若手研究の歯磨きロボット「くわえるだけ」。-介護ニュース
記事公開日:2016/03/23、
アベノミクスの成長戦略にも位置づけられる、ロボット産業。日の丸家電の衰退が著しい昨今、注目を集めるのが若手の研究です。
18日、若手研究者による試作ロボットを展示・発表する「Robotics×Future(ロボティクス・フューチャー)2016」が開催され、介護分野での活躍が期待されるロボットが登場しました。
出典:産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160321-00000525-san-bus_all
この展示会の参加者は、未来を担う若手限定。学部生や院生、博士課程学位取得5年未満などの条件があります。
科学技術振興機構(JST)の大学発新産業創出プログラムの一環で、ロボティクス分野のベンチャー育成が狙いです。
会場で評判だったのが、両手を使わないで歯磨きができる「口腔ケア補助ロボット」。早稲田大学先進理工学研究科の研究です。
「くわえるだけ」で、手で磨いた場合の7割も汚れが落ちるというロボット。マウスピースのような形状の歯ブラシを口に入れ、小刻みの振動で磨く仕組みなので、両手を使わず歯磨きができるそうです。
介護の現場では、両手が不自由なために自分で磨けなかったり、介護士の手を借りるのを嫌う高齢者が少なくありません。介護士も手が回らず、後手に回ることが多いとされています。
早稲田大学では、ポータブルにして実用化を急ぎたいとのこと。
歯は、人によって本数、大きさ、並び方はさまざま。しかも、窓ガラスのようにフラットではなく、歯はデコボコしています。そんな難しい面を、手で磨いた場合の7割も汚れを落とすなんて素晴らしいですね。
しかも、使い方が簡単。「くわえるだけ」で歯磨きができてしまうなんて夢のようです。
このロボットを口に入れている間、両手はフリーなんですよね。たとえば忙しい朝、歯磨きをしながら、メイクをしたり、ヘアスタイルを整えたりできてしまいます。
また、歯磨きをしながら同時に他のことができるということは、これまで歯磨きに使用していた時間が余るという計算。家を3分早く出てもいいし、3分間長く寝ることもできますね。
今回の研究により、多忙な介護職員の負担軽減が期待されています。分刻みで動いている介護職員にとって、ロボットがかわりにしてくれるなら助かりますよね。たとえ数分でも…。
今後の実用化に向けては、ポータブルであることはもちろん、どこまで汚れを落とせるか、どれだけ軽量にできるか、日々のメンテナンスに手間はかからないか、価格などが課題になってくるでしょう。
私が気になるのは、自分で歯磨きができない人のうち、どれくらいの人がロボットを利用できるかです。
自分で歯磨きができないのは、病気などの影響で両手を使用することができない人、歯磨きをする意欲や気力がない人、歯磨きの必要性を理解できない人などが考えられます。
まず、自分の歯がなくて入れ歯を使用している人は、ロボットの利用から除外ですよね。
認知症などの影響で歯磨きの必要性を理解できない人の場合、ロボットを使用する意味も理解できず、マウスピースのような歯ブラシを正しく固定できないのではないでしょうか。誤って噛んだり、飲みこもうとして事故につながらないか心配です。
このようなことをふまえて、安全なロボットが開発されることを願います。
そして、気になることがもう一つ。
誰にロボットを使うか判断するのは、人間だということです。
たとえば、一般の歯ブラシでは自分で磨くことはできませんが、持ち手の太さや形状を工夫すれば自分で磨ける人。
たとえば、意欲がないなら、少し時間を置いて再び促したり、声のかけ方をかえると自分で磨ける人。
前者なら介護側の工夫、後者なら介護側の関わり方をかえれば、自分で歯磨きができるかもしれません。いつもうまくいくとは限りませんが、介護側の都合を優先して、最初からこの人はできないだろうと決めつけないでほしいのです。
「くわえるだけ」が「くわえさせるだけ」になってしまったら、本人のできる力を活かすどころか殺してしまうことになります。