認知症について
記事公開日:2015/06/19、 最終更新日:2019/03/27
認知症は、いまや65歳以上の高齢者のおよそ7人に1人が罹患しているとされています。また、これからの高齢化社会の進行にともなって、今後も患者数は増え続けると言われています。
目次
認知症ともの忘れの違いは?
人間は、老化にともなってさまざまな能力が衰えていきます。記憶力もそのひとつであり、歳をとるに従ってもの忘れがひどくなるのは、誰にでも起きることです。認知症では、老化による記憶力の低下とは異なり、病的に能力が低下します。例えば、お昼ご飯を食べたとします。加齢によるもの忘れの場合では、夕方になって食べたメニューの一部を忘れてしまうことはありますが、認知症の場合は「食べた体験」そのものを忘れていることがあります。また、前者では「自分がもの忘れをしている」という自覚がありますが、認知症患者の場合はこうした自覚がありません。
認知症の種類は?
ごく簡潔に、認知症の種類をまとめています。以前は、「非可逆的=進行するともとに戻らない」症状に対してのみ認知症の用語が用いられていました。しかし、近年では治療によって症状が改善する場合(正常圧水頭症など)にも認知症の名称を使用することがあります。
アルツハイマー型認知症
認知症の代表的な型としてよく知られています。記憶障害を皮切りに、さまざまな症状がおこる場合が多いです。
脳血管型認知症
脳こうそくや脳動脈硬化などの疾患によって脳に受けたダメージが原因となります。記憶障害や言語障害が現れやすいタイプです。
レビー小体型認知症
1995年に提唱された比較的新しい概念の認知症です。パーキンソン病と同様の筋肉のこわばりや幻視などを伴います。
前頭側頭型認知症
報告した医師の名からピック病とも呼ばれます。どのようにして、病気が発生するかのメカニズムは詳しくは解明されていません。劇的な性格変化や、万引きをする、同じ言動を繰り返すなどの症状が代表的です。
認知症の症状は?
認知症の症状は、「中核症状」と「行動・心理症状」の2つにわけられます。
中核症状
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主な行動・心理症状
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中核症状に加えて、本人の元来の性格や置かれている環境、人間関係などの因子が複雑に重なり合って、さまざまな行動・心理症状として出現します。
認知症の治療は?
現代の医学では、残念ながら認知症を完全に治療する薬はありません。しかし、早期に症状を発見して治療を開始すれば、症状の進行を遅らせることが期待できます。ちょっとしたもの忘れなどでも、「いつもと様子が違うな」と感じたら周囲がいちはやくかかりつけ医などの専門家に相談することが大切です。
認知症の初期症状
認知症の初期症状として物忘れが多くなるということはよく知られています。しかし、ただの物忘れは加齢によるものであり、認知症による物忘れには特徴があります。
加齢に伴う物忘れは、忘れているという認識があります。例えば、鍵を持っていたところまでは覚えているけど、その後どこに置いたのか覚えていないというように、鍵を置いた場所を忘れたという事実を覚えています。しかし、認知症では鍵を持っていたという事実ですら忘れてしまいます。
この他にも家族が気付きやすい初期症状は、同じ話を何度も繰り返し話したり聞いたりしてくる、話のつじつまが合わない、失敗が増えた、何だか人が変わったように様子が変などの症状が見られます。
症状の進行を抑える
認知症を発症した場合、人によって進行のスピードは違いますが、完全に治すことはできません。死滅した脳の細胞は再生することがなく、脳の萎縮は徐々に進行していくからです。認知症の治療は、その進行を抑えるための薬物療法が主体となり、その他の認知症症状を和らげる薬と併用していきます。
しかし、薬以外にも進行を抑える方法があります。それは、脳を鍛えることです。脳は刺激を受けることで活性化するため、頭を使うレクリエーションや軽い運動、人との交流も効果的です。また規則正しく十分な睡眠を得られる生活をすることも大切です。
認知症の検査
認知症の検査方法は主治医による「長谷川式簡易知能評価スケール」というもので検査します。内容的には年齢を聞いたり、日付を聞いたりと簡単な質問です。簡単であることから、高齢者の中には「バカにしている!」や「自分はボケてない!」などと抵抗する方も多いです。しかし信頼する主治医の言うことであれば受け入れる高齢者も多いです。かかりつけ医なら持病の管理や投薬による副作用も認識しているため判断がしやすいです。
認知症への抵抗
主治医による認知症検査で認知症の診断が出た高齢者の中には、認知症に対して敏感に反応する方が多く、自分が認知症であることを認めたがりません。特に記憶の検査などは主治医の質問に対して的外れな答えをし、話をはぐらかしてその間に正解を考える人もいます。今まで生きてきた中でのプライドもあるようですが、主治医との信頼関係も認知症を見分けるのにとても大切なポイントであるということです。
認知症と痴呆症はどう違う?
認知症という病気は昔は痴呆症と呼ばれていました。
しかし、痴呆という言葉は「愚か」「ぼんやり」といった意味があり、侮辱的な表現であるとして平成16年に統一して改めることとなりました。
「認知症」という言葉は公募などを通じて厚生労働省のチームによって決められたものです。
この時は行政用語として「認知症」という言葉に改められましたが医学用語や法律用語としても「認知症」という言葉で統一され、現在は「痴呆症」という言葉はほとんど聞かれることはありません。
用語が違うだけなのでこの両者で症状が異なるということはありません。
認知症の症状が異なる場合にはアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など、それぞれの症状の種類で区別されます。
認知症患者への倫理的配慮
認知症患者に対して「痴呆症」のような差別的な呼び名を使うのではなくそれは病気であるとして「認知症」などの病名を使うことは認知症患者への倫理的配慮に基づくものです。
「呆けてしまって何もわからない」として相手の気持ちを思いやらない扱いをするのは認知症への無理解と言えますし、人道的、倫理的にも反するものと言えます。
介護をする時はもちろんですが、ご家庭内や地域の中で高齢者と関わる際には十分気をつけるべきことです。
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医療や介護の現場では特に高齢者に対しての倫理的な配慮が問題とされています。
例えば、終末期医療においては高齢者の意思を尊重するのが難しくなります。意思確認が困難となってしまった高齢者に対してどのような措置をとるのが正しいのかといった問題があります。
介護の現場においても、認知症が進行して何もわからなくなっているからとどんな対応をしてもいいというわけではありません。例えば、徘徊に困っているからと部屋に鍵をかけて閉じ込めたり、拘束をして動けないようにする、睡眠薬で無理やり眠らせるという手段をとるのは倫理的にも法律的にも問題があります。
一人ひとりを尊重することの大切さ
認知症のケアで重要なのは患者さんを1人の人間として尊重することです。人間は認知機能のために道徳的地位が与えられているわけではないということです。
介護する側はその人にとってどうしてあげることが一番いいのかということを考えながらその人自身の感情を大切にすることが大切です。
介護に慣れていない初心者のスタッフや家族などにとって最初は難しいことかもしれません。このようなことは訓練を重ねること、また、認知症という病気を深く理解することで可能となっていきます。
在宅での生活が難しくなったら
認知症であっても、できる限り症状の進行を抑え、その人らしい充実した生活を送っていくことが理想的です。しかし、家族だけでは難しい点が多くあります。
老人ホームなどの施設では、他の利用者との交流ができる他、規則正しい生活、バランスのよい食事が提供され、健康的な生活ができます。また、認知症の進行を防ぐために頭を使うレクリエーションや趣味を生かした作業などを企画し実施しています。
在宅療養では、家族が仕事をしていたり、用事で自宅を空けるなど24時間側で見守ることができず、その間に何か起きないかと心配するため、外出を控えるように言い聞かせることがあります。そのため、認知症を抱える高齢者が1人で過ごすことも多くなります。自宅に1人でいることが多い方は認知症の進行が早いといわれています。
できる限り、在宅療養を続けることが理想的ですが老人ホームで生活しながら、家族が側にいられる休日に外泊して自宅で一緒に過ごすという方法もあります。認知症の初期症状が現れた時、家族にとって、また認知症を抱える高齢者にとって、よりよい生活の場をどこに構えるのかを考えることが、認知症の進行を抑える第一歩になります。
認知症でも生活ができる老人ホーム
一言で『認知症』といっても、周りの人が認識するのと本人の認識では差が激しく、中には認知症に対しての抵抗から、自分は認知症ではないと頑なに抵抗する高齢者も少なくないです。
ですが、認知症の方は年々増加する傾向にあり、中でも軽度認知障害の方は65歳以上になると4人に一人の方が認知症予備軍となってきます。そこで認知症の診断をするための検査が必要となってきます
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