病院食・介護食をおいしくするシェフ。-介護ニュース
記事公開日:2016/06/06、 最終更新日:2016/06/03
フレンチシェフの多田鐸介(たくすけ)さん。かつては都心の一等地で、アンチエイジング料理を出すフレンチレストランのオーナーシェフとしてマスコミの脚光を浴びていました。しかし現在は、病院食・介護食のフードディレクター、デイサービスやグループホームなどでの食事改善の指導に全国を飛び回っています。
出典:Wedge
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160521-00010000-wedge-life
病院食や介護食はマズい。
よく言われることですが、私も経験上、否定できません。
かつて入院していた病院では、産地でもないのになぜか毎日のようにナスが登場。しかも、なぜかナスの味つけは決まってミソ。退院してまずしたことは、好きなものを食べることでした。もちろん、ナス以外で。
料理は視覚が7割、嗅覚が3割と言われるように、目と鼻からの情報が大事な要素です。しかし、病院食や介護食では栄養面が優先的に考えられ、おいしく食べることは後回しになっているのが現状です。
ウチシルベのお住まい相談員に話を聞くと、施設の食事はかなりよくなっているそうですが、それは普通食の場合。
噛むことが難しい人、嚥下に障害がある人の食事は、おかゆのカラーバリエーションのようでお世辞にもおいしそうには見えません。
フレンチレストランのオーナーシェフだった多田さんを変えたのは、病院の栄養科長だった管理栄養士さんとの出会いでした。
彼女からの、「ホスピスに入院している末期がんの患者さんが桃を食べたがっているけれど、もう食べる力がない。多田の技術で桃を食べさせてあげて」という依頼。
多田さんは、ゼラチンを買ってきて、桃をつぶして桃のゼリーをつくりました。患者さんも奥様も涙を流して喜んでくれたそうです。
「自分はこんなに喜んでもらえることをしたのか、これまでこんなに感動してもらったことないなって、何か自分もうれしくなって」という経験が、現在の食の相談役につながっているとか。
当時は嚥下食という字も書けないし、当時は意味もよくわからなかったという多田さん。
現在は病院で150床分の病院食・介護食のフードディレクターを務め、デイサービスやグループホームなどを全国100ヵ所以上で展開する「セントケア・ホールディング」で、食事改善の指導に当たっています。さらに、調理機器会社の顧問や、地方の食材を生かしたメニューの開発、名産品のレシピを提案するフードプロデューサーとしても各地を飛び回っています。
フェッテ(泡立て)やエマルジョン(乳化)などフレンチの代表的な技法は、嚥下が困難になった人への介護食に役立つそうです。全国の高齢者施設で活かしてほしい技術ですね。
以前、ウチシルベのお住まい相談員が施設で、職員の方がミキサー食で出ていた別々のお皿を混ぜて入所者の方に渡している場面を目撃し、複雑な気持ちになったと言っていました。
たしかに、胃の中に入れば同じでしょう。でも、自分が食べるとき、ごはんと魚、肉、野菜…あれもこれも混ぜて口に入れられたら、どうでしょう?
ちゃんと食べてもらわなきゃ、食事介助を早く終わらせなきゃ、という気持ちもわかりますが、もし自分が介助される側だったら…と考えてほしいですね。