万円以上の支援費が受けれますので、介護保険と合わせると70万円近くの額が支援費として支給されます。
所得が高い場合は支援費は所得の低い人に比べると3分の1程度になりますので注意しましょう。
③リフォーム以外の方法と組み合わせる
支援費があるからといってもある程度の金額はかかってしまいます。そのため、リフォームを躊躇する人も多いです。その場合は、福祉用具のレンタルと組み合わせることがあります。
レンタル商品で賄えるところはレンタル商品で行い、リフォームしなければいけないところだけリフォームするといった感じです。
費用的に難しいと思われるのでしたら最初からバリアフリー対応されている高齢者住宅への入居を考えてみてはいかがでしょう。
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