被災地から来た老犬、小学校で心の教育。-介護ニュース
記事公開日:2016/03/10、
明日で東日本大震災から5年。
福島県内の被災地に取り残されていた老犬「ウィル」が、子どもたちの心の教育に活躍しています。「ウィル」が通っているのは、東京都杉並区の立教女学院小学校。3年前、四肢麻痺となり歩けなくなる大病を患いましたが、大手術を乗り越えて、再び登校できるようになった奇跡の老犬だそうです。
出典:sippo
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160309-00010000-sippo-life
震災から5ヵ月後、ウィルは津波被害が大きかった福島県新地町で県に保護されました。教頭先生が県動物救護本部の動物収容所を訪ねたときに出会い、「福島を忘れない」という思いをこめて意思や決意を意味する名前をつけたそうです。
ウィルは、イギリス原産の大型狩猟犬(イングリッシュ・セッター)。10歳を超えていると見られ、人間で言えば、おじいちゃんです。
立教女学院小学校の動物介在教育が始まったきっかけは、不登校の児童のつぶやきでした。
「学校に犬がいたら楽しいだろうな」
その言葉どおり、小学校は楽しそうです。散歩をしたり、ボールで遊んだり、ウィルは子どもたちに大人気。授業中に教壇の近くで寝そべっていることもあるとか。
犬を通して命のぬくもりを感じ、犬を通して会話が弾むことで仲間づくりにも役立っています。さらに、ウィルが福島県出身ということで、震災を身近に想像できているそうです。
動物とのふれあい、交流によって心を癒す療法、アニマルセラピーですね。
最近は、ペットを家族として迎える高齢者世帯が増加。孤独感を軽減し、心を癒す存在となっています。
そこで問題となるのが、ペットの介護や看取りです。以前にもこのウチシルベニュースで取り上げましたが、医療の進歩により人間界だけでなく、動物界でも高齢化が進んでいます。このため、飼い主の高齢者に介護が必要になったり、亡くなった場合、ペットのお世話をする人がいなくなるのです。
介護施設の中にはペットと同居できるところもありますが、残念ながら数少ないのが現状です。また、介護が必要なペットを預かってくれる動物の介護施設、老犬ホームや老猫ホームは全国に10数ヵ所しかありません。
昔は、「うちのワンちゃん、引っ越し先で飼えないから引き取ってほしい」「赤ちゃんがたくさん生まれたから1匹もらって」といった近所のやりとりがありました。いまでも、お隣の子を自分の子のようにかわいがるような田舎なら、このような交流もあるでしょう。
しかし、都会になればなるほど近所付き合いは希薄で、隣に誰が住んでいるのかすら知らないような時代。ペットの介護や看取りの問題は、地域のつながりや人間関係の脆弱さが背景にあるのかもしれません。
認知症の高齢者が行方不明になると、よく地域で見守ることが大切だと言われます。そのとおりです。徘徊している高齢者に地域の人が声をかけたことで、無事に保護されたということが実際にあります。
しかし、日本が深刻な高齢化になって、認知症の徘徊が問題だからと、即席で地域を持ちあげている感が否めません。
地域活動の入口といえば、町内の子ども会。最近は子どもの数が減ったからという物理的な理由だけでなく、忙しい、付き合いが面倒などといった親の事情から消滅する子ども会が増えています。
人と人のつながりは、一日で出来上がるものではありません。赤ちゃんがいきなり大人になることなく、首が座って、寝返りをして、お座りをしてと成長していくように、人間関係も少しずつ育んでいくものです。地域の場合は、個人と個人の関係でなく、家族ぐるみで、世代をこえて育んでいきます。
ウィルを引き取った教頭先生は、ウィルを連れて福島県郡山市、会津若松市の系列幼稚園を訪れているそうです。その園児たちを東京に招いて、子どもたち同士のつながりも生まれているとか。
小学校という小さな地域だけでなく、地域をこえて心をつないだウィル。地域、地域と言葉で言うよりも、大人が行動で示す、人と人がつながる環境をつくっていくことが大切ですね。