寝たきりの高齢者と腰痛
記事公開日:2016/03/17、 最終更新日:2019/11/08
寝たきり高齢者の方が腰痛になることはよくあります。腰の痛みがあるにもかかわらず、寝たきりで自分では自由に姿勢を変えることも難しい状況は非常につらいものでしょう。介護する側は腰痛の痛みに配慮することが必要で、通常よりさらに丁寧で気を使った介護はもちろんのこと、腰に負担をかけない介護技術が求められます。ここでは寝たきり高齢者と腰痛について考えてみましょう。
目次
寝たきりの方が腰痛になりやすい理由
寝たきりが原因による廃用症候群
なぜ寝たきりの方は腰痛になりやすいのでしょうか。寝たきりの方は一日のほとんどをベッドに寝た状態で過ごすため、立ったり歩いたりといった重力に抗した運動をおこないません。筋肉を使うことがないため全身の筋肉は痩せ急激に筋力は低下していきます。過度の安静や活動性が低下したことによる身体への悪影響のことを廃用症候群と言います。
腰の骨や関節は脊柱起立筋といわれる腰の筋肉や腹筋、股関節周囲の筋肉などによって支えられています。筋力が落ちると背中の骨や関節の支えがなくなるため腰の骨や関節の安定が失われ、起き上がりや車椅子の移乗介助の際などちょっとしたことで関節、筋肉、靭帯、神経などを損傷し痛みが発生します。
寝たきりの方は筋肉だけでなく骨も弱くなります。骨を維持するためには十分な栄養を取ることはもちろんのこと、重力に抗した刺激を与えることが必要です。寝たきりの方は立ったり座ったりといった動作を行なわないため骨がもろくなり、いつの間にか骨折を起こし痛みが発生することがあります。
寝たきりの方は自分で姿勢が変えられない
元気な方は自分で寝返りをうつことができ、寝ているときに不快さを感じれば仰向けになったり、横を向いたりと腰に負担がかかる状況を回避することが出来ます。しかし、寝たきりの方は自分で姿勢を変えることが出来ません。寝たきりの方は意思表示を出来ない方も多いですし、看護・介護スタッフも忙しいので頻繁に体位変換することは難しいです。このような状況から腰への負担がかかりやすく腰痛を引き起こすことが多くなります。
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腰痛の原因
腰痛には画像診断によって原因がはっきりと分かるものと、画像診断などでは原因が判断できない腰痛があります。寝たきりの方の腰痛は後者の場合が多いです。寝たきりの方の腰痛の原因として考えられる疾患には以下のようなものがあります。
腰周囲の軟部組織が原因の痛み
腰周囲の筋肉や筋肉を覆う筋膜、靭帯、関節を覆う関節包といった柔らかい組織を軟部組織といいます。筋力が弱くなり支えがない状態になるとこれらの軟部組織が損傷されやすくなり痛みが発生します。ぎっくり腰の多くはこのような軟部組織の損傷だと言われています。
椎間板ヘルニア
椎間板は背骨と背骨の間にある円盤状の軟骨で衝撃を和らげるの役割をしている組織です。寝たきりとなると椎間板の柔軟性性はなくなり、ちょっとした刺激で破裂して中の成分が背骨の中を通る脊髄神経を圧迫してしまう場合があります。これを椎間板ヘルニアと言います。
若い人の場合はスポーツや重いものを持ったときなどに発症することが多いですが、寝たきりの方の場合は起き上がりや車椅子への移乗といった日常動作程度でも起こる場合があります。椎間板ヘルニアでは痛みだけでなく下肢に強いしびれが起きることが多いです。
脊椎圧迫骨折
脊椎圧迫骨折は転倒し尻もちをついたときに起こりやすい骨折です。しかし、寝たきりの方の場合は廃用症候群により骨が弱くなっているため、無意識のうちに脊椎を骨折しているケースがあります。脊椎圧迫骨折に対しては特殊なケースを除いては手術による治療は行なうことが出来ません。炎症がおさまるのを待ち、痛みが軽減するまで安静にする保存療法が基本となります。必要に応じてコルセットなどを作成します。
その他の原因
その他には脳卒中の後遺症で筋肉に硬直がある場合や、脊椎すべり症など腰痛を起こしやすい疾患を合併していると腰痛になりやすくなります。また、関節拘縮により下肢や腰の関節の動きが制限されると腰痛が発症しやすくなります。
腰痛を防ぐには
廃用症候群を予防する
寝たきりの場合でも日中はできるだけ車椅子に座る時間を多くし起きて過ごす時間を増やすことが重要です。座位を保持するだけでも骨の強度や筋力の維持に期待できます。食事をベッド上から車椅子に座っておこなうだけでも廃用症候群の予防につながります。
2時間ごとの体位変換
寝たきりの方への体位変換は最低でも2時間おきにおこなうのが基本です。元気な方でも同じ姿勢でいることはつらいと感じると思います。寝たきりの方も当然同じで、体位変換をすることで腰への負担を軽減でき腰痛を予防できます。
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筋力・柔軟性の維持
筋力や柔軟性が低下すると腰痛を引き起こしやすくなります。次の項目で説明しますがリハビリで筋力や柔軟性を維持することで腰痛を予防できます。
腰痛に対するリハビリ
寝たきりの方の腰痛を改善するため、医師からリハビリの指示が出されることがあります。リハビリ国家資格である理学療法士は基本的に以下のようなアプローチをしていきます。
温熱療法による痛みの軽減
理学療法では患者の痛みを軽減する目的でよく温熱療法という治療法を用います。患部を温めることで痛みを感じにくくしたり血行が良くなる事で痛みの軽減が期待できる治療法で、多くの場合は厚手の布袋にゲルが入ったホットパックと言われるものを使用します。使い勝手がよく患部に密着するので腰痛治療に最適です。
下肢・腰周囲の関節可動域運動
股関節や膝関節、骨盤周囲や腰周囲の柔軟性を確保するため関節を動かす運動を行ないます。ストレッチ効果により筋肉を柔らかく保つことができ、関節の可動域を確保することで関節拘縮を予防できます。
体幹や下肢の筋力トレーニング
寝たきりの方への筋力トレーニングは難しいことが多いですが、認知能力がはっきりとしておりリハビリ担当者の指示を理解できる方であれば寝たままでも筋力トレーニングは行なえます。筋力トレーニングと言っても健常者に行なうのとは違い負荷には非常に気を使います。負荷を間違えると痛みがさらに悪化する恐れがあります。
ギャッジアップや車椅子座位により離床を図る
寝たきりの方でも能力の維持や回復が見込める方に対しては座位へのアプローチをすすめ離床できるようにしていきます。徐々に座位になれる時間を増やしていくことで寝ている時間を減らすことができ、腰痛になりにくい生活が送れるようになります。
老人ホームでの寝たきりの方の腰痛への対応
老人ホームでは基本的に腰痛を治療することは出来ないため症状を悪化させないような対応をこころがけます。体位変換によって姿勢をかえて腰への負担を軽減し、起き上がりや移乗介護の際には愛護的な介助をこころがけます。また、老人ホームには褥瘡予防を目的とした特別なマットレスがある場合が多く、体圧を分散させることで腰痛を予防することができます。
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腰痛の訴えが強い場合には整形外科などの医療機関の受診を考えます。受診後は医師と相談しながら処方された薬で痛みを押さえたり、日常生活の介護方法を改善することで対応します。骨折などが見つかり治療が必要な場合にはそのまま入院となるケースもあります。
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