認知症の薬を飲む際の注意点
記事公開日:2015/07/28、 最終更新日:2019/04/16
目次
認知症の薬の服用の仕方
認知症の方は薬を飲むのを忘れてしまうので、周りの人がしっかり服薬の管理をする必要があります。
施設で服薬の管理を行っていることがありますが、服用の仕方を誤って病気が悪化したり、症状が改善しなかったりなどと問題になることもあります。
もちろん、多くの施設では服薬管理をしっかり行っています。
しかし介護施設や医療機関などで服薬のミスが発覚してニュースになることもしばしばあります。
なぜ服用を誤るのが危険なのか、どういったことに注意すべきなのかについて紹介します。
副作用が出る
認知症の薬の中には副作用のあるものがあります。
アルツハイマー認知症の治療薬として代表的なアリセプトという薬があります。こちらの薬の用量は一日一回3㎎からスタートして1~2週間で5㎎。高度の患者さんに対しては5㎎を4週間実施した後10㎎に増量するというのが一般的です。薬の効果が現れるまでに12週間ほどかかると言われますのでそれまで正しく服用していく必要があります。
このアリセプトの副作用として胃腸障害があります。食欲が減退し、嘔吐や下痢、悪心といった胃腸障害が現れます。柔らかい便なら服用を継続できますが、水様便であれば服薬を中止しなくてはなりません。また、食欲が減退したり、嘔吐があった場合にも服薬をストップする必要があります。
不穏の症状も服用の初期にはみられることがあります。
うろうろ歩きまわったり、会話が多くなるのもアリセプトの副作用です。脳の神経細胞が刺激されてこのような状態になります。このような副作用の出現を見極めつつ、薬の増量をしていく必要があります。
このような副作用がありますので、薬の管理が非常に認知症の治療に重要だということがわかります。誤った服薬をしていると体調が却って悪くなってしまい、介護の負担も大きくなります。
服薬のことがわからなくなってしまった場合には必ずかかりつけのお医者さんに相談するようにしましょう。また、薬を飲んでいて様子がおかしいなと思ったことがあった場合にも相談するのがいいでしょう。
認知症治療薬メマリーの副作用
厚生労働省が、新たな副作用が確認できた医薬品の添付文書を改定するように通知しました。
その中にはアルツハイマー認知症の治療薬メマリーも含まれていました。
メマリーには過去3年において因果関係が否定出来ない横紋筋融解症が5例確認されています。そういうわけで重大な副作用に横紋筋融解症を追記する必要があるとのことです。
メマリーには他にも副作用が確認されています。
メマリーは正確にはメマンチン塩酸塩という名前の抗認知症薬です。認知機能障害に対して進行を抑制する働きがあります。
めまいや便秘、胃腸症状といった副作用が出ることがあります。ふらつきによる転倒にも十分注意する必要があります。
ドネベジル塩酸塩の副作用
ドネベジル塩酸塩は商品名がアリセプトという認知症の治療薬です。日本で最初に発売された抗認知症薬です。現在ではジェネリックも発売されているので安く手に入れることができるようになりました。
アリセプトの副作用としては落ち着きがなくなることです。
これまではあまり活発じゃなかった患者さんでもアリセプトの服用を始めてからうろうろと歩き回ったり、会話が多くなったり落ち着きがなくなるということがよくあります。
このことを好意的に受け取る家族もいれば逆に悪化したと捉える家族もいます。
例えば、これまではおとなしくて会話も少なかった人がアリセプトによって活発になったら家族は薬が効いて良くなったと捉えます。
その一方で落ち着きがなくなり怒りっぽくなった、目が離せなくなったと捉える家族にとっては薬のせいで悪くなったと感じられるのです。
このように服薬すると活発になるのはアリセプトによりアセチルコリンが働いて神経細胞が活性化しているためです。これを副作用と捉える人もいるかもしれませんが、むしろ薬の効果であるとも捉えることができるのです。
もし介護がこれまで以上に大変になるのでしたら薬の服用をストップしたほうがいいでしょう。しかし、薬を飲み続けて二週間後には落ち着きを取り戻すことも多いです。
向精神薬にも注意
認知症の症状として物盗られ妄想や幻覚、暴言や奇声、異常行動などがみられることがあります。
こうした症状を抑えるために向精神薬を服用することもあります。異常な行動や落ち着きの無さを抑えることができ、介護者の負担を和らげることにつながります。ただし、向精神薬には深刻な副作用が現れることがあります。
様々なタイプの向精神薬がありますが、その多くに現れるのが眠気です。身体のだるさやふらつきも伴います。活動が鈍くなり、筋肉の脱力感も伴って身体がどんどん弱っていきます。
また、尿もなかなか出せなかったり便秘になってしまうことも多々あります。
長年向精神薬を飲んでいると次第に手が震えたり、筋肉がこわばったり、歩き方もパーキンソン病の患者さんのようになってしまいます。
また、悪い夢や怖い夢を見ることも増えます。
胃腸障害や血液の病気、心臓の病気につながることもあります。
このような副作用についてよく理解した上で医師からのアドバイスを受けるようにしてみましょう。かかりつけの医師だけではなく、薬剤師からも意見をもらうのもいいかもしれません。
向精神薬の注意
認知症の患者さんに対して向精神薬が処方されることもあります。認知症の高齢者は不安が強くなったりうつ症状が現れることがあります。そうした症状を抑えるために向精神薬が医療現場で処方されることがあるのです。
しかし、この向精神薬によって症状が悪化することもあります。
例えば、向精神薬を飲み始めてから介護者に対して暴力を振るったり、大声を出したりするようになったというケースも報告されています。落ち着きがなくなり、夜中遅くまで眠れなくなってしまうこともあります。特に向精神薬の量が多く、継続的に飲み続けるとこのように症状が悪化します。
こうした場合には医師に相談して服薬をストップしたり、処方を見直しする必要があります。
薬を変更したことで意識が鮮明になってはっきりと喋れるように症状が改善したというケースが報告されています。特に副作用の強い抗不安薬については特に使用を控えることをおすすめします。
認知症の方が抗精神病薬を使用した場合に注意したいこと
認知症になりますと、様々な症状が現れれます。記憶障害は代表的なものですが、記憶障害の他に、怒りやすい性格になったり、場合によっては暴力を振るうこともあります。反対に無気力になってしまったりして、何もしない、動かないこともあります。
そういった症状が出てくると抗精神病薬を服用することが多いのですが、抗精神病薬を服用している方に対しては注意をしなければなりません。
薬が効きすぎることがある
抗精神病薬は薬の種類によっては強いもの、弱いものがあります。最初は弱いものから始めることが多いですが、今まで抗精神病薬を服用していなかった方に対しては弱いものを選択した場合でも、効きすぎることがあります。
例えば暴力行為がある方に対して服用をすると、落ち着きすぎる、無気力になる、場合によっては足がふらついて転倒をする恐れがあるなどの症状が出てくる場合がありますので、介護者としては変化に注意する必要があります。
また、食事が進まない、失禁が増えるなどのこともありますので、十分注意しておきましょう。
主治医としっかり話をしましょう
抗精神病薬を服用する際は、受診をする必要がありますが、受診をした際にはできるだけ詳細に症状を伝えるようにしましょう。
口頭で伝えることが難しい場合は、日々の問題行動を紙に書き起こして主治医の方に理解してもらうことが大切です。
また、受診は必ず付き添いをして日々の様子を詳細に伝えるようにしましょう。
様子観察が大切
服薬しはじめは、薬に慣れていない状態ですので薬が効きすぎることがありますが、徐々に慣れてくることが一般的であり、問題行動も落ち着く傾向にあります。
そのため、薬が効きすぎると感じてもすぐに服用をやめるのではなく、処方された分は守って服用するようにしましょう。医師の判断無しに飲むことは禁止ですが、辞めることも良くない結果に繋がりやすくなりますので、注意しましょう。
認知症の周辺症状には漢方薬が効果的
認知症の症状には中核症状と周辺症状があります。周辺症状は妄想や徘徊などの問題行動が中心です。介護をする人に特に負担を与える周辺症状を緩和するための薬が医師から処方されることは多いです。
しかし、抗精神病薬は人間としての活動すべてを鈍らせる作用があるので使用を避けたいと考えている人も多いです。
漢方は身体にやさしく、人間が本来持つ機能を取り戻す効果があります。認知症の症状に効果的な漢方もありますので医師に相談しながら認知症の治療に取り入れてみることをおすすめします。
認知症の治療に実際使われている漢方に「抑肝散」があります。これは抗精神病薬と同じように興奮状態を鎮静する働きのある薬です。苛々や不安を改善することができるので介護する人にとっても嬉しい漢方薬です。副作用がほとんどないため、長期間服用しつづけることができます。
その他、「釣藤散」や「抑肝散加陳皮半夏」「黃連解毒湯」「当帰芍薬散」などといった漢方薬が使われています。使用する漢方はその人の体調や症状に合わせて選びます。もし服用してみて効果がないようであれば変更して別の漢方を試してみるのもいいでしょう。お医者さんと相談しながら一番身体にあった漢方を選ぶことをおすすめします。
漢方の基本知識
漢方は西洋医学の薬とは違って特定の症状に特に効く、といったものではありません。一定の症状に作用する成分を配合してもらったものを服用することで症状が緩和したり体質が改善するといったことがみられます。
東洋医学では体質を9タイプに分類し、それに合わせて漢方を処方するという考え方です。
認知症に照らし合わせてタイプ別に分類してみると
「風」
めまいやふらつき、うわごと、恐怖観念のことを「風」といいます。中医学では「風によって生じるふるえや揺れはみな肝に属する」と考えられており、めまいと肝は深く関係していると言われています。このように風が身体の中で吹いているのをおさえてくれるのは忍冬や菖蒲です。
「腎虚」
認知症の症状であるもの忘れや名前が出てこない、やろうとしていたことを忘れてしまうといった老化によって起こる症状です。腎虚の症状に効果的な漢方はアンチエイジングにも効果的です。タコや高麗人蔘、甘草などの漢方が代表的です。その他、くるみや黒ゴマ、黒豆、黒キクラゲやひじきなどの黒い食材が腎を強くすると言われています。
「瘀血」
瘀血は血の巡りが悪いという意味です。冷えやのぼせといった症状です。紅花やウコン、三七人参といった漢方が効果的です。
「痰湿」
イライラやびっくりしやすかったり、興奮する、味がしないなどの症状です。
体内の水分のめぐりを良くする働きのある菖蒲やウコンが効果的だそうです。
認知症のほか、更年期障害など年齢特有の症状でお悩みの方も症状に合わせて漢方を処方してみるのがいいかもしれませんね。
薬を飲んだことを忘れてしまう認知症の方におすすめ
プラセボ製薬株式会社から介護用の偽薬「プラセプラス」が発売されました。
これはどういうものかというと認知症の方や高齢者が薬を飲んだことを忘れて飲み過ぎてしまうのを防ぐ薬です。
プラセプラスは薬ではなく栄養補助食品ですが医薬品らしいパッケージとなっています。還元麦芽糖を主成分とする白色のタブレットです。
これまでも瓶入りタイプの製品が発売されていましたが、介護の現場ではPTPシート個包装タイプのほうが使いやすいとのことでこちらのPTP包装品がこのたび発売されることとなりました。
口にいれるとほんのり甘く、服薬しやすいのが特徴です。
薬を正しく服用する大切さ
薬の効果を最大限に引き出すためには正しいタイミング、正しい用量で服薬することが大切です。
ただし、病気にかかっている人や身体が弱っている人は薬を飲むことで安心感を得ようとします。認知症の方も薬を飲んだことを忘れてさっき飲んだばかりなのにもう一度飲みたがるということがあります。
そういった方は介護者が強く抑止しても目を盗んで薬を飲もうとさえします。
こういった薬の飲み過ぎは介護の現場や家庭でも悩みの種となっていました。
そこで、このような偽薬が役立つのです。
プラセプラスはアマゾンで購入することができます。PTPシートの裏に「栄養補助食品」と記載されているので、本物の薬と間違えてしまうこともありません。
プラセボ製薬とは
「プラセプラス」を製造・販売しているのはプラセボ製薬という会社です。製薬とつくからには医薬品を製造している会社と思われるかもしれませんが、実は食品しか扱っていない会社なのです。医薬品の製造販売の許可を取得していません。
プラセボ製薬が扱っている商品はすべてでんぷんなどといった食品成分をつかって薬のようにしたものです。それを偽薬として販売しています。
どうして偽薬を販売するのかというと、今回紹介した「プラセプラス」のように薬の飲み過ぎを防ぐためのものであったり、プラシーボ効果を期待するためのものとしての狙いがあります。
プラシーボ効果とは思い込みが身体に作用する効果のことです。プラセボ製薬ではそのような思い込みの効果を狙って偽薬を製造販売しています。
今回紹介した「プラセプラス」は正確にはプラシーボ効果を狙った製品ではありません。ただし、認知症やうつ症状などがある方に対して不安感を取り除くのにも効果的といえるかもしれません。
認知症治療薬イクセロンパッチ
アルツハイマー型認知症治療薬イクセロンパッチはこれまでの飲む薬ではなく、胸や背中などに貼るパッチの薬になります。1日に1回の貼りかえですみますので飲み忘れなどの心配はいりません。かゆみや発赤、吐気などの何らかの副作用が出た場合は、パッチをはがすことでそれ以上の薬の吸収を防ぐことができますが、医師に必ず伝えるようにしましょう。
できるだけ早く治療を始めたほうが、症状の進行を遅らせる事ができるので、家族や自分自身に何かおかしいと感じたら、早めに受診をしましょう。
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