気管切開に関する基本知識
記事公開日:2015/06/17、 最終更新日:2019/11/08
しっかりとした呼吸を確保したり痰を吸引しやすくするために呼吸の通り道である気管に孔を開けることを気管切開といいます。口や鼻から吸った空気は気管を通って肺に送られます。呼吸がうまくいかないと充分な酸素が取り込めないほか、痰や分泌物を吐き出すことができず息が苦しい状態になります。このようなときにおこなわれるのが気管切開です。
気管切開の適応となる症状はたくさんあります。肺炎や肺血症、慢性閉塞性肺疾患など呼吸不全を起こす病気の際に呼吸確保のためにおこなわれるほか、意識障害や重症筋無力症、重度の寝たきりなど、自力で痰や唾液の排出が出来ない場合にも貯留物の吸引・排出を目的として気管切開がおこなわれます。
目次
気管切開のメリットとデメリット
気管切開のメリットには呼吸が安定的に確保できること、気管内の痰の吸引が容易であること、カニューレの挿入や固定が簡単であること、傷口が小さく患者への侵襲が小さいことなどがあります。食事の飲み込みに問題が無い場合には口から食事をすることができますし、場合によっては声を出すことも出来ます。
同じ目的でおこなわれることが多い口や鼻からチューブを挿管する気管内挿管は鼻や口に常時チューブがあるため不快感を感じやすく、管の挿入や交換に高い技術が必要で危険が伴うなどのこともあり、長期間にわたる呼吸管理では気管切開が選択される傾向にあります。
気管切開によるデメリットは外科手術によるリスクです。手術では気管を切開するため術後は創部の衛生をしっかりと管理しなければなりません。感染や気管内の出血、気胸、肺炎など合併症のリスクもあります。リスクを小さくするためには設備や医療従事者が揃っていることが必要で、ある程度の規模の医療機関であることが必要となります。
高齢者の場合は認知症が問題となる場合が多いです。認知症患者の場合は気管切開の必要性が理解できず不快感から自身で勝手に管を抜いてしまったり、患部を不衛生にしたりするリスクがあります。安定するまではスタッフや家族による注意深い観察が必要です。
手術方法と術後の流れ
手術ではまず寝ている状態の患者の首の下に枕を入れ、頸部ののど仏が触りやすいようにします。鎖骨とのど仏の間を皮膚に添って切開し、気管上にある筋肉を正中で分けると気管が露出します。気管の左右に2本の糸をかけ、糸を左右に引っ張りながら気管の真ん中を切開します。気管が開いた場所にカニューレを挿管し切開した皮膚を縫合すれば手術は完了です。
術後はカニューレが抜けることがないようにテープでしっかりと固定します。単体X線でカニューレの位置を確認し、術後すぐは急変や感染のリスクに注意し集中的な医療管理をおこないます。術後10日から14日後には初回カニューレの交換を行い、再度画像検査でカニューレの位置を確認します。全身状態が落ち着いたら気管内吸引の練習や、入浴・清拭の練習、家族へのケア方法の指導などをおこないます。
気管切開チューブがある生活
気管切開中は日常生活においていくつかの注意が必要です。注意すべきポイントを項目別に見ていきましょう。
①食事について
食事の飲み込みに問題がなければ食事制限は基本的にありません。食事と呼吸はどちらも口からおこなうものですが、食事は食道を通って胃に運ばれるため気管の切開部分に直接影響を与えることはありません。手術後は主治医と相談しながら徐々に食事をすすめていくと良いでしょう。痰が固いときは水分が多い食事を摂取するようにすると痰が柔らかくなり吸引がしやすくなります。
食事中に吸引が必要なときは、嘔吐することがないように軽めに吸引をかけるようにします。高齢や寝たきりが原因で嚥下能力が低下し、気管への誤嚥のリスクが高い場合には医師の判断によって食事が禁止される場合があります。
②入浴について
気管切開をしていても入浴は可能です。髪を洗うときは首周りにビニール製のエプロンを着けるなど、お湯が入らないような工夫をおこないます。浴槽につかるときは胸の高さまでとし気管切開部がお湯につからないようにします。介護される方は表情や呼吸状態を観察しながら介護しましょう。
③就寝時
就寝時は布団などの掛物によって気管切開部がふさがれることがあります。寝たきりの方を家族が介護する場合には気管切開部を誤ってふさいでしまわないよう注意しましょう。また、夜間にカニューレ詰まりなどが起きた場合にすぐに気がつけるよう近くで就寝されるのがおすすめです。ペットがいる場合にはペットが近づけないよう環境面を調整します。
④着替え
衣類かぶりの衣類は着脱の時にひっかかって気管カニューレが抜けないように注意が必要です。前あき式の衣類を選択されるのがベストです。かぶり式の衣類を着たい場合は襟元に余裕のある衣服を選択されると良いでしょう。
⑤乾燥対策
冬は暖房を使用する機会が多く空気が乾燥して痰が固くなります。固くなった痰は吸引するのが難しくカニューレの閉塞にもつながります。湿度計を設置し湿度が常に60%以上になるよう加湿器を使用されると良いでしょう。加湿器の不衛生は病気の原因となるため貯水タンクの洗浄と水の交換はこまめにおこなってください。湿度を保つことはインフルエンザの予防にもなります。気管切開している高齢者のインフルエンザは命に関わるため衛生管理や湿度管理は徹底しておこないましょう。
ご家族による介護
気管切開をしている高齢者が在宅生活を送る場合、ご家族の介護や協力は必ず必要になります。具体的には気管内吸引やガーゼ交換、吸引機器の洗浄、吸引カテーテルの交換などを家族がおこなう必要があります。手技や知識・観察方法については入院中に医師や看護師が指導してくれるので心配する必要はありません。
気管内吸引の頻度はそれぞれ異なりますが、痰が気管内にたまってゴロゴロとした音が聞こえるときや、入浴や食事の前におこなってあげると効果的です。痰が少ない方も1日2回程度は吸引するようにしカニューレの閉塞が無いことを確認しておくようにします。
在宅介護で重要なのは家族が多くを抱え込み過ぎないようにすることです。訪問診療や訪問看護で医師や看護師の力を借りる、介護施設のショートステイを利用するなどの方法で家族の負担が大きくならないようにしましょう。費用の面では保険以外にも様々な社会資源が利用できる場合があるので病院の相談員など専門家に相談すると良いでしょう。
気管切開の方を受け入れている老人ホーム
気管切開の方を受け入れている老人ホームは今のところそれほど多くないというのが現状です。有料老人ホームにおける気管切開高齢者の受け入れ状況は約12%となっており、ペースメーカー(72%)、ストマ(60%)、尿バルーン(52%)、胃ろう(41%)など他の医療処置が必要な方の受け入れ状況と比較してもかなり低い数値となっています。
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その理由としては気管カニューレは衛生面を考えると2週間に1回程度での交換が必要であり、その度に医師や看護師による医療処置が必要となるからです。また、気管切開がある高齢者は呼吸器疾患の持病がある場合が多く急変のリスクが高いため医療ケアがしっかりとしているところでないと対応することが出来ません。現状では気管切開がある方を受け入れているのは24時間体制で看護師が常駐している施設や医療機関を併設している施設などに限られます。
老人ホーム入所を希望する場合にはお住まいの地域よりも範囲を広くして探してみるか、社会福祉士やケアマネージャーなど社会資源に関する知識に詳しい専門家に相談されるのがおすすめです。見つけるまでは大変ですが見つけてしまえば経験豊富な医療スタッフが働く環境で安心して過ごすことが出来ます。ネット上の情報も参考にしながら希望に合う老人ホームを見つけてください。
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