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老健(介護老人保健施設)とは

記事公開日:2018/03/06、 最終更新日:2019/05/08


介護療養型医療施設とは

老健(介護老人保健施設)について

介護老人保健施設は、通称「老健」とも呼ばれます。一時的な入居を経て、在宅での生活への復帰をめざしていくための介護施設となります。特別養護老人ホームと比較して、医療ケアが格段に充実している点が大きな違いとなっており、わかりやすく言えば在宅と病院の中間地点のような存在です。病院から在宅に戻るまでの間に一時的に過ごす場所が老健です。痰の吸引や気管切開、胃ろうといった常時医療が必要となる方も、受け入れる体制が整えられています。
老健内には、医師をはじめとして介護士や看護師、あるいはリハビリを担当する作業療法士や理学療法士が在籍します。各利用者の身体状況に合わせた目標が設定されており、専門スタッフたちが適切なケア・サービスを提供します。

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老健に入所するにはどんな条件があるのか

老健は介護施設の中でも、病院と自宅の間を取り持つ役割のある施設です。病院から老健に行く人が大半ですが、自宅からリハビリ目的で老健に行く人もいます。

老健に入所するにはどのような条件があるのでしょうか。

 

要介護であることが最低条件

老健は介護施設ですので、介護認定を受けていなければなりません。また、その認定が最低でも要介護以上が必要です。要支援者は入居ができません

特養では要介護3以上でないと入れないといのが基本的な条件ですが、老健に関しては要介護1でも2でも入所することができます

 

病気が重い人、緊急性の高い病気を持っている人は断られる

老健は特養などに比べても、看護師の数が多く、医師も常駐していますので、医療的な部分については非常に強いです。

特養では断られやすい胃ろうや、たん吸引などで断られることはありません

しかし、あまりに病状が悪い人や、緊急性が高い病気を持っている人は受け入れができません。例えば、重度の褥瘡、重度の貧血、高血圧などは受け入れが難しくなります。治療が判断とされれば病院を勧められるでしょう。

また、緊急性の高い病気とは、悪性腫瘍やイレウスなどの緊急時にすぐに対応しなければいけない病気なども病院を勧められることが多いです。

 

次の行き先が決まっていない場合や見込みがない場合

老健は基本的に次のところに繋ぐ施設です。その為次に行くところがある程度決まっていない場合は入所を断られることもあります。

病院から老健に行く場合は、次のところが決まっていなくても大丈夫ですが、自宅から老健にいく場合はそれが理由で断られることも多いです。

老健は入所期間は3ヶ月から半年ほどの所が多く、それ以上滞在されると収入が少なくなります。また、老健を使った特養待ちを防止する為でもあります。

これは非常に多いケースで、自宅で見ることが難しい、かと言って特養にはすぐに入れない。比較的入所がしやすい老健で面倒をみてもらおうという方が老健の問題となっています。ある程度次が決まっていないと、無理に退所させることができませんので、受け入れの時点で断られます。
 

老健の受け入れ条件

65歳以上 自立× 要支援× 要介護○
65歳以下 40歳以上64歳以下の特定疾病による介護認定を受けている方

医療の受け入れ体制

インスリン○ 在宅酸素○ 胃ろう○
鼻腔経管栄養○ 中心静脈・IVH○ たん吸引○
点滴○ 認知症○ 感染症△
服薬管理○

生活援助

食事提供○ 掃除・洗濯△ 見守り・生活相談○
買い物代行△ 食事介助○ 入浴介助○
排泄介助○ 着替え介助○ 機能訓練(リハビリ)○
レクリエーション○

 

老健入所の流れ

老健に入所するためにはまず入所する先を見つけ、申込みをします。
申し込みに際しては、健康診断書や身体障害者手帳の提示を求められることが一般的です。入院(通院)先の医療機関からの転院の場合は、医療機関からの紹介状や看護サマリーの提出も必要となります。
申込後、施設側との面談があります。本人と家族が面談に参加します。面談の時には要介護度や身体状況、生活の様子や医療ケアの必要性などについて確認がとられます。
提出書類と面談の内容を基に介護の緊急性や本人・家族の資産状況などを総合的に鑑みたうえで入所が決まります。
入所が決まったら契約を交わし、具体的な日程が決定します。

申し込みをしてから入所判定が出るまでには数週間程度時間がかかることもあります。今すぐ入所したい!と思ってもすぐに決まるとは限りません。また、申込みをしても審査が通らない可能性があります。
また、入所したとしても長期入所が一般的な特別養護老人ホームとは異なり、介護老人保健施設では3か月ごとに入退所を判断する検討会議が開催されることです。そのため、入所期間は数か月~1年程度となることが多くなっています。

入所の難易度

全国的に待機者が多い特養と比べると老健はそこまで待たされずに入所が決まります。老健自体が短期入所を前提としているため、ベッドの回転が早く、待たされずに入所可能です。最近は特に在宅復帰を強化する傾向にあるので待機者が少なくなってきているようです。
病院から退院してとりあえず少しの間入れるところを探したいという時、頼みの綱になるのが老健です。

 

老健の費用

初期費用は必要がなく、毎月の利用料のみが発生します。地域や施設によって差がありますが、おおむね毎月8~13万円程度を目安として考えて下さい。特別養護老人ホームよりはやや高額で、民間運営の各介護施設よりはやや割安な設定となっています。

 

老健の月額費用の内訳

月額費用(8~13万円)=介護サービス費自己負担分+生活費(居住費・食費・その他)
その他費用は洗濯代や娯楽費、理美容代などが実費でかかってきます。

介護サービス費の自己負担分は、介護度や年収(課税額)などによって変動します。また居住費も居室のタイプ(多床室/個室)によって、変動します。
ただし、入居者の収入によって4段階に分けられ、居住費と食費については減免措置が用意されています。

 

老健の設備

老健の居室は全部で4タイプです。

 

「多床室」

特別養護老人ホームと同様に、複数のベッドが設置された居室です。現在の老健では一部屋で4人利用する多床室がほとんどです。

 

「ユニット型個室」

ユニットごとに共有スペースが設けられた居室をユニット型個室と言います。
1ユニットが10部屋という単位で1ユニットにつきロビーやダイニング、簡易キッチン、浴室、トイレなどを共有して利用します。1ユニットにつき1人の専任スタッフがつきます。

 

「従来型個室」

ユニット型個室が登場したことでこれまでの個室は「従来型個室」と呼ばれるようになりました。1人で一部屋利用するタイプの居室です。

 

「ユニット型準個室」

多床室を分割して作った個室です。ユニット型個室とほとんど違いはありません。しかし、施設によっては完全な個室になっていない場合もあるので確認が必要です。

最近は老健でも個室タイプが多くなってきましたが、あくまで一時的な入所を前提とした介護施設であるため多床室・従来型個室からユニット型への切り替えは進んでおらず、半分以上の居室がまだ多床室でしめられています。
居室の他には、食堂、浴室やトイレ、談話スペース、共同生活室といった共同設備、医師の診察を受けられる診療室やリハビリ用の機能訓練室が備えられています。

 

老健で受けられるサービス

老健の目的は利用者が在宅に復帰できるような状態に回復させることです。
そのため、老健では主に在宅復帰のためのリハビリや医療行為を受けることが可能です。
医師が在勤しているので医師の管理のもとに看護や介護ケア、リハビリテーションがおこなわれます。利用者に合わせてケアプランが作成され、ケアプランに基いて理学療法や作業療法がおこなわれます。自宅で生活できるよう、車椅子の乗り方や歩行器を使った歩き方、手すりを持ちながらの移動を訓練します。
また、日常生活を送るのに必要な介助・介護もサービスに含まれます。食事や入浴、排泄の際には介護スタッフが介護をおこないます。

 

老健でのリハビリテーション

退所後自宅で生活ができるよう、リハビリテーションを中心とした医療サービスを提供します。看護師、介護職員以外に、医師、理学療法士、作業療法士などが常勤しています。とくに、入所後最初の3か月は、毎日リハビリテーションを行い、機能回復を目指します。

 

老健の医療行為

医師の診察や投薬も、施設内で行いますので、自由に他の医療機関で受診したり、薬をもらったりはできません。施設内で対応できない診療科目や診療内容は、他での受診ができます。施設内での医療費は医療保険ではなく、介護保険で賄われ、施設のサービス費に含まれます。

 

老健の人員配置と役割

医療や介護、リハビリなどのケアを提供している老健には様々なスタッフが配置されています。
・医師
常勤で入居者100名あたり1名以上の配置。入居者の医学的観点から健康管理をおこないつつ、施設の管理者を兼ねていることもある。
・看護職員
入居者100名あたり9名以上の配置。
・介護職員
入居者100名あたり25名以上の配置。
・理学療法士(PT)
入居者100名あたり1人
・作業療法士(OT)または言語聴覚士(ST)
入居者100名あたり1人
・その他のスタッフ
ケアマネージャー、支援相談員、管理栄養士、栄養士、薬剤師、歯科衛生士、事務職、厨房職員等

看護職員は看護・介護職員の総数の7分の2程度、介護職員は看護・介護職員の総数の7分の5程度という規定もあります。
介護老人福祉施設の中で作業療法士や理学療法士、言語聴覚士といったリハビリの専門職を必須としているのは老健だけです。

 

老健における医師の役割

老健には医師が常勤しており、専門的な医療ケアを受けられることが大きな特徴となっています。
老健は介護や医療、リハビリの様々な職種が連携して利用者をサポートする施設です。その中でも医師はチームのリーダーとしてトータルにサポートする役割をもっています。これは病院の医師ともまた違った役割です。
老健での医師の仕事は回診や栄養管理、感染症対策などの基本的な健康管理にはじまり、定期健康診断や予防注射、薬の処方などおこなっています。また、老健での特別な仕事として入所判定の補助をしたり、リハビリや看護ケアに指示をだしたり、アドバイスをおこなうなどの重要な役割があります。医師がいるからこそほかの介護施設と異なり、専門性の高いケアを提供できるのです。
また、老健に入所している高齢者のほとんどが自分のかかりつけ医を持っています。老健の医師は入所者のかかりつけ医とも連携をとりながら、入所中の健康状態を管理しています。
また、一般の病院やクリニックと異なり、利用者の自立を促すための治療をおこなうというのも大きなポイントです。

 

老健における理学療法士・作業療法士の役割

老健に常勤する理学療法士や作業療法士といったリハビリ専門職は入所者のリハビリをトータルでサポートします。
具体的には利用者に対する評価とそれに基づいたリハビリ計画の作成、専門的リハビリの提供、生活機能向上プログラムの指導をおこないます。
理学療法士は主に運動機能に関わるリハビリを、作業療法士は主に精神心理機能を、言語聴覚士はコミュニケーションや嚥下機能について維持、向上させるためのリハビリを実施します。小集団に分かれて行うこともあればマンツーマンで指導する場合もあります。

 

老健の多職種連携

老健は医療ケアを受ける病院のような機能をもちつつも一方で自宅復帰を目指してリハビリを行う機能もあり、生活を送る介護施設の機能もあります。これらの機能を併せ持つ老健ではスタッフ達の専門性も様々で、職員が連携しながら利用者の生活をサポートする必要があります。これを多職種連携といったり、多職種協働、あるいはチームアプローチと呼びます。専門性をもったスタッフそれぞれが利用者に対してどのようなゴールを設定すべきか考え、その目標に向かってみんなで動いていくのが老健のチームアプローチです。
このチームを統率しているリーダーが医師です。医師の指示のもと、介護、看護、リハビリのスタッフが役割に則って動いていくことになります。
看護・介護のスタッフは医師の指示のもと、治療と日常生活のためのサポートを行います。点滴や胃ろうなどの医療行為を看護師が担当し、介護士は食事や排泄等の介護をします。
理学療法士や作業療法士などのリハビリ系を担当するスタッフはセラピストと呼ばれることもあります。セラピスト達は機能訓練室などで週にきまった時間リハビリを行います。
老健での生活はリハビリに重きを置いています。セラピスト達がおこなうリハビリの他にも、看護・介護士達は普段の生活の中でその方が本来持っている機能を回復できるような動作を促すよう、心がけています。リハビリに関してはセラピスト達が中心になってスタッフ間のリレーションを図り、目標に向かってアプローチをおこなっています。

老健におけるリハビリの内容

老健でおこなわれるリハビリは週二回以上という規定があります。基本的には個別リハビリになりますが、週に一回は集団リハビリでも良いとされています。
病院でおこなわれるリハビリは「回復期」のリハビリと言われますが、それに対して老健のリハビリは「維持期」のリハビリと言います。維持期のリハビリは回復期と比べると回数は少なくなります。
週に二回のリハビリを入所者は20~30分程度おこないます。
入所してから最初の三ヶ月間は短期集中リハビリテーションといって週に三回のリハビリをおこなっている老健もあります。希望がある場合にはスタッフに申し出するようにしましょう。加算がとれるため、比較的受け入れてもらいやすいです。ただし、三ヶ月が過ぎた後は加算が取れなくなるためリハビリの回数や時間を増やしてもらえなくなる可能性が高いです。
リハビリの内容は利用者の身体状況などによって異なります。
歩行に問題がある方は歩行器につかまったり、手すりにつかまりながら歩く練習をします。このようなリハビリは理学療法士が担当する部門です。
認知の低下や精神面での問題がある方に対してはアクティビティがおこなわれます。塗り絵や習字、計算問題などの頭や指先を動かす活動を通じて認知機能や精神面の活性化を図ります。主に作業療法士が担当する部門です。

老健の自宅復帰率

老健を探す際には自宅復帰率が高いかどうかをチェックすることをおすすめします。自宅復帰率の高い老健は手厚い体制でケアをおこなってくれているとされています。在宅復帰に力を入れている老健は在宅強化型老健として認定されます。在宅復帰率が5割以上、ベッドの回転率が1割以上という高い要件をクリアするのが在宅強化型老健の条件で、認められると介護報酬がアップします。このため、以前よりさらに在宅復帰に力を入れる老健が増えてきました。

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介護老人保健施設のメリット・デメリット

メリット デメリット
  • 利用料が安い
  • 高度な医療ケアが受けられる
  • リハビリの設備・スタッフが整っている
  • 多くの施設が多床室中心の構成である
  • 短期入所が中心で、次の行先の選択が迫られる

特別養護老人ホーム(特養)との違い

・特別養護老人ホームは終身制ですが、介護老人保健施設は原則長期の入所はできません。

・法的根拠に違いがあります。特別養護老人ホームは老人福祉法、介護老人保健施設は老人介護法に基づいています。

・介護老人保健施設には常勤の医師がいますが、特別養護老人ホームは嘱託医です。

老健の運営は介護報酬で成り立っている

老人保健施設(老健)の運営は介護報酬によって成り立っています。介護報酬と言うのはサービスを提供した場合にその対価として老健に支払われる報酬のことであり、サービスの費用と考えて問題ありません。現在の介護保険制度では介護報酬の1割から2割を利用者が負担し、残りは介護保険から支払われる仕組みとなっています。
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介護報酬の基準

介護報酬の基準は介護保険制度によって細かく決められています。そのため、介護報酬は老健が自由に決められるわけではありません。賃料や食費、サービス費は国があらかじめ基準を決めているため、利用者はどの施設に入所しても基本的に同じくらいの費用で利用することが出来ます。サービス費は要介護度によって異なる仕組みとなっており、要介護度が重くなるほど介護報酬は高くなります。

サービスによって加えられる加算について

老健には基準以上の手厚いサービスを提供することにより、多く介護報酬がもらえる加算というシステムがあります。
加算にはたくさんの種類があり、手厚い人員配置に対して行なわれるものや、リハビリや口腔ケア、栄養管理、認知症ケアに関するものなどたくさんの種類があります。加算を算定している老健では自己負担する費用は増えますが、費用に見合った手厚いサービスが提供される仕組みとなっています。

今後の介護報酬

老健の介護報酬は3年ごとに行なわれる介護保険制度によってかわります。2015年に行なわれた改定では在宅サービスを充実させたいという国の方針から、老健の介護報酬はマイナス改定となりました。
2018年に行なわれる改定では老健は介護サービスの中でもっとも利益率が低いこともあり、大きなマイナス改定はないだろうという見方がなされています
介護報酬を減らすことには限界があるため、今後は収入に応じて利用者の自己負担割合が増える可能性が高いです。高齢になっても元気でいることが大事な社会になると言えそうです。

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