死亡事故件数、高齢者ドライバーほど多数。-介護ニュース
記事公開日:2016/03/07、
警察庁によると、2015年の1年間に全国で発生した交通死亡事故について、ドライバー10万人あたりの死亡事故件数は、全年齢平均が4.4件、75〜79歳は7件、80〜84歳は11.5件。75〜79歳の事故件数は平均の約1.6倍、80〜84歳の事故件数は平均の約2.6倍と年齢が高くなるにつれ事故件数が増えています。
出典:フジテレビ系(FNN)
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160303-00000905-fnn-soci
高齢化に伴い、高齢者ドライバーが増えています。高齢者人口が増えているのですから、高齢者ドライバー人口が増えて当然ですよね。
警察庁交通局運転免許課の「運転免許統計 平成26年版」による2014年末の運転免許(第一種免許)保有者数は、全年齢が80,057,744人、このうち80〜84歳は1,194,439人、85歳以上は440,623人。全年齢の約2%が高齢者ドライバーとなります。
どれくらいの人が日常的に車を運転しているかはわかりませんが、160万人以上の高齢者が運転できるわけです。
加齢とともに記憶力や判断力、身体機能が低下することは否めません。過去にはアクセルとブレーキを踏み間違えて、歩行者を巻き込む事故が起こりました。
どんな人間もミスはします。しかし、ミスに気づくまでの時間、ミスに気づいて次の行動に移る時間が長いほど重大な事故へとつながります。
病気によって正常な運転ができなくなることもあります。最近、大阪市で起きた痛ましい事故では、運転していた男性は大動脈解離により意識を失っていました。男性は50代でしたが、大動脈解離は高血圧の人や喫煙者が発症するケースが多く、高齢になるにつれてリスクが高まります。
このような状況をふまえて、警察庁は高齢者ドライバーが安全運転を継続できるよう支援しています。
更新期間が満了する日に70歳以上の人は、運転免許証を更新する際、高齢者講習の受講が義務付けられています。2013年は2,012,134人が受講しました。
また、更新期間が満了する日に75歳以上の人は、更新期間が満了するまでの6ヵ月以内に、講習予備検査(認知機能検査)を受けることが義務付けられています。2013年の受検者数は1,451,989人で、検査結果に応じた高齢者講習を受講することになっています。
さらに、運転に不安な高齢者には運転免許証の自主的な返納を促しています。
運転免許証は身分証明書として使用している人が多いため、返納後は本人確認書類として使用できる運転経歴証明書を交付。返納しやすい環境を整えています。
東京都の警視庁では、「免許を返納する勇気」と題して運転免許証の返納を呼びかけています。
返納を促進するための施策と言えるでしょう。高齢者運転免許自主返納サポート協議会の加盟店舗で運転経歴証明書を示すと、いいコトがあります。
たとえば、ホテルのレストランで10%割引、百貨店では自宅へ配送無料、メガネ購入10%割引、補聴器購入10%割引、動物園や水族館、美術館などでも特典が受けられます。
そういった取り組みの効果もあり、65歳以上の免許返納件数は2014年で208,414件、2005年に比べて10倍以上増えています。
馬の鼻先にニンジンをぶら下げる、と言うのは言葉が悪いでしょうか。ともあれ警察は、高齢者の運転は危ないから返納してください、ってことですね。
高齢になって運転していると、以前ならしなかったミスをしてヒヤッとすることがあります。標識を見逃したり、停止線を越えて停止したり、隣を走るバイクに気づかなかったり…。もしも事故につながっていたらと考えると怖いですよね。
運転に自信がなくなったり、家族から運転を心配されて免許の返納を考える人が多いようです。
20年ほど前の話ですが、知人のおじいちゃんが70代で自動車教習所に通いました。そして、運転免許を取得すると、「こんなジジイに免許を渡すなんて、日本は終わりや!」と市道で運転することなく免許を返納したそうです。
しかし、現在は高齢者の独居世帯や夫婦世帯が増えています。免許を返納するということは、生活の「足」がなくなるということです。
電車やバスに乗っての移動、徒歩10分の距離…。若ければ普通のことでも、それが難しい高齢者はたくさんいます。
病院へ行ったり、スーパーへ行ったり、友人と会うために外出するのも立派な用事です。しかし、出かけるたびにタクシーを利用するわけにはいきません。当然、出費がかさみますから。
介護保険を利用して安く乗車できる介護タクシーもありますが、利用には制約があります。対象は要介護1以上、利用目的は通院、区役所への手続き、選挙の投票などに限られているのです。
地方へ行けば、車なしでは生活できない地域がたくさんあります。スーパーは諦めて近くのコンビニに、と思っても、その近くが近くでなかったり、24時間営業でなかったり。タクシーにしても、そもそも自家用車が当たり前の地域は台数が少なく、夜になれば休業。夜中に病院へ行きたくなっても、朝まで我慢するか救急車を呼ぶしかありません。
高齢者ドライバー自身、不安があっても運転しなければ生活ができないのです。病院へ行けなければ治療が受けられない、薬局に行けなければ薬がもらえない、スーパーに行けなければ食べるものがありません。
危ないからと「足」を奪うのは簡単です。しかし、その「足」がなければ、高齢者の命に直結します。
移動や食事サービスの充実、自動運転の実用化など多方面でいろいろな取り組みが行われていますが、課題は山積み。高齢者が安全に運転できるように、また運転をしなくても生活できる環境を整えていくことが求められます。