たん吸引とは
記事公開日:2015/12/09、 最終更新日:2019/11/08
寝たきりの高齢者や肺に疾患がある患者はたんが日常的にたまります。健康な方であれば自分で咳をして排出することが出来ますが、呼吸機能が低下した寝たきり高齢者や肺機能が低下した高齢者は自分でたんを排出することが出来ません。たまったたんを本人以外の介護者がおこなう行為が「たん吸引」です。近年は高齢者が増加し医療現場や介護現場ではスタッフが不足しています。また、在宅生活をしている場合でも核家族化が進んだことでたん吸引をする介護者がいないことが大きな社会問題となっています。
たん吸引の意義
たんがたまると気管内の空気の通り道がせまくなり呼吸がしにくくなります。健康な方であれば咳をして自分で排出できますが、寝たきりなど極度に体力が低下した高齢者の場合は自分でたんを出すことが出来ません。たんをそのままにしておくと呼吸が苦しくなり、ひどい場合には体内の酸素濃度が低下する事態になってしまいます。また、たんには多くの細菌が含まれており肺炎の原因となります。たん吸引によって気管を清潔に保つことで肺炎を予防することができます。
たん吸引は医療行為?介護スタッフには可能?
近年、難病であるALS患者の介護においてたんの気管内吸引が医療行為に含まれるのかどうかで議論になったことがありました。なぜ議論になるのかというと医療行為は医師や看護師といった医療従事者でなければおこなってはならないという決まりがあるからです。しかし、医療・介護の現場では人材が不足しており、医療スタッフだけでは患者のたん吸引をまかなうことが難しくなってきています。
議論の結果としてたん吸引は医療行為ではあるものの、一定の条件の下で介護スタッフもおこなえるようにするべきという結果になりました。2011年には社会福祉士及び介護福祉士法が改正され、2014年4月から一定の研修を修了した介護スタッフはたん吸引をおこなえるようになりました。
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たん吸引は家族でも出来るの?
法律改正により一定の研修を修了した介護スタッフが吸引をおこなえるようになったことは理解いただけたと思います。では、家族はたん吸引をおこなうことは出来るのでしょうか。
基本的に家族であっても医療行為の実施は認められていません。しかし、たん吸引に関しては例外として認められています。その根拠となるのが「違法性阻却事由」です。聞きなれない言葉だと思いますが、「形式的には法令に反し違法を推定される行為であっても、特別な事由があるために違法ではないとすること」と言う意味になります。在宅で生活している高齢者のたん吸引を看護師がつきっきりでおこなうことは出来ません。そのため、緊急的な処置として一定の条件を満たす場合に家族へのたん吸引が認められています。
家族がたん吸引をおこなえる条件は以下の5つです。
①目的が患者の療養のためのものであるこ
②以下の条件の下で実施すること
・医師、看護師が患者の病状を把握し、療養環境を管理していること
・医師・看護師がたん吸引に関する家族への教育をおこなっていること
・適正なたん吸引がおこなわれているか医師、看護師が確認すること
・緊急時の連絡先、支援体制が確保されていること
③たん吸引という医療行為を家族がおこなうことのリスクと、おこなうことによる療養者本人の日常生活の質の向上を比較した場合、後者に利益があること。
④おこなわれるたん吸引の侵襲性が比較的低く、実施する人が家族と言う特別な存在であること
⑤たんの吸引が不定期で家族でなければ対応不可能であること
たん吸引を家族がおこなうことは可能ですが、あくまでも医療行為であり厳しい条件があることはおわかりいただけたと思います。
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たん吸引研修とは
平成24年4月の社会福祉及び介護福祉士法の改正により、介護スタッフがたん吸引研修を受けた場合には「認定特定行為業務従事者」としてこれまで許可されていなかったたん吸引がおこなえるようになりました。ただし、本人や家族の同意があることと、医師や看護師と連携し医療従事者の指示のもとに行うという条件つきです。
たん吸引研修には実施可能な行為と対象者によって第1号、第2号、第3号に分けられています。シチュエーションに合わせて必要なスキル・知識が学べる研修を受講されると良いでしょう。
研修内容は講義・演習中心の基本研修と、実際の現場でたん吸引の練習をおこなう実地研修から構成されています。いずれの場合にも基本研修終了後には試験があり、9割以上を正解しなければ実地研修には進めません。ただし、不特定多数に対してたん吸引がおこなえる第1号と第2号に対し、特定の対象者にしかたん吸引をおこなえない第3号では講義時間と演習時間が大幅に短縮されます。
たん吸引等研修を受講することで以下のようなメリットがあります。
①多様な現場に対応できる介護スタッフになれる
研修を受けることでたん吸引が可能になるほか、食事介助や誤嚥に関する知識や技術も学習することができ、現場に求められるスタッフになることができます。
②実践的な技術を身につけることができる
研修では実際の現場での実地研修がおこなわれるため、現場で使用する実際の機器を使用した実践的なたん吸引技術を身につけることが出来ます。
③介護職員としてのスキルアップできる
たんの吸引がおこなえることは介護士として自分を売り込むのに大きな武器となります。職場によっては研修を修了することで毎月の給料に手当てが付く場合もあります。
たん吸引の手順
口や鼻からおこなうたん吸引の手順を参考までに簡単に説明します。どのようなものか知ってもらうための簡略化した説明のため、実際におこなう際には必ず医療従事者からの指示や指導を受けるようにしてください。
用意するもの
①吸引器 ②連結管 ③吸引カテーテル ④紙コップ(吸引後のカテーテルの洗浄用。水道水を入れておく。) ⑤カテーテル保存用ボトル(浸漬用消毒液入り。洗浄後のカテーテルを保存する容器) ⑥アルコール綿
手順
①石鹸でしっかりと手を洗います。病院では手袋をしますが家庭では必要ありません。ウェルパスなどの手指消毒剤でもOKです。
②吸引器の連結管と吸引用カテーテルをつなげます。
③吸引圧を100~200mmHgに設定します。吸引をかけていない状態で口または鼻からカテーテルを適切な位置まで挿入します。
④吸引をかけたんを吸引します。1回の操作は10秒から15秒です。吸引後は呼吸音を確認してたんが除去されたことを確認してください。
⑤終了後はカテーテルの外側をカテーテルでふき、紙コップ内の水道水を吸引することで内側を洗浄します。
⑥カテーテルを連結管からはずしてカテーテル保存用ボトルに浸すようにして保管します。吸引器の連結管内も必ず水道水で洗浄します。
⑦石鹸で手を洗います。
鼻道の閉塞や鼻や口からの出血があるときは吸引は禁忌となるので必ず医師の指示をあおぐようにしてください。また、吸引器やカテーテルには複数の種類があり、操作法はそれぞれ異なります。上記の方法が当てはまらないケースもありますので注意するようにしてください。たん吸引が必要な方の多くは寝たきりで苦しくても自分で訴えることが出来ない場合が多いです。介護者はその点を理解し、愛護的なケアを提供してあげてください。
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