介護施設での虐待、過去最多の300件。-介護ニュース
記事公開日:2016/02/09、
高齢者への虐待が相次いで発覚し、問題となっています。厚生労働省は、特別養護老人ホームなど介護施設で2014年度、職員による高齢者への虐待と確認された件数は300件、前年度比35.7%増で過去最多であったことを発表。被害者の77.3%が認知症であることがわかりました。虐待の要因は、職員の知識や介護技術の不足、ストレスなどと分析されています。
出典:読売新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160206-00050022-yom-soci
調査は高齢者虐待防止法に基づき、2006年度から毎年実施されています。職員や家族らの通報を受け、自治体が虐待と認定したものを虐待件数として数えており、被害者の総数は691人にもなるそうです。周囲に訴えることが難しい認知症の方が、被害者の大半を占めているという調査結果に悪質性を感じます。
言うまでもありませんが、虐待は、決して許されるものではありません。被害者、また家族に対して、謝ってすまされる問題ではありません。さらに、まじめに働いている職員を侮辱する行為でもあります。虐待をした職員も、介護の世界を志した当初は、高齢者のために働きたいという思いがあったはず。その気持ちはどうなったのでしょうか。
今回の調査によると、虐待のうち「身体的虐待」が63.8%、次いで「心理的虐待」が43.1%(複数回答)を占めました。「身体的虐待」は、殴る、蹴る、叩くなどの暴力行為や、緊急時ではないのに身体を拘束するもの、「心理的虐待」は、脅しや侮辱的な発言によって精神的な苦痛を与えるもの。その他に、本人が同意していない性的な行為を強要する「性的虐待」、本人の合意なしに財産や金銭を使用する「経済的虐待」、必要な介護を行わない「介護放棄(ネグレクト)」があります。
重労働で低賃金と言われ、人手不足がつづく介護業界。厚生労働省によると、虐待の要因は、職員の知識や介護技術の不足、ストレスなどと分析されています。離職率が高いから残りの職員に負担がかかる、新人は教育が不十分なまま過酷な勤務、奇声をあげたり暴れる入居者にどう対応すべきかわからない、まわりに相談できる人がいない、などストレスがたまる要素はたくさんあります。
虐待の防止には、施設、家族、職員それぞれが取り組むことが大切です。最近では、家族が虐待動画を撮影して事実が発覚したケースがありました。これもひとつの方法でしょう。しかし、入居者を虐待から守るためにと、家族や施設が居室に監視カメラを設置することが常態化したらどうでしょうか。
まず、入居者のプライバシーの問題があります。そして、介護施設の職員は、ずっとカメラの監視下で働くことになります。カメラがなくても、食事介助、排泄介助、入浴介助と仕事は山のようにあり、その間にも入居者に何かあればすぐに対応したりと、勤務中は緊張状態がつづいています。夜勤であれば、20時間もその状態がつづき、心から休まることはありません。さらにカメラが加われば、職員のストレスは増えるばかりです。
虐待動画を撮影した家族と職員、また施設の間には、そもそも信頼関係がなかったのでしょう。家族が面会に訪れた際、職員は入居者の日常を家族に伝え、家族は質問や疑問があれば遠慮なく聞けて要望を伝えることができる関係。そこにカメラは必要なのでしょうか。介護施設で入居者が幸せに暮らしているのか、職員は楽しく働いているのか、カメラのレンズよりも心の目で見つめたいですね。