あのニート候補者、介護施設で勤務。-介護ニュース
記事公開日:2016/04/06、
ニート候補者の上野竜太郎さん、覚えていますか?
昨年4月の統一地方選挙で、千葉市議会議員に出馬して落選。1399票を獲得して供託金没収を免れた異色の候補者です。
1年間の沈黙を経て3日、近況を報告。公約(?)どおり介護の道へ進んだことを明らかにしました。
出典:上野竜太郎twitter
https://twitter.com/uenoryutaro
昨年4月に行われた統一地方選挙で、ニート候補者として注目を集めた上野竜太郎さん。初の選挙を25歳で経験し、現在26歳。
千葉市議会議員に出馬して落選したものの、1399票を獲得しました。
DIY作戦として、SNSを活用、選挙ポスターを自作するなど、税金の支援を受けない徹底ぶりも話題になりました。その後の動向にも注目が集まりましたが、選挙後、しばらくしてツイッターの更新が停止。
そして、1年間の沈黙を経て、久しぶりの近況報告となりました。
「皆さまお久し振りです。私のことを覚えている方が一体どれだけいるでしょうか。覚えている方の中で、現在の私の事を気にする方が一体どれだけいるでしょうか」
更新理由は、「報告の義務はなくとも、せめて義理はあるだろうと思った」と謙虚な姿勢。立場が悪くなると記憶をなくしてしまう政治家やノーコメントでフキゲン顔の芸能人よりも、よほど人間らしいですね。
上野さんは現在、認知症の方専門の介護施設で働いているそうです。
昨年、「選挙が終わったらハローワークに行き、介護職の求人に応募しようと思っていた人間です」、投開票直前には「布団の中で初心者用の介護講座サイト」を見ていたとのことで、意志を貫いた形。
上野さんは最近のツイッターで、自分の思いを飾ることなく語っています。
「私が施設で働いてみて抱いた印象は『普通』でした。
物忘れが多い普通の人
同じ事を何度も話す普通の人
夕方頃になると廊下を往復する普通の人」
「出来ない事があって、出来る事があって
それはどんな人間でも皆同じなのではないでしょうか。
私なんか出来ない事だらけです。」
「どうすれば皆さんが不安を感じない様に出来るのか。
どうすれば不安になってしまった気持ちを解消する事が出来るのか。
足りない頭で考えますが、中々正解は見つかりません。」
「恐らく多くの人々が『認知症と言うものが無くなって欲しい、完治して欲しい』と願う中で
こういう考えは或いは本末転倒で非進歩的なのかもしれませんが
私はこの国が『高齢者も若年者も安心して認知症になれる社会』になって欲しいと思うのです。」
忘れていく、忘れられていく認知症は、本人にとっても家族にとってもつらい病気です。病気のために、発症前の人間関係まで壊れてしまうこともあります。
マイナスな情報ばかりが先行し、認知症に縁のない方から偏った見方をされることがあります。
しかし、上野さんの発言から感じるのは、どんな人も素直に受け入れる心です。
「施設で働いてみて抱いた印象は『普通』」、「どんな人間でも皆同じ」と、彼は偏見なく世界を見ている印象を受けます。
それは、上野さん自身が「ニート」と世間から偏見の目で蔑まれてきたからかもしれません。
ツイッターでの「私なんか出来ない事だらけ」「足りない頭で考えますが、中々正解は見つかりません」など、自分自身を卑下しているところは気になりますが、そんな彼だからこそ見える景色があるんでしょうね。
東大卒で、立派なお屋敷に住んで、由緒正しい血筋のボンボン様が、果たして認知症を患った方と同じ目線で見たり、考えたり、歩いたり…できるのでしょうか。
上野さんには申し訳ないですが、落選してくれて良かったと思います。おかげで救われている認知症の方がいるのですから。
今回のツイッター更新で、上野さんを応援する声が高まっています。しかし、これに乗じて再び立候補するなんてことはやめてほしいですね。