介護放棄とは?介護放棄すると罪に問われますか?
記事公開日:2015/06/02、 最終更新日:2019/11/08
近年、介護が必要な高齢者の介護を家族が放棄してしまう介護放棄が大きな社会問題となっています。沖縄の新聞社が県内65歳以上の高齢者を介護している家族におこなったアンケートでは、全体の4割以上の人が介護のつらさから介護放棄を考えたことがあると回答しています。驚きなのは全体の1割以上の人が介護中に暴力をふるった経験があるという事実です。
目次
介護放棄とは
介護放棄は介護業界ではネグレクトと言われることが多いです。ネグレクトと言う言葉には「放置する」「無視する」という意味があり、子どもへの育児放棄のニュースで聞いたという方も多いでしょう。子どもに対するネグレクトを高齢者に置き換えたのが介護放棄であり、介護が必要な状態であるにも関わらず高齢者を放置することを介護放棄と言います。
具体的には食事を与えない、オムツ交換などの排泄ケアをおこなわない、入浴させないなどといった行為が介護放棄にあたります。また、病気があり医療機関への受診が必要にも関わらず、受診する機会を与えないことも介護放棄にあたります。
介護放棄はそのままにしておくと徐々にエスカレートしていく傾向にあり、暴力に発展したり、介護が必要な高齢者を置いて家族が家を出てしまうケースもあります。残念なことですが、2014年の調査では介護放棄により高齢者が死に至ったケースは20件~30件あると報告されています。年々介護が必要な高齢者が増加している日本において介護放棄の問題は早急に議論し対策しなければならない問題です。
介護放棄となる原因
介護放棄となる原因には次のようなものがあります。
①要介護状態の悪化
要介護者の心身機能は介護期間が長くなるに連れて悪化していきます。要介護者が歩くことができ、見守りや軽い手助けで日常生活を送ることが出来る場合には介護者にはそれほど大きな負担はかかりません。しかし、身体機能や認知機能が低下し身の回りのことが自分で出来なくなると介護者の負担は非常に大きくなります。
下半身の筋力が低下し立つ事が難しくなると体を起こしたり車椅子へ移乗させるために介護者には身体的な負担がかかります。毎日のことのため回数も多く介護者に腰痛などの症状が出ることも少なくありません。また、要介護者が認知症を発症すると危険な行為がないか常に見守りが必要な状況になり、介護者は気が休まる時間がなく精神的に追い込まれます。
仕事をしている場合には仕事で疲れた体で介護しなければなりません。介護が理由で仕事を辞めることになれば金銭的にも苦しくなります。苦しい状況を1人で抱え込んでしまうと正常な判断が難しくなり介護放棄につながってしまいます。
②苦しい財政事情
日本では所得格差が大きいことが社会問題となっています。所得が多い家庭と所得が少ない家庭では圧倒的に所得が少ない家庭のほうが介護放棄の事案は多いです。
介護保険サービスには要介護度に応じた利用限度額があります。また、所得に応じて1割~2割の金額を自己負担しなければなりません。1割と聞くと少ないと感じるかも知れませんが、食費や宿泊費、オムツ代など別途請求される費用もあわせると低所得者にとっては大きな負担です。
介護者が自分の生活で精一杯の場合には親のことはかまっていられないという開き直った感情になってしまう場合もありますし、遠方に住む場合には親を訪ねる費用を捻出できない場合があります。
③家族にそもそも介護する気がない
介護の現場にたずさわっていると感じることですが、親が要介護状態になっても他人事のように介護業者に丸投げするケースが多くあります。親との関係が悪く介護を放棄するケースだけでなく、親との関係が悪くないにもかかわらず親の介護はしたくないと言う人が結構な割合でいます。
親の介護に無関心な方は介護保険制度に関しても関心が薄い傾向があり、要介護度に応じて利用できる金額に上限があることや自己負担が必要なことなどを理解していない場合が多いです。親の介護を自分自身の問題として捉えていない人が多いことは残念に感じます。
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介護放棄は罪に問われるのか
高齢な親に介護がなければ生きていけないことを知りながらこれを放置した場合には罪に問われる可能性があります。刑法218条に「保護責任者遺棄罪」という罪があり、「乳幼児や高齢者、病人、障がい者などを保護する責任のある人が、こうした義務を放棄した場合には3月以上5年未満の懲役が科せられる」と定められています。
過去には寝たきりの母親に対して食事や排泄の介護をおこなわず、自宅で亡くなった事件に対して同居していた娘が保護責任者遺棄罪の罪に問われた事件がありました。この事件で娘は懲役6年の実刑判決を受けています。実刑となった背景には親への介護が提供できる状況であったにも関わらず介護を放棄したという被告の姿勢が厳しい判決につながりました。いずれにしても特別な事情なしに介護放棄した場合には罪に問われる可能性があると言えるでしょう。
保護責任者遺棄以外にも介護放棄により保護責任者へ賠償義務が発生するケースがあります。ニュースで大きく報道された問題に「認知症鉄道事故裁判」があります。認知症高齢者が線路に入り走行してきた電車にはねられたことに対し、JR東海が親族に対して振替輸送などの費用を請求した訴訟で最高裁まで争われることとなりました。最終的には逆転裁判で親族の責任は問われませんでしたが、介護放棄したことにより損害賠償を請求されるケースは起こりえます。
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介護放棄の予防方法
①介護について相談すること、介護サービスについてただしい知識を持つこと
介護放棄に陥りやすい状況として介護者が1人で問題を抱え込んでしまう状況があります。介護に疲弊し追い込まれた状況になると冷静な判断が難しくなり介護放棄につながってしまいます。こうなる前に誰かに相談することが重要です。
相談相手としては「家族や友人などの身近な人」と「介護や福祉の専門家」の2種類があります。家族や友人などの身近な人に話すことは、精神的なストレスを緩和してくれる効果を期待できますし、介護を経験している方であれば具体的なアドバイスがもらえる場合があります。介護の問題についてオープンに話せる人間関係をつくっておきたいですね。
身近に相談できる人がいるいないに関わらず専門家への相談はおこなった方が良いでしょう。自治体が管理する地域包括支援センターにはケアマネージャーや社会福祉士、看護師といった介護・福祉の専門家がいます。介護保険や社会資源の利用など具体的なアドバイスやサポートをしてくれることでしょう。
②介護保険サービスを利用すること
介護放棄を予防する一番の方法は介護保険サービスを利用することです。核家族化が進んだ現在、家族だけで高齢者の介護をおこなうことは困難な状況になっています。介護保険サービスを利用することで介護者の介護負担を大幅に軽減することが出来ます。
まずはケアマネに相談を
ケアマネは利用者に適切な介護保険サービスを提案したり介護業者との橋渡しをしてくれる介護保険の専門家です。ケアマネは地域包括支援センターや居宅介護支援事業所、老人保健施設や特別養護老人ホームといった介護施設に勤務しています。介護保険制度によりケアマネの利用料は全額負担されます。自己負担はありませんので費用を気にせずまず相談してみましょう。
利用者のニーズに合わせて利用できる豊富なサービス
介護保険サービスは大きく分けて入所サービス、通所サービス、訪問サービスがあります。
1.入所サービス
老人保健施設や特別養護老人ホームなど。要介護者が入所して介護やリハビリが受けられるサービスです。入所に条件はあるものの入所中は家族が介護を提供する必要はありません。
入所サービスには数日から1週間程度を目安に老人保健施設や特別養護老人ホームに入所できるショートステイというサービスがあります。定期的に利用することで介護者の介護負担を軽減できます。
2.通所サービス
デイサービスやデイケアがあります。日中を施設で過ごすサービスで利用中は家族は介護から開放され自分の時間を過ごしたり、買い物や掃除、農作業など他の用事を済ませることが出来ます。
3.訪問サービス
訪問介護や訪問看護、訪問診療、訪問リハビリテーションなどのサービスがあります。訪問介護では家事援助と身体介護の2種類が利用でき、家族にとって負担が大きい排泄の介護や入浴の介護もヘルパーにまかせることが出来ます。
③介護サービスや施設を利用することは普通のこと
介護者の中には親の介護は子どもがするものだ、介護サービスや施設を利用することは恥ずかしいことだといった間違った認識を持っている方がいます。少なくとも現在では介護サービスや施設を利用することは普通のことであり、介護放棄につながらないためにむしろ利用するべきものです。親の介護に負担を感じたら周囲や専門家に相談し、介護保健サービスを積極的に利用しましょう。
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