特養向けに「防災の手引き」を作成。-介護ニュース
記事公開日:2016/02/12、
「10秒後に大地震が発生する」と聞いたら、あなたはどうしますか。「あと10秒しかない」なのか、「あと10秒もある」でしょうか。
今回、介護保険施設などのための防災の手引きが公表されました。作成したのは、特別養護老人ホームの事業者が多く所属する全国老人福祉施設協議会です。施設の立地特性をふまえ、通信手段が断たれた場合、職員が死傷した場合など、具体的な対策が例示されています。
出典:医療介護CBニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160209-00000008-cbn-soci
「備えあれば憂いなし」と言いますが、どれくらいの人が万全の備えをしているのでしょうか。大きな事故や災害があったとき、私もちゃんとしなければと思うもの。しかし、メデイアでの報道が減り、数ヶ月経ち、数年が経つと、非常食の賞味期限は切れていたり、懐中電灯は行方不明だったり。いつ、どこで、何が起きるかわからないと、頭ではわかっているのですが。
災害や事故が起こったときには、その人、その企業の真価が問われます。神対応と称されることもあれば、その一方で、芸能人であれば芸能界追放、企業であれば倒産へ追いこまれることさえあります。
しかし、真価が問われるのは、対応の仕方だけでなく、それまでの行いすべてが評価の対象となるのです。どんなに立派な対応をしたとしても、そこには人柄、企業の体質が見えるもの。大女優でもない限り、神は神、ゲスはゲスなのです。
高齢者施設では、入居者が移動をするとき、その多くの人が何らかのサポートを必要とします。車いすや歩行器など補助器具を使用している人、ベッドで寝たきりの人は身体的なサポートが必要です。また、認知症によって理解力が低下している人、目や耳が不自由な人には十分なコミュニケーションや精神的なフォローが求められます。
少ないスタッフで多くの入居者を介護している施設では、いざ避難が必要になった場合、スタッフの絶対数が足りないことは明らかでしょう。日頃から立地の特性、建物の特性、入居者の特性など、施設ならではの対策を考えておかなければいけません。しかも、入居者の状態は、日々どころか、朝と夜で変化していることもあります。
対策をマニュアル化して、スタッフがそれを共有すればいいというものではありません。スタッフが常に、いま地震が起こったら、いま火災が発生したら、どのように行動すべきかを考える必要があります。
東日本大震災が発生したとき、夢の国、ディズニーランドは神対応だと感動を呼びました。ディズニーランドでは、2日に1回の割合で防災訓練が行われているそうです。日常的な防災意識の高さはもちろんのこと、素晴らしいのはキャスト(従業員)の行動。販売用のぬいぐるみを防災ずきんがわりに配ったり、お土産品のクッキーやチョコレートを配ったり。すべて無料で、です。こんなことはマニュアルに記されていません。キャストひとりひとりの行動が、お客様の安全を守ることにつながったのです。
高齢者施設でも、防災訓練は行われています。そのほとんどが、スタッフだけの訓練、スタッフが入居者の役割を演じて行われるものではないでしょうか。実際の入居者は、スタッフの演技のようには動いてくれません。
いざというとき、スタッフも入居者も少しでも冷静な行動ができるように、レクリエーションに防災訓練を取り入れるのも一手です。また、緊急時のスタッフ数が足りないのであれば、日頃から地域との交流を図り、広くサポート体制を整えておくのもいいでしょう。
ここで、名探偵コナンでの1シーン。
少年探偵団が松茸狩りに行き、光彦と灰原がみんなとはぐれ、灰原は足首をねんざしてしまいました。光彦はタオルに互い違いにハサミを入れて即席の包帯をつくり、応急処置をします。灰原に褒められた光彦は、コナンに教えてもらったことだからと、コナンへの劣等感で落ちこみます。そこで、灰原が光彦に言った言葉。
「大切なのはその知識を誰に聞いたかじゃなく、どこでそれを活用するか…。今のあなたは私にとって最高のレスキュー隊員よ!」
マニュアルは、いわば知識。どこで、どのように使えるかが、神かゲスの分かれ道ではないでしょうか。もちろん、知識のあることが前提ですが。