寝たきりの高齢者に必要な摂取カロリーはどれくらい?
記事公開日:2016/02/19、 最終更新日:2019/11/08
一般成人の1日あたりのカロリー摂取量の目安はだいたい1800kcal~2200kcal前後といわれています。しかし、この数値はあくまでも平均的な数値であって、適正なカロリー摂取量は性別や年齢、職業、生活スタイルなどによって大きく異なります。
特に寝たきり高齢者は活動量が極端に少なく一般成人とは大きく状況が異なるため、専門的な知識をもとに1日のカロリー摂取量をコントロールする必要があります。ここでは寝たきり高齢者に必要なカロリー摂取量、栄養バランスや食事面で注意すべき点などについて考えてみます。
目次
寝たきり高齢者に必要な1日のカロリー摂取量
寝たきり高齢者に必要なカロリー摂取量は身長や体重、年齢、性別、生活活動量、合併症など多くの項目を考慮して主治医が決めるものです。そのため、寝たきり高齢者のカロリー摂取量は一人ひとり異なります。
ですが、以下の計算方法を用いれば標準的な寝たきり高齢者の1日のカロリー摂取量を求めることが可能です。
標準体重(kg) × 体重1kgの必要なエネルギー消費量(kcal) = 1日に必要なエネルギー摂取量(kcal)
では、計算に必要な標準体重と 体重1kgの必要なエネルギー消費量を求めていきましょう。
①標準体重の求め方
標準体重は以下の式で求められます。
標準体重=身長(m)×身長(m)×22
身長150cmの方であれば1.5(m)×1.5(m)×22=49.5(kg)となります。
② 体重1kgの必要なエネルギー消費量の求め方
体重1kgの必要なエネルギー消費量は以下の表を参考に求めます。
労働の程度 | 体重1kgあたりの 必要エネルギー量 |
ほとんど寝たきりの老人や、安静を指示されている入院患者 | 20kcal |
ある程度糖尿病の重い場合や、無職の高齢者など、主に部屋の中で生活している人 | 25kcal |
サラリーマンや主婦、教師、医師、看護婦、運転手など | 30kcal |
農繁期の農夫、操業中の漁夫、山林業、建設作業員など | 35kcal |
左官、大工、とび職など | 40kcal |
寝たきりの方の 体重1kgの必要なエネルギー消費量は20kcalであることが分かるので標準体重50kgの方であれば50×20=1000 kcal、60kgの方であれば60×20=1200 kcalが標準的な寝たきり高齢者の1日のカロリー摂取量であると計算できます。
注意が必要なのは実際の寝たきり高齢者には肥満体型で痩せるべき方もいれば、痩せすぎで低栄養が心配される方もいます。当然ながら痩せる必要がある方にはカロリー摂取量は少なめに設定しますし、栄養が必要な方にはカロリー摂取量を多めに設定します。
医療現場や介護施設では定期的に体重を計りながら体重の増減を把握し、主治医や栄養士、看護師などの専門家の意見をもとに摂取カロリーを調整していくのが一般的です。
食事ではカロリー摂取量だけでなく栄養バランスも考えて
寝たきり高齢者の1日のカロリー摂取量について説明しました。では、カロリー摂取量を守れば何を食べても良いのかというとそうではありません。食事ではカロリーを守るのと同時に三大栄養素やビタミン・ミネラルといった栄養素のバランスを考える必要があります。
三大栄養素には炭水化物と脂質、タンパク質があります。炭水化物はごはんやパン、めん、芋などに含まれており、体内でエネルギーとなる物質です。もっともエネルギーとして消費しやすい栄養素ですが、取りすぎは血糖値の上昇を上昇させ肥満の原因となります。
脂質は植物油やお肉などの脂肪に含まれています。糖質と同じようにエネルギーとなる物質ですが、細胞膜の原料となったり脂溶性ビタミンの吸収を高めるなど生きていくために必要な栄養素のため、取りすぎに注意しつつも一定量はとるようにします。
タンパク質は高齢者が不足しやすい栄養素で不足すると低栄養の原因となるので積極的に取るようにします。たんぱく質を含む食材には肉や魚、大豆製品などがあるのでバランスよく食事に取り入れるのが良いでしょう。
ビタミン・ミネラルは皮膚の健康や免疫機能、体の調子を整えるうえで必要な栄養素です。寝たきり高齢者の免疫力が低下し感染症になると命にかかわりますし、糖尿病がある場合には症状のコントロールのためにもこれらの栄養素が必要です。野菜や海草、きのこなどビタミン・ミネラルが豊富な食材から栄養を取るようにしましょう。カルシウムの不足は骨粗しょう症を進行させるため、女性は特にカルシウム不足に注意したいところです。
寝たきり高齢者は水分量にも気をつけて
カロリー摂取量を守ることは重要ですが、実はそれ以上に大事なのが水分管理です。寝たきりの方は水分が欲しいことを自分で伝えることが出来ない場合も多いですし、排尿を少なくするために意識的に水分を控えてしまう場合があります。また、高齢者はのどの渇きを感じにくいため自分では水分不足に気がついていないケースもあります。本人の意思表示にまかせるのではなく、介護者が意識してこまめに水分補給を促すことが重要です。
寝たきり高齢者への食事は誤嚥に注意
寝たきり高齢者の多くは食べ物を飲み込む力が低下しています。そのため、食事が食道ではなく気管の方に入ってしまう誤嚥を引き起こす可能性が高いです。健康な方であればせきをして排出することが出来ますが、寝たきり高齢者はせきをする能力も低下しているため排出できず、残った食べ物に細菌が繁殖して誤嚥性肺炎を引き起こします。
誤嚥を起こさないためにはいくつかのポイントを守る必要があります。一つ目のポイントは食事を取る際の姿勢です。正しい姿勢で食事を行なってもらうことで大きく誤嚥のリスクを軽減できます。
車椅子や椅子に座れる方はできるだけ椅子や車椅子で食事をしてもらうようにします。椅子の高さは足がつく高さとし、車椅子の場合は足を下ろして地面にしっかりと足をつけた状態で食事をしてもらいます。地面に足がついているかどうかで食べられる食事量は大きく変わってきます。
ベッドで食事をする際は本人の希望も考慮してリクライニングで45度~80度くらいまでに体を起こします。膝は軽く曲げてもらい、その下にクッションなどをはさんであげると楽な姿勢で食事が出来ます。介護で食事をする場合には頭の下にクッションをいれ頭を起こしてあげると飲み込みがしやすくなり、誤嚥を予防することができます。
2つ目のポイントは食事形態です。寝たきりの方は飲み込む力が弱くなっているのと同時に噛む力やのどの筋力も弱くなっている場合が多いです。柔らかい食事を細かくして提供してあげると食べやすいでしょう。医療機関や介護施設では、きざみ食、極きざみ食、ミキサー食など複数の食事形態を用意しており、嚥下能力に合わせた食事形態で提供しています。また、お味噌汁など液体状のものはとろみがあると誤嚥せずに飲み込みやすくなります。
食事がとれないときは介護食もおすすめ
身体機能の低下が顕著で重度の寝たきりの場合には充分な食事を取ることが出来ないケースもあります。このような場合はすぐに点滴や中心静脈栄養に頼るのではなく、介護食などの食べやすく高カロリーな食品を取り入れるのも良い方法です。点滴や中心静脈栄養は直接血管に栄養を送りこむため、消化器官などの機能が低下してしまうという問題があります。可能であれば必要な栄養は食事から摂取し、消化器官などの活動を促進するのが良いでしょう。
手術や病気の急性期症状が原因の寝たきりの場合には、全身状態が安定し食事がおこなえるようになることで急激に回復していくケースも少なくありません。
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